「Mika Vainio(PAN SONIC)、ESPLENDOR GEOMETRICO等の海外アクトのサポート等、縦横無尽に活動するケアルのファーストCD」とありますが、Mika Vainioに関しては、サポートアクトや前座などではまったくなく、演者と演者の間にBGMとしての演奏を担当していただけだったと記憶しています。
プロモーション用のテキストに、ネームヴァリューの高い共演者の名前を列挙するのが、インディーズ物の常套手段となっているように感じますが(大手V-PINEやDaymareがよくやっている)、実際は直接の繋がりなどなくて ”たまたま” 同じ日に同じ場所で演奏しただけというのがほとんどでしょう。アンダーグラウンドレベルでインディペンデントな活動をしているはずのバンドなどが、互いに見栄を張り合い己の言葉の実体のなさに無自覚なのが、なんとも悲しい。独立独歩の自律した個人の集合としてインディペンデント・シーンはあるべきではないか、と思ってしまう。
音楽の内容はセンスはよいが、80'sのインダストリアルの懐古趣味のシミュレーションといった感覚が強い。クラブカルチャーとのクロスオーバーを図ろうとしてるようにも聞こえるが、ダンサブルであろうとする積極性を欠いてしまっているので突き抜けた感じがなく、ただただ冷ややか。インダストリアルとテクノの相互浸透といった昨今のひとつのトレンドに先んじていたという点で評価できるが、上記のようにモチーフのトレースに留まってしまっているようにどうしても聞こえてしまう。それは個性であり長所であるかもしれないが、オリジナルを愛でるあまり、アウトプットの強度が過去のそれに届かず埋没している。