イギリス人/日本人のハーフでオーストラリア出身の美女nAo。なんと“新人育成プロデュースの帝王”ムーンライダーズ岡田 徹パパがプロデュースということで聴いたんだけれど、『Strawberry Heart』とっても良いです。YouTubeで検索すると「Across The Horizon」PVとかすぐ見つけると思うのでぜひ観てほしい。北欧チックなエレキフレーズの残響音とアコギ、アコーディオンが印象的なのだけれど、アコーディオンやアコギなどのアコースティック楽器主体としたバンド“APOLLON”での音楽活動も展開するだけに、自身もアコギを弾きながら軽やかでキュートなヴォーカルを披露している。モデルの娘が歌手デビューっていうよくあるパターンなのだが、ポップ界の個性派達がこぞってバックアップに名乗り出ているのもスペシャルだし、何よりデビュー作ながらアコテイストの独自の色を持っている存在感など、ちょっと他とは違った光ったものを感じるのが良い。地中海の空気が香るトレモロサウンドが印象的な杏里「エスプレッソで眠れない」のカヴァーなんかは、かつての野田幹子(!)の初期作品を彷彿させるようなヨーロピアンなギターポップだなぁ。もし同様の印象を抱く人がいたらムーンライダーズもきっと好きな人だろう。そういう人には「さよならは夜明けの夢に」カヴァーにもニンマリのはず。岡田徹と山本精一とらによるユニットya-to-iの「空の名前」、岡田 徹とCTO LAB.でも活動中のイマイケンタロウ(エイプリルズ)による書き下ろし曲、さらにはエイプリルズ「ボク宇宙」のカヴァーまでも収録。近年の徹パパ人脈の競作競演による、聴けば聴くほどに様々な隠し味にニンマリさせられるアレンジながらも極力シンプルに聴かせうとする巧みさ。単なるギターポップに終わっていないのはやはり熟練の技としか言いようがない。アルバムのラストはビートルズ・カヴァー「I Want To Hold Your Hand」が飾っているのだけれど、アコサウンド+ちょっぴりシューゲイザー感覚なアレンジが素朴だが素晴らしい出来。変な歌い癖がなくストレートに歌い上げている様がまた聴きどころだったりする。この純白な爛漫さがこの先どのように変化していくのかは今は見えないけれど、nAo自身にとっても今このタイミングだから、そしてデビューアルバムだからこそ成し遂げられた奇蹟のようなポップワールドがここにはあると思う。