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![Seefeel [解説・ボーナストラック付き国内盤] (BRC282)](https://m.media-amazon.com/images/I/61qmtPzkC7L.__AC_SX300_SY300_QL70_ML2_.jpg)
バンドのバイオグラフィーはアマゾンさんの商品説明に詳しいですが、
Seefeelは90年代初頭、Sonic Youth Meets Aphex Twinなどと評され、
Richard D JamesやAutechre、Black Dogなどと並んでインテリジェント・テクノ（死語ですね）の代表格のように扱われていました。
彼らの非フロアユースなダンスサウンドがその後のエレクトロニカやポストロックの隆盛、
さらには現在のインディーシーンにまで引き繋がれていくわけです。
加えてSeefeelの場合、バンドメンバー募集の張り紙にMy Bloody ValentineやCocteau Twinsの名前を掲げていた逸話からもわかるように、
UKニューウェーヴやシューゲイザー的な資質を持ち合わせているバンドでもあり、
実際彼らの1st『Quique』はテクノ〜ブレイクビーツ的なグルーヴの打ち込みのビートとシューゲイザー的なギター＆ヴォーカルのループを対比させた、
今でいうエレクトロ・シュゲイザー的なサウンドが聴きものです。
シューゲイザー・サウンドが再び見直されている現在ですから、ある意味で前述した他の三組よりも重要なアーティストなのではと思うのですが、
発売から一年以上が経過しても一個もレビューのない状況が物語るように、現在ではほとんど忘れ去られているような気がします。
本作は96年『Ch-Vox』以来、15年ぶりとなる復活作です。
07年に1st『Quique』が2枚組で再発されたときにもしやと思ったのですが、
まさか再び彼らの新作が聴けるとは……。
この素晴らしいジャケットを見たときは本当に心が躍るようでした。
けれど深海や地底を背景にした方がピンとくるほど暗く無機質なかつてのSeefeel像からすると、
陽光を背にした森林が背景なんてずいぶんイメージと違うなと思っていたら、
案の定、中身の方も肉感的で温かみのあるものとなっていました。
なんと全編かつてないほどライブ感あふれるバンドサウンドが展開されているではないですか。
びっくりしたのがドラム。元ボアダムスの人が叩いているそうですが、打ち込みじゃないんですね。
ダビーな質感をともなったベースの律動に、アナログシンセのノイズやドローンが絡まり、
そこに女性ヴォーカルの断片が舞い散る様子は往年のイメージを保っていますが、
かつてのようにループ中心のサウンドではありません。
クラブミュージックというよりは、80年代のON-Uや4ADの音にも通じるロック色の強い作品です。
WARPのオーナー、スティーヴ・ベケットはパリでのライブに感動して彼らにアルバムを制作するように呼びかけたそうですが、
実際にSeefeelのライブってこんな感じなんだろうなと思わせる内容です。
Seefeelは2nd『Succour』以降アンビエント色を強めていったため、復活作が出ると聞いたときどちらの路線でいくのだろうかと思っていたのですが、ふたを開けてみるとどちらでもなかったですね。
肩慣らしになりがちな復活作でも新たな挑戦を続ける攻めの姿勢には感服しますが、
正直なところ旬を感じる音ではないですし、完成度においても過去作の水準には達していないように思います。
個人的評価は長いブランクがあったことを考慮しても星三つ、
おすすめ度でいえば星二つでしょうか。
往年のSeefeelをご存じで、なおかつ購入を検討されている方には、全盛期の片鱗は覗えますが過度な期待はしないでくださいとお断わりしておきます。
またこれからSeefeelを聴こうとしているリスナーの方にはこのアルバムは後回しにすることをお勧めします。
エレクトロ・シューゲイザー的な作品なら1st『Quique』やシングル『More Like Space』『Plainsong』、
ダーク・アンビエント的な作品なら2nd『Succour』やシングル『Starethrough』がいいでしょう。
3rd『Ch-Vo』はその路線の究極作ですが基本ノンビートなので、ちょっと敷居が高いかもしれません。
と書いておいてなんですが、2012年10月現在、ほとんどの作品が入手困難になっているようですね。
ネットで何でも聴ける時代になったとはいえ、やはり過去作が簡単に手に入らない状況では再評価も進みません。
本作が売れないかぎり難しいかもしれませんが、アルバムやシングルコンピの発売を切に願います。
