今も手に入る2枚組のベスト盤"The Essential"はまずまずの内容なのだが、それにはなぜかDionneの代表曲
のひとつ Wishin' And Hopin' が入っていなかった。で、この5枚組だが、件の Wishin' And Hopin' がなん
と2枚のアルバムで聞ける。ベスト盤の補完という意味でこれは最高の収穫である。2曲とも同じヴァージョン
だと思うがtpの位相が異なっている(Presenting では左側、Make Way For~では中央)。
また、Stereoで表記されているが Valley Of~の5曲目 For The Rest Of Life などはなぜかMonoである。
この5枚組はPresenting(1963), Anyone Who Had A Heart(1964), Make Way For Dionne Warwick(1964),
The Windows Of The World(1967), Valley Of The Dolls(1968)からなる。5枚ともプロデューサーは
バート・バカラックとハル・デヴィットで、ヒット曲を含め彼らの曲が数多く聞ける。音も良く、60年代の
アナログレコードの雰囲気さえ感じられる。オリジナルのレコードにのっとったリイシューなので、1枚ごと
の収録時間は30分少しと短いところも好感が持てる。
彼女の歌の魅力は、黒人なのにソウルやR&Bのコテコテしたところがなく、あっさりと洗練されたスマートさに
ある。これは彼女の歌の特質でもあるが、モータウンやアトランティックなどからデビューしなくて正解だったの
である。もちろん、白人プロデューサー2人の功績も大きい。
Dionneの60年代のアルバムはすべて集めるのに十分値する。2014年に4枚のアルバムを2CDでリイシューした
Edsel/Rhinoのシリーズはもう中古品でも価格が上がっていて入手しづらくなっているので、この5枚組はお買い
得だ。さらなるリイシューを期待したい。