イギリスのミュージシャン/プロデューサーであるAaron Jeromeのプロジェクト、SBTRKT(サブトラクト)の1stアルバム。アフリカかどこかのお面が印象的なジャケットだが、本人もライブ等で常に似たような仮面を被っている。
ジャケットの印象は少しアングラな雰囲気だが、音の方はむしろポップで踊りやすい感じ。ポストダブステップとして似た括りにされるJames BlakeやBurialに比べて沈み込むような重々しさがなく、メロウではあるがあくまでクラブミュージックとして機能している。逆に彼らとの共通点は少し変調がかったソウルフルなボーカル。ライブでもずっと参加しているSamphaの歌がストイックなビートに乗ることで、よりキャッチーで神秘的な雰囲気になっている。
ダブステップに限らずヒップホップやUKファンキー、90年代のトリップホップやブレイクビーツなどからの影響が見られるが、どの曲もSBTRKT色にまとめられているのが素晴らしい。さすがM.I.A.やRadiohead、BasementJaxxのMIXを手がけただけあって腕は確か。音数を徹底的にスリムにした洗練された雰囲気は、ロンドンの夜の風景を想起させるというか、非常にイギリスらしい音像である。
「Heatwave」「Hold On」「Pharaohs」「Go Bang」あたりは特に聴きやすく且つリズムトラックがとてもかっこいい。どの曲も時間が短くダラダラと展開しないのも◎。最近のポスト・ダブステップ周りの中では最も「黒さ」を感じることができる隠れた傑作。