カナダ出身の30歳。幼少からヴァイオリンを嗜み、11歳でオーケストラ・スコアを書き上げる等高いクラシックの
素養を持ちつつ、プログラミングやサンプリング技術等、ジャンルレスに音楽家としての技術を磨いてきた人。
前作までは「Final Fantasy」名義で作品を発表していた様だが、個人的には彼の作品初体験。
印象としては、簡単にジャンル分類の言葉が見つからない作品。
まず、彼のクラシックの高い教養が作品に活かされていることは分かり易い。例えば室内楽的な管弦楽器の
アレンジ能力の高さや、バックコーラスのオペラ的な風情に認められる。
しかし、単なるクラシックとポップスの融合という形容では足りない程、彼の紡ぐ音楽は多彩な要素を併せ持つ。
その要素の一つに、彼自身影響を認めているゲーム音楽がある。
具体的には、菅弦楽器の細々とした旋律の扱いや、巧妙にプログラミングされた音が非常に映像的であるところ。
一方でどこか閉塞的な感覚が作品全般に漂うところも、ゲーム音楽に親しんだ世代ならではの感覚か。
この感覚は的確に言葉にするのが難しいので、是非作品に接して体験していただきたい。ゲーム世代の方なら
共感して頂けると思う。
またそれらの音と、彼の内向的な表情を持つ歌声がうまく融合している。
ポップスにオーケストラを導入することで、クラシックの空気を取り入れた作品は数多あるが、ここまでクラシック
の要素が自然とポップスに入り込んだ作品は珍しい。幼少からクラシックに親しみ、同時にゲーム音楽も愛好し
たオーウェンにとっては自然な感覚なのだと思う。
これから彼のような新しい感覚を持った人が増えてくるのだろう。
2010年代の幕開けとして相応しい、知的だが嫌味の無い新鮮なポップスだ。