15世紀末までイベリア半島(スペイン&ポルトガル)に定住し、
その後各地に移り住んだセファルディと呼ばれたユダヤ人の伝承曲を歌とカヌーンで紡ぐ画期的な作品
イベリア半島から流出したセファルディの音楽は、西欧諸国だけでなくアラブやトルコの音楽に大きな影響を与えたとされています。
一度聞いたら忘れられない独特なメロディにレディノ語(ユダヤ・スペイン語)で歌われる美しくも悲しい物語は、ディアスポラとは無縁の日本人の私たちが聞いても心を揺さぶられます。
ヴォーカリストの岡庭矢宵は国立音大で声楽を学んだ後、ユダヤ音楽歌唱法や中世・ルネサンス、初期バロック音楽演奏法、アラブ音楽理論などを学んだ才媛です。
また、緩急に長けた艶やかな歌唱に加え舞踏や即興ダンス等の身体表現を絡ませるパフォーマンスは日本国内だけでなく、イスラエルでも高い評価を得ています。
伴奏のカヌーン(アラブ伝統の撥弦楽器、台形の箱形に多数の弦が張られた箏のような楽器)を演奏するのは、アラブ古典からフラメンコ、ラテン音楽まで幅広く活躍する海沼正利。
彼のカヌーンをバックに歌い紡ぐセファルディの歌は、日本人の彼女にしか成しえない、素晴らしい作品に仕上がっています。
※2012年3月22日(木)日本経済新聞裏面文化欄掲載