20年以上一緒にやっている不動のトリオによる息の合ったインプロは相変わらずなんだが、ストリングスとの競演ということで、他作品に較べると仕上がりは若干ソフトな印象を受けた。(もしかしたら、弦楽器が加わることによる録音バランスの加減や、そもそもこのトリオの年齢的な円熟というものも関係した結果なのかもしれない。)役割的に言うと、ストリングスがハーモニーを奏で、そこにトリオが時に一緒に歌い、時にインプロで斬り込んでいくという、分担になっている。山下氏の言葉を読む限り、アルバム・タイトルもトリオとストリングスとの間のそのような役割分担を表しているようだが、そういう意味では、共演曲では基本的な音のトーンをストリングスの方が作っていると言って良いだろう。
聴く前は弦楽器の方もメチャクチャに攻めてくるような作品を予想していたのだが、そうしなかった点が、散々激しいことをやってきた先に行き着いた、山下氏の円熟というものなのだろう。何よりも、本当に楽しんで演奏していることが伝わってくる一枚だ。