本編は2008年春ソニービルで発表の映像化作品とほぼ同じように作られています。邦訳版をそのまま朗読、新作のBGMと効果音に乗せて物語を盛り上げました。朗読者折笠が必ずしも適役だったかどうか判りませんが、声色の使い分けは声優らしい秀逸な技です。地の語り手「ガスパール」から「ガスパールのおばあちゃん」としての声に切り替わるところなど、にわかに同一人物とは信じられないほどです。元絵を恐らくはCGで、角度さえ変えて、残像で余韻を残しながら動かした技術は流石です。今や日本のお家芸でしょうか。この方式で全巻見てみたいものです。
コアなファンとしては特典映像の方がより楽しみでした。「リサとガスパールの生活」は本編3作品の一場面ずつをナレーションなしでBGV的に構成した、言わば絵本のパントマイムです。「作者インタビュー」は引っ越しされたばかりのご自宅で夫妻一緒に行ったものですが特にゲオルク先生の語りを中心に編集しています。車のこと・家のことなど、ここでしか聞けない意外な制作秘話満載です。「リサとガスパールと巡るパリの街角」は絵本に出て来た実在の場に撮影隊が出向き、ぬいぐるみにポーズを取らせて追体験するというものです。2010年ソニービルイヴェント「リサとガスパールぎんざへいく」でそれらのパネルが掲示されていました。
なお、2010年展覧会場限定版には、使われたBGMのCDが特典として付いています。新進の邦人音楽家野崎による作曲で、アコーディオンなどを使った演奏は軽妙で優しい仕上がりとなりました。1ガスパールオープニングテーマ、2リサオープニングテーマ、3おだやかな日々、4ワクワク、5ドリーム、6ふしぎなおうち、7おもちゃ工場パート1、8リサとガスパールエンディングテーマ、の約20分です。2「リサ」に関してはやや鈍重な印象を受けましたが、5「ドリーム」は本当にとろけるようでした。万難を排してこちらを入手されることをお勧めします。