イタリアのMarcoTulioGiordana監督の映画を初めて見ることになったが、この映画は個人的にとても好きだ。
「自転車泥棒」が好きな人なら、きっと気に入るはずだろう。たった13歳の少年が、理不尽な世界に飲みこまれて、大きな経験をするというのが話の大筋です。
主人公のサンドロは旅行先のギリシャの海でクルーザーに乗っていた時に、誤って海に転落してしまう。彼は暗い海を漂い、意識を失っていたところを不法移民を乗せた怪しい船に拾われる。奇しくも、船の行き先はイタリアで、サンドロはなんとか劣悪な船旅を我慢する。
母国に辿り着いても話は終わらない。泣いて喜ぶ両親に迎えられながらもサンドロは、船で友達になったルーマニア人の兄妹を養子にしてあげて、と頼み込む。
幼い少年が人の死を経験し、あまりに理不尽な現実を知る。どこか「スタンド・バイ・ミー」にも似た雰囲気を漂わせるこの映画の原題は「Once You're Born You Can No Longer Hide」となっている。”一度生まれた者は、もう逃げも隠れも出来ない”とは哲学的な言葉に聞こえるが、移民のことを表現しているのだろう。食べるために盗みもする。生きるために犯罪を犯す。そういった現実をサンドロは目の当たりにして、大人へと成長していく。
ラストシーンが唐突に訪れたのには戸惑いましたが、ハリウッド的な大団円を迎えずに物語の幕が下りる辺りは観る人の好き嫌いが分かれそうです。ただし、私としては、不条理な世界を描いた作品の終わり方としてふさわしいものだと思いました。不法移民の問題自体、そう簡単に片付けられるようなモノではないのでしょうし・・・