インタビューをあまり受けないだとか、アーティスト写真ではマスクを付けて素顔を隠してるだとか
色々と噂には聞いていた、マンチェスターのバンドによるデビューアルバムが本作。
さて、この秘密主義者達のサウンドを書き出してみる。
まず、印象的なのは何と言ってもボーカルの声だろう。
怒りの余り泣き叫んでいるように聴こえるそのしゃがれた声は
聴く者の胸に迫ってくるようで、なんともいえない切迫感がある。
そこにパイプ・オルガン、ギター、ベース、手数の多いドラムが重なる
リバーブをたっぷり掛けたエモーショナルなロックで
デビューアルバムにして最早、我が道を行く個性的な音を鳴らしている。
主にコード進行はパイプ・オルガンが担当しており、
その上でギターのフレーズが、曲の持つエモーションに色付けをしていく。
コードでは無く、アルペジオや単音のフレーズをメインにしたギターワークは
曲に繊細さとスペースを作り出していて
ヴォーカルの強い感情をスムーズに伝えるのに一役買っている。
リズムに関しては、一曲の中でテンポを自在に変え、ある部分では獰猛に襲いかかるかと思えば
急にブレーキを掛けて気持ちをクールダウンさせたり
曲によってはワルツの3拍子や、4つ打ちのリズムまである
このアルバムに弱点があるとすれば、曲の展開が少しだけ似通ってたり
所々でやりたい事に演奏が付いていけてない部分がある所かな。
まぁ、充分それを補うだけの魅力と情熱が、このアルバムから聴こえてくるのだけれど。
銃声のようなビートから始まる「Dirt」や「Cave Song 」のような
情熱的でエモーショナルなロックチューンが個人的には素晴らしい。
マンチェスターのバンドだからか、ほんの少しだけギターにザ・スミスの匂いがあるのも良い。
「Summas Bliss 」では、彼らにしては陽気なディスコもどきが聴けたり
まだまだ色んなポテンシャルが見え隠れして、また次のアルバムも聴きたくなった。
彼らのサウンドが、将来どういった風に進化するのか非常に楽しみだ。