本作品はジョン・フォード監督作品のなかでも最高傑作であり、ほとんど別格といってもいいほど優れた作品です。 以下1. DVDについて、2. 監督が伝えようとしている思いについて、感じたところを書いてみました。
1. DVDについて
映像に関しては 「超高画質」 を謳っているだけに素晴らしい画質であり、満足しています。 特にサイドカットの部分がDVDだと灰色に再現されますが、「超高画質」 版では黒レベルとして再現されるためブルーレイの画面のように見えて得した気分になります。
日本語字幕も大小2種類が用意されていて、目の悪い年寄りへの配慮を感じさせます(尚この機能はPCでの再生の場合に利用できますが、専用再生機を使っている場合には固定され選択できません)。
また翻訳された日本語がおかしいということはなく、 逆にシーンによっては意味がはっきりして、理解する上でよかったと思っています。 たとえば、前半のおわり近くに、合唱隊が歌を歌う場面がありますが、 「俺たちは運命共同体さ」 と字幕が入ることで、この物語が米国国民全体の進む道のことを暗示していて、最前線に配置された騎兵隊やヨーク中佐(ジョン・ウエイン)の家族のストーリーだけではないことが伝わってきます。
音声はドルビーデジタル5.1で、ディフォルトの音量レベルは大きめで、音は聞き取りやすく、ここでも耳の不自由な年寄りの観客への配慮が感じられました。
2. 監督が伝えようとしている思い
この映画では、はっきりとわかる二つの重大な出来事が冒頭で導入されます。
一つは、映画の冒頭近くで、ヨーク中佐(ジョン・ウエイン)が自分が指揮をとる部隊に15年前に別れた息子ジェフが配属になって来た、という設定です。 父親は他の隊員たちの前で言います、訓練は遊びじゃない 「厳しいぞ」、「逃亡は不可能だ、必ず見つけ 肉片にする」と。 息子だからといって特別扱いはしないぞ、というわけです。 これは父親の息子への愛の裏返しの表現です。
そして少しの間をおいて、今度は15年ものあいだほとんど連絡のなかった別居中のヨーク中佐の妻のキャサリン(モーリン・オハラ)が息子を引き取りに現れます。 突然現れたキャサリンを見たヨーク中佐は、兵隊たちの見守るなか二人が夫婦であることを告げるように、腕組みをしながら自分の宿舎(テント)に彼女を案内します。 二人は息子のことで意見の相違を見せますが、二人とも息子を愛すればこその意地の張り合いであることはすぐにわかります。
変化は、テントのなかでキャサリンが彼のオルゴールを見つけたときにはじまります。 キャサリンが発見したのは彼の「まごころ」であり、15年間夫が自分と息子のことをひと時も忘れたことがなかったことに気づきます。
これは一つの例ですが、こういったシーンの積み重ねで、物語全体にハートフルな心地が醸造されていきます。
父と息子、夫と妻の三人の人間関係がどのように進展していくかは映画を観てのお楽しみ、終わりの場面に進みます。
最後の戦いのシーンの前、教会に立てこもった子供たちを守るべく潜入した兵士の目の視点で、これから攻め込もうと準備をすすめる先住民の部隊が映ります。 このときのドアの十字形に模られた穴の先に敵の部隊が見えるショットは、こちら側がキリスト教的世界を暗示し、その外側に敵が存在することを見せていて、象徴的です。
終わり近くで先住民の矢に胸を射抜かれた父親は、息子に矢を引き抜くように命令します。 息子に矢を引き抜かせることは父が息子を認めたことを意味し、父から息子へバトンが渡されたことを暗示しているようにみえます、ここから先の未来はお前たちに渡す、お前たちが国を守り運命を切り開け、というようにです。
この映画が製作されたのは1950年、つまり大戦後です。 15年前、つまり1935年頃は、キリスト教的倫理観が広く受けいれられた古き良きアメリカの時代であったと思われます。 貧困と飢え、高い失業率、仕事を求めて多くの人々が全米各地を渡り歩いたといわれている世界恐慌の後であっても、信心深い人々は誠実さを失うことは道を外すことだと知っていました。 良識が生きていた時代だったといえるでしょう。(尚、古き良き時代の人々が信じた人の道、良識、規律、そして信仰心などを一言でここでは 「キリスト教的倫理観」 としています)。
一方第二次世界大戦のあと、人々は、もはやこれまでのキリスト教的倫理観が力を失ったと言われてもしかたのないような約600万人のユダヤ人を殺害したナチズムの非人道的な所業を、メディアを通して目の当たりにしました。
人の道を守っていれば、必ずや悪は退けられ、善が勝利する、というシンプルな教えがリアルであった時代とその後の時代に断層を刻むような衝撃を与えたのがあの大戦であり、とりわけナチズムの悪魔的な所業でした。
あの戦争の後、キリスト教的倫理観が色あせ力を失うことになったとき、ナチズム以降の世界に生きる人たちには、キリスト教的倫理観が当然なものであるような世界は 「ファンタジー」にしか見えなくなっってしまった、という危機感が監督世代に募ったのではないでしょうか。
監督は、年老いたヨーク中佐に仮託して、自分も含めて年老いた世代ではなく、ヨーク中佐の血をひく息子のジェフや彼らと年齢を同じくする世代、あるいは映画のなかに登場してきた大勢の子どもたちに代表されるもっと若い世代に未来を託すべきだということを告げているように思われます。
しかしどのような未来であっても監督は、運命共同体である家族や仲間や国家にとって大切なのはひとりの人間としての生き生きとした血の通った温かい心であることにちがいはなく、一番大事なことは 「まごころ」 であることを教えているようです。
その意味で 『リオグランデの砦』 は、表面上のドラマとは別のところで、戦前と戦後の新旧世代のバトンタッチの思いと、どんな時代でも忘れてはならない人間のまごころを伝えているハートフルな傑作であると感じました。
リオ・グランデの砦 [DVD]
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フォーマット | ブラック&ホワイト, 字幕付き |
コントリビュータ | ジョン・フォード, モーリン・オハラ, ジョン・ウェイン |
稼働時間 | 1 時間 45 分 |
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商品の説明
カービー・ヨーク中佐は、南北戦争でシ ェリダン将軍の率いる北軍に参加し、シェナンド谷の妻の親族の所有地を焼いたので、 怒った妻は1人息子ジェフを連れて別居してしまった。ヨークは西部でインデ ィアン討伐戦に従っていたが、横暴なアパッチ族は西部を荒らしてはメキ シコへ逃れるので、米軍は追うこともならず地団駄を踏むばかりであった。 シェリダン将軍は彼の砦へ視察に来たが、その部下に一兵卒として息子のジ ェフが居り、更にそれを追って妻もついて来た。妻は息子の除隊を願ったがそれは許されず、 彼女も砦に居すわることになってしまった。この時アパッチ族の大挙襲撃がありついに将軍 はヨークに越境の内諾を与えた。彼を待つものが軍法会議であることを知 りつつ、彼は敢然部下を指揮して長駆メキシコへ突入したのだった…
登録情報
- 梱包サイズ : 18.03 x 13.76 x 1.48 cm; 83.16 g
- EAN : 4571339483414
- 監督 : ジョン・フォード
- メディア形式 : ブラック&ホワイト, 字幕付き
- 時間 : 1 時間 45 分
- 発売日 : 2011/2/17
- 出演 : ジョン・ウェイン, モーリン・オハラ
- 販売元 : ファーストトレーディング
- ASIN : B004O5RG3G
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 129,072位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 722位外国の西部劇映画
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年4月18日に日本でレビュー済み
この作品のジョン・フォードの役は、カービィー・ヨークと「アパッチ砦」の大尉
そのままの名前で、大佐として登場する。そういう意味で姉妹編ともいえる
わけで、前に見せなかったアパッチ族退治を、メキシコまで越境して宿望を
達することになるのだが、前作でのヘンリー・フォンダのような対立者が存在
しないので、かなりお気軽なつくりだったといえそうだ。
そのままの名前で、大佐として登場する。そういう意味で姉妹編ともいえる
わけで、前に見せなかったアパッチ族退治を、メキシコまで越境して宿望を
達することになるのだが、前作でのヘンリー・フォンダのような対立者が存在
しないので、かなりお気軽なつくりだったといえそうだ。
2020年8月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いわゆる「騎兵隊三部作」の三作目となるが、登場する役者、役名が「黄色いリボン」ともかなり重なっている。
V・マクラグレンがクインキャノン曹長であったり、ベン・ジョンソンがタイリーであったりするのもご愛敬か。
おまけにウエインが矢を受けるところまで類似している。
まあ、娯楽映画だから堅いことは言わないものだろう。
いろいろな曲を登場させているところも、聞き所と言うべきかもしれない。
頑固が売りのような大佐が、テントの中で息子の身長を確認するところなど、やはり父親は父親という演出も憎い。
アトハ階級が「中佐」という書き込みも見受けられるが、メキシコ商工は「COLONEL」と呼んでいた。
字幕も「大佐」になっているから、大佐なんだろう。
しかし大佐は三個大隊の連隊長らしいのに、登場する将校は大尉どまり。
大尉は中隊長だから、大隊長たる少佐はどうしたのだろうな。
V・マクラグレンがクインキャノン曹長であったり、ベン・ジョンソンがタイリーであったりするのもご愛敬か。
おまけにウエインが矢を受けるところまで類似している。
まあ、娯楽映画だから堅いことは言わないものだろう。
いろいろな曲を登場させているところも、聞き所と言うべきかもしれない。
頑固が売りのような大佐が、テントの中で息子の身長を確認するところなど、やはり父親は父親という演出も憎い。
アトハ階級が「中佐」という書き込みも見受けられるが、メキシコ商工は「COLONEL」と呼んでいた。
字幕も「大佐」になっているから、大佐なんだろう。
しかし大佐は三個大隊の連隊長らしいのに、登場する将校は大尉どまり。
大尉は中隊長だから、大隊長たる少佐はどうしたのだろうな。
2018年5月6日に日本でレビュー済み
男盛りというかジョン・ウェインが精悍で渋いし、モーリン・オハラはこんな人に出くわしたら間違いなく気後れしてしまうであろう気品が画面から伝わって来ます。小さい頃と違い今見ると、現在のアメリカの考え・行動について考えさせられる内容ではあります。他国が気に入らないからといって他国まで出掛けて行って内政干渉もするしで、小さい頃からこういう映画を見てたアメリカ人は、他国で何か自分達に不都合な事が起こった場合、騎兵隊がラッパと共に駆けつけてくれると思うようになるでしょうねえ。
自分が持ってるのはレンタル落ちのDVD2005年デジタルリマスター盤で、家でプロジェクターで50インチぐらいにして見ると、さすがに目立った傷とかは無いけどゴーストが出てたりで、今一画面が粗い感じを受けるのはどうした事か。他の作品の廉価版はもっと画質が悪いのだけど、正規版でこれぐいなので、大きな画面でカチッとしたモノクロ作品が見たい人はもっと上のを選んだ方がいいと思います。どの作品も値段との兼ね合いを考える所ですが。星は画質に付いてのみです。
自分が持ってるのはレンタル落ちのDVD2005年デジタルリマスター盤で、家でプロジェクターで50インチぐらいにして見ると、さすがに目立った傷とかは無いけどゴーストが出てたりで、今一画面が粗い感じを受けるのはどうした事か。他の作品の廉価版はもっと画質が悪いのだけど、正規版でこれぐいなので、大きな画面でカチッとしたモノクロ作品が見たい人はもっと上のを選んだ方がいいと思います。どの作品も値段との兼ね合いを考える所ですが。星は画質に付いてのみです。
2018年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ジョンフォード騎兵隊三部作だが、私には黄色いリボンの方がかなり上に感じた。劇場で若き日に見て以来久しぶりに見たので、すっかり忘れていた場面が徐々に蘇った。ジョンフォード一座のモニュメントヴァレ―舞台の騎兵隊・先住民物だが、今回は監督お気に入りの赤毛のアイリッシュ女優、モーリンオハラが加わって、家族問題を軸に据えて一寸変化を求めている。彼女相変わらず美しい。ただ後半の先住民との関係は例の通り騎兵隊側の主観のみで、現代としては違和感がある。
俳優の本来の声がないので、ジョンウェインでも別人のような感じがする点で、星3つだが。忘れていたが、ソンズ・オヴ・ザ・パイオニアーズのコーラスが随所に挿入(これは吹き替えでない)されていて、すごく儲けものをしたような感じを受けたのでお負けして星四つ。
俳優の本来の声がないので、ジョンウェインでも別人のような感じがする点で、星3つだが。忘れていたが、ソンズ・オヴ・ザ・パイオニアーズのコーラスが随所に挿入(これは吹き替えでない)されていて、すごく儲けものをしたような感じを受けたのでお負けして星四つ。
2021年4月5日に日本でレビュー済み
この映画1951年12月日本初公開とある。筆者がこの映画を見たのは、多分年明けの52年だったと思う。ふと通りかかった場末の映画館前で、看板の題名に惹かれて何気なく入館して見たのがこの映画だった。筆者はそれまで外国映画といえば、ジャン・ギャバン演じるギャング映画ぐらいしか見たことがなく、ジョン・フォード監督の西部劇を見るのは、これが初めてだった。モーリン・オハラの美しさと、アメリカ西部の広大な景色にすっかり魅了されてしまったのも、懐かしい思い出だ。それと、ヴィクター・マクラグレンの憎めない無邪気なオッサンぶりも強く印象に残った。この映画は筆者が西部劇に限らず、アメリカ映画に傾倒し始めた最初の映画という意味で特筆すべきものである。
2013年10月6日に日本でレビュー済み
ジョン・フォード監督による「騎兵隊三部作」シリーズの第3作(1950年)。
なんといっても、随所に見られる騎馬アクションが凄い。
新兵訓練での2頭並列の馬に立ち上がって乗るシ−ンや、先住民の襲撃を受けての大疾走シーン、乗っていた馬を寝かせて追ってくる敵を射撃するシーンなどなど、フォード作品ならではのアクションの醍醐味が満載です。
その一方で、ソフトな音楽の使い方も巧い。
ヨーク夫人を歓迎するセレナーデ、将軍を称えるアイリッシュ民謡など、緩急自在の映画作りを感じます。
南北戦争と家庭問題をうまくからめ、全体を通してドラマとしてもまとまっており、娯楽性豊かな西部劇の良作になっていると思います。
なんといっても、随所に見られる騎馬アクションが凄い。
新兵訓練での2頭並列の馬に立ち上がって乗るシ−ンや、先住民の襲撃を受けての大疾走シーン、乗っていた馬を寝かせて追ってくる敵を射撃するシーンなどなど、フォード作品ならではのアクションの醍醐味が満載です。
その一方で、ソフトな音楽の使い方も巧い。
ヨーク夫人を歓迎するセレナーデ、将軍を称えるアイリッシュ民謡など、緩急自在の映画作りを感じます。
南北戦争と家庭問題をうまくからめ、全体を通してドラマとしてもまとまっており、娯楽性豊かな西部劇の良作になっていると思います。
2014年1月26日に日本でレビュー済み
ジョン・フォード監督の1950年の作品。
話はよくある西部劇、でもこの映画を魅力あるもののしているのは馬を使った銃撃戦の見事さだな。
でもコマ落としで疾走する馬のスピード感を出す手法にはちょっと古臭くて笑っちゃったが。
ジョン・ウェインのカッコよさやモーリン・オハラの美貌もたっぷりと観れて、娯楽西部劇としてはなかなかのもんでした。
話はよくある西部劇、でもこの映画を魅力あるもののしているのは馬を使った銃撃戦の見事さだな。
でもコマ落としで疾走する馬のスピード感を出す手法にはちょっと古臭くて笑っちゃったが。
ジョン・ウェインのカッコよさやモーリン・オハラの美貌もたっぷりと観れて、娯楽西部劇としてはなかなかのもんでした。