ルーマニアの個性的な指揮者、コンスタンティン・シルヴェストリ(1913~1969)が1964年春に唯一来日し、NHK交響楽団に客演した際のライヴである。
録音は年代的にオリジナルはステレオだと思うのだが、モノラルとなっているがそのぶん聴きやすいのかもしれない。
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界」は十八番だが、第1楽章は出だしのホルンがずいぶん田舎臭く、ティンパニも布団を叩いているようで野暮ったい。テンポの変動が激しい。第2楽章はいくぶんすっきりしており、素直に浸ることが出来るが、次第にヴィブラートを効かせた節回しが表れてくる。 第3楽章は荒れ狂う嵐のようだ。 第4楽章も感情のうねりや伸び縮みするテンポで変化が多いがいやはや、聴き疲れする演奏である。
R=コルサコフ:スペイン狂詩曲も迫力満点だ。効果を狙うためには何もいとわないのがシルヴェストリである。曲の内面に潜む民族性というか、土俗性を暴き出している。
以上が4月5日、東京文化会館での特別演奏会のライヴ。
エネスコ:ルーマニア狂詩曲第1番は3月21日、旧NHKホールでの公開録音だが、旋律の伸び縮みが変幻自在でオーケストラが戸惑いなから演奏しつつ、よく付いていっているものだと妙に感心してしまう。名演とはいえないが面白い。
チャイコフスキー:交響曲第4番ものっけから効果を狙っている。短いフレーズごとに区切ってコブシを利かせる、または利かせようとするので強い抵抗こそあるが実演で聴くとハラハラ、ドキドキの連続だったに違いない。そう思うと憎めない演奏である。
アルヴェーン:スウェーデン狂詩曲第1番「夏至の徹夜祭」は北欧の詩情というよりは蒸せかえるような熱帯夜のようでジャズのノリすら感じさせるが、決して嫌味ではない。
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第1番はオーケストラが表現意欲についてこないもどかしさがあるが、この怪人指揮者の感情の爆発と吐露とが交錯したこの事なかれ主義のオーケストラの歴史上に残る奇演である 。
以上、5月2日、旧NHKホールでの放送用演奏会ライヴである。
[キングレコード:KKC2049~50/2CD]