73年作。イタリアのプログレバンドalphataurusの1st。いわゆるイタリアへヴィシンフォの枠で語られることも多い存在だが、ムゼオローゼンバッハ等とは明らかに毛色が違う、独特の個性を持つバンド。シンフォニックでハードめの作風には違いないが、「重厚なキーボード類とギターとが絡み合い強固なアンサンブルを成して突き進む」といった場面は意外と多くない…だから、あまりヘヴィシンフォっぽくないと感じるのだろう。キーボード類と他の楽器との位置関係が独特なのだ。ギター・ベース・ドラムは基本的にはハードロックで、プログレ的な要素はキーボードが一手に引き受けているような印象もある。ボーカルはイタリア臭が濃く、情熱的で美しい。ひねくれて掴み所の無い曲調なのに、魅力的なボーカルのおかげで、意外とすんなり聞けてしまうのが本作の大きな強み。
「Peccato d’orgolio」は12分の大作。序盤は、不毛の大地に乾いた風が吹きつけるような寂しさ・虚無感のある歌モノ。途中から、カクカクした奇怪なフレーズで暴走するインストへ。ハモンドオルガンが豪快。「Dopo l’uragano」はシンプル。静と熱狂を行き交う。荒涼とした風景の中、たった一人で、怒り叫ぶような感覚に陥る。感情を叩きつけ熱唱するボーカルと吠えるギターに、胸が熱くなる。「Croma」はチェンバロが響くチマチマした音像が、急に感動的でシンフォニックな音像へと大膨張し、全てを埋め尽くす。圧巻!「La mente vola」導入部はチェンバロに、ムーグシンセを幾重にも重ねて徐々に盛り上がる。ピアノが煌めくボーカル部は、美しい歌心に満ちている。全体的にムーグが大活躍。「Ombra muta」はヘヴィにうなるギター、ハモンドオルガンは軽妙洒脱、情熱的なボーカルも素晴らしい。どっしり風格すらある、王道的なカッコよさ。でも、それだけでは飽き足らず落ち着かないのか(笑)、インスト部はどんどん変な風にねじれ暴走していく。