石田幹雄さんはボウズ頭で、エンピツみたいに痩せた青年、
空色のTシャツ姿で、ピアノに向かい、体をくねらせながら演奏をする。
打楽器みたいなタッチ、
(CDだと気づきにくいけれど)ひとつひとつの音の大きさが凸凹で、ぎくしゃくしていて、
ユーモラスで、詩的だ。
セロニアス・モンク〜バド・パウエルから
セシル・テイラーに抜ける流れを意識し、なぞりながら、
それをねじれた方向にこじあけ、
聴いたことのないジャズを作らんとしているような。
エレクトリックベースは早川徹さん、
石田さんの放つ流れに、あえて巻き込まれず距離をとりながら、
たんたんと自分のメロディラインをつぶやきつづけ、
隙を見ては、自分の世界に引きずり込んでゆかんとする。
そんなふたりの、あえてかみあわないところがおもしい会話の場を、
ドラムスは福島紀明さんが作っていて、
しかも福島さんのドラムスによって、
あたかもオーソドックな4ビートジャズのフォームの枠内にあるように聴こえるけれど、
実はそれこそが罠かもしれなくて。
いいえ、かれらは(何拍子だか判別しがたい変拍子をらくらくと操るのみならず)、
実はオーソドックスな4ビートジャズも実に巧くって、
偽装保守王道なのか、そう見せかけ新しいアヴァンギャルドの創造ににじり寄っているのか、
どちらとも判別しがたい、そんな魅力をそなえています。