メンバーを2人加えての2ndアルバムは、ミドル〜スローテンポの楽曲こそ増えたものの
50〜60年代ポップミュージックの黄金律を持った、繊細で美しい彼らのサウンドは何も変わっていない。
最初はちょっと、ミドル〜スローテンポの曲が多く感じて、地味かな…っと思っていたけれど
何度も繰り返して聴くうちに、サウンドの細部やアレンジを含めた楽曲の良さに引き込まれていった。
好みの差はあるだろうけど、個人的には1stよりこちらの方がアルバムとしては好きで
夕暮れから夜にかけてよく聴いている。
素晴らしいポップ・ミュージックは、音が鳴った瞬間、部屋の雰囲気をがらっと変えてしまったり
聴いている間、音の描く世界に連れて行ってくれるものだと思うけれど
そういった意味でこのアルバムに収められた楽曲は、とても優れたポップミュージックとして機能している。
彼らのサウンドには、楽しかった過去や、過ぎ去った美しい思い出を振り返るような感覚があって
だからこそ、キラキラしていて手が届かないという
ノスタルジックで胸を締め付けられるような瞬間があるんだろうけど
残念ながら1st、EP、2ndどれも日本盤じゃないうえ
英語がまったく駄目なので歌詞の内容は分らない、しかし音を聴いていての感覚でそう感じる。
2ndにおいてはそこに、後悔や孤独といったビターな感覚が強まっているように感じた。
ビートルズの「ゲットバック」を少し早めたようなリズムで始まる「Honey Bunny」
この数少ないアップテンポな楽曲においても、途中でスピードダウンするパートがあって
楽しい事は続かない、という比喩なのかなと思ったけど、またリズムのペースが上がると
続かないかもしれないけども楽しい事は繰り返すよ、と言われているような気がして
少しだけいい気分にしてくれる。
ビートルズと言えば「How Can I Say I Love You」は、ポールマッカートニーが得意とするような
ハートウォーミングで軽妙なラブ・ソングみたいだし
「Magic」も、サージェント〜の頃のビートルズを彷彿とさせるポップソングで
こういった普遍的で素直なソングライティングも彼らの大きな魅力の一つ。
先行シングルにもなった「Vomit」では、過去の後悔から眠れない夜を過ごしているような、
誰かに側にいてほしいと願っているような、孤独感を感じた。
しかし、後半に曲がビルドアップして、オルガンや分厚いディストーションギターが
ウォール・オブ・サウンドを作り出すと、孤独な感覚が一転して素晴らしい高揚感に包まれる。
このアレンジを聴いて前作の「Hellhole Ratrace 」を思い出す人もいるかもしれない。
まさにガールズらしい一曲といえる。
美しいアルペジオのイントロで始まる「Just A Song」についても書かせて欲しい。
6分47秒もあるこの曲の後半パート、4分をすぎた辺りからの展開が本当に、本っ当に、素晴らしい。
古ぼけたような音色のクラシカルなキーボードとフルートが、聴く人をフワフワ夢の中へと導いていくと
クリストファーの祈るような声が秘密を打ち明けるようにLOVEという単語を繰り返す。
その言葉を追いかけるようにスネア・ロールが泡のように浮いては消え、また浮いては消えを繰り返して
ずーっとすれ違ったまま、重なる事なくこの曲は終わってしまう。とても切なくて美しいパートだと思う。
最後に。
もし自分が孤独だと感じている人がいるなら、是非このアルバムを聴いて
ここで描かれた世界を体験して欲しい。
孤独を感じているのはあなただけじゃないという事を知るだろうし
空っぽな夜を超える大きな手助けをしてくれるはず。
そして、それもまた素晴らしいポップミュージックの魔法なのだ。