【第1集の古い音源について】
詩的で宗教的な調べより「葬送」における捌け口なきような激しい怒りの表現、一方、『巡礼の年』第1年『スイス』より「泉のほとりで」や忘れられたワルツ第1番はタッチを極力軽くして繊毛のような特異な音をだしてみせる。同第2年『イタリア』 より「ペトラルカのソネット」では前半は強い甘美性が薫りたつが後半は怒涛のような進撃。そして伝説のハンガリー狂詩曲第15番「ラコッツィ行進曲」と同第2番、音は割れてひどい響きだが、ピアノを叩き壊すような大音響とこれでもかといわんばかりの高速のパッセージ処理、そしてリズムの躍動と技巧の極致。これはホロヴィッツ編曲ということで世界中の若手ピアニストをアルピニストに模して「登攀」実験曲となったもの。音の悪さを覚悟して聴けば、そこにあたかも“リストの亡霊”が浮かび上がるような狂気をふくんだ演奏。