ちょっと反則なくらい完璧なノスタルジー・ポップを鳴らす米デンヴァー出身の夫婦デュオ、僅か1年のインターヴァルを経て早くも2NDを上梓
なんとプロデュースにThe Black KeysのPatrick Carneyという些かサプライズな人選を迎えた本作。しかし、蓋を開けたらかなりの好相性でバンド編成ならではのグルーヴィーさが加味されている
今作からドラマーが正式に加入、トリオ編成に。音像にも空間的な奥行きが増えたが、何はともあれどの曲も素晴らしい。キラキラで少し切なく、眩いサンシャイン・ポップを聴かせてくれる
どうやら、このアルバムのコンセプトは「旅」らしく(ちなみに1STのタイトルは夫婦が出会った場所だとか)、胸いっぱいのロマンスとほんの少しのセンチメントをトランクに詰め、詩情溢れる34分間の旅を楽しませてくれる
Tennisの音楽は、例えばCULTSのようなオールディーズと現代的なサウンドの融合という解釈とは違う
あくまで基本姿勢がブレないオールディーズのマナーに則った作りになっている。専門家ではないので歌唱法や発声法のことはよく分からないが、VoのAlainaも歌い方を昔の歌手に準えているような気がする
しかし、何故こうもアメリカン・インディーは旧き良きものへの憧憬を鳴らすのだろうか
Perfume Geniusのレビューでも触れたが、これもまたエスケーピズムなのだろう
戦争や不況で疲弊したアメリカ。しかし、陰惨な現状からただ逃避するのではなく、多くの人々の哀しみを和らげる対抗軸としての良質なポップが、今こそ必要なのかも知れない
そういう意味では、このアルバムは間違い無く素晴らしい。普遍的なサウンドの強度を改めて思い知らされる名盤