シングル・タイトル曲「冷たい雨」は、ボーカル・サウンドと歌詞、それぞれの魅力が存分に発揮され、しかも前者の方向性と後者の世界観が見事にマッチした作品です。
プロデュースは長年の同伴者トーレ・ヨハンソン。聴いているうちにクセになってしまいそうな力強いメロディラインとサウンドは、BONNIEとトーレの最強タッグコンビだからこそ生み出されたものでしょう。
この曲の最大の特徴である“泥臭さ”は、BONNIEの音楽の世界の新境地を拓くものです。この曲を一つのタイプとして見るなら、その対極にあるのは、アルバム『Present』に収められた「Passive−Progressivism」に代表される、打ち込みドラムが印象的な、クールで透明感あふれた作品というのが私の見立てです。まさに“多面体”BONNIE PINKの面目躍如と言える所以です。
力強さに満ちた歌詞も私たちをとらえて離しません。BONNIE自身も述べていますが、この歌詞が今を生きる女性への応援、というメッセージが込められているところに力強さの源があります。この“女性目線”は、最近特にBONNIEの曲に顕著に表れていて、例えば『Dear Diary』中の「スキKILLER」を始めとするいくつかの曲から受けたインパクトは、私たちの記憶に新しいところです。
B-sideの「Keep Crawling」もパンチの効いたロック・チューン。サビが印象的で、特にブリッジパートの張りのあるメロディとBONNIEの声がゾクゾク感いっぱいです。他にも二つのライブ音源と映像(4曲)が収められた初回“超徳用盤”を買って聴いて見て、みんなで新生BONNIE PINKに大声でエールを送ろうではありませんか!