「"天才"との呼び声が高い永野」の黄金期の傑作ライブ。
精神性を極めた本作の笑いは、単なる笑いというよりも
極限までミニマムに濃縮誇張されたオムニバスの舞台劇に近い。
発想は当然のこと、時に情景・登場人物まで鮮やかに浮かぶほどの
突出した表現・演技から氏の洞察力の高さを感じずにはいられない。
日常の中において、あまりにも逸脱した状況(つまり異常)を唐突に受けた際に、
驚きや混乱を超えて思わず笑ってしまった経験はないだろうか。
永野の呼び起こす笑いは、そういった自らが意図できない自然発生的な
生理現象の類なのだと思う。
的確で「まさに存在しそうな」描写と、
的確で「まさかあり得ない」描写の同時表現。
そして全てを突き放す"オチが有りながらの無形化"という衝撃に現れる、
「なにが琴線に触れたのか」「どこがツボを突いたのか」考えども説明の難しい感情の揺れ。
確かにその瞬間、その一呼吸に、迷いなく吹き上がったはずの「笑い」は
無残にも脳裏に置き去りにされたまま、続く下劣と愛らしさと迫力と困惑の混在。
それらはやがて澱のように重なり沈殿し
「なぜかわからないけど中毒性のある面白さ」へと変質していくことだろう。
彼が天才と評される所以はここにある。
"アングラ芸"と切り捨てるにはあまりに惜しい。
※ただ一点。
昭和氷河期世代の多感な中3のままのテレビと音楽と映画に塗れたイッセー尾形的な何か
このフィーリングが分からない平成の年代には些か厳しいかもしれない。
氏は恐らく上記を踏まえ現在の芸風にシフトし、また、ギャランティが明快である
テレビ界への進出を熱望しているようだが、世が世ならあり得る成功もこの普遍の時代。
ぜひ本質を守りつつ二面性を持って取り組んでいただきたいと切に願う。
成功と伝説は、きっとイッセー尾形のような仕組みが必要。
以上、日頃お笑いに精通してない同い年の私が
ネットで動画を見て思わず購入、キーを叩いたレビューでした。
※ちなみに、現時点でネットにないネタが殆どでしたので、価値ある購買になりました。