表題は宇宙人ニアのことだけど、主人公はニアを居候させているまゆ子で、彼女の起床から、
食事、仕事、明日への勉強、やりくり、不安、喜び、人との交流、思いなど、生きていくことの
24時間を省略せずに描き切っている稀有な作品。これにより実際に生きている私たちに直結する
ドラマとなり、意識を持って生きる者が逃れ得ない本質的な孤独感、淋しさを描き出していると思う。
宇宙人やUFOが出てきますが、一般的なファンタジーやアニメから少し離れた、上質な舞台劇の感じ。
初めちょっと笑わせてくれ、愛すべき関係者が増え、ヒロインとともに悩んだ後、皆で人生って
こういうものなんだなと淋しさを噛み締めた上で、また日常を始めてゆく。仕組まれたカタルシスは
ありませんが、もとからあなたの胸の中にあった思いを引き出してくれる作品。社会人になってから、
ちょっと心が疲れた時に見返して、「人生なんて、そういうものだ」と心を落ち着かせるのに最適な作品です。
Wikipediaには「まゆ子ははぐれ者としてしか生きられない少女」とありますが、彼女は貧しいけれど、
ごく常識的で優等生の浪人生で、この話はアウトローの話ではありません。
レビュアーは「灰羽連盟」を見て、安倍吉俊つながりで辿り着きました。「灰羽連盟」が絶対のルールが
あって課題を成し遂げれば次のステージへ転生できると決まった世界構造の中での、階段の踊場的小世界
であるのに対し、NieA_7は成し遂げるべきものが提示されない世界を描いています。まゆ子は来年はきっと
大学生になり、その先で社会人になるでしょうが、本人は本当のところ何をめざしているのか掴んでいない。
ニアは母船が消失するところを目撃してしまい、頼るべきもの、信ずべきものの消失は決定的。我々の
実世界は実はこれではないのか。努力も友情も勝利も献身も純愛も全てこの宙吊りの中にあると語っている
のだと思いました。