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凄まじい狂気をはらんだ歴史的名盤『Funcrusher Plus』をリリースし、90年代に業界を席巻したアンダーグラウンド・ヒップホップ・グループCompany Flow。
そのほぼ全ての楽曲のプロデュースを担当しラップにも参加したグループの頭脳、El-Pによる5年ぶりのソロアルバム。
Company Flow解散後も、ノイズなど破壊的なサウンドを用いた1stソロアルバム『Fantastic Damage』をはじめとして問題作を多く残し、いまだシーンに大きな影響を誇るEl-Pですが、
最近の作品は実験的でやや聞きづらいというイメージをもたれている方も多いのではないかと思います（僕もその一人でした）。
しかし今作は、今までどおりのインダストリアルサウンドをある程度継承しつつも、非常に聞きやすく仕上がっている。
とにかく展開が派手だったり、コミカルだったりするものが多く、アルバムを一枚通しで聞いても退屈することはほぼありませんでしたし、
どの曲にも遊び心にあふれていて、聞いていて本当に面白い。
「So You Should Pump This S***, Like They Do In The Future」という謎のフレーズが繰り返される2曲目「The Full Retard」のようなちょっとふざけた曲があるかと思えば、
かわいらしい（？）電子的なボイスやおどろおどろしいライムが特徴的な4曲目「Drones Over BKLYN」のように、ヒップホップ界隈随一のSFファンであるEl-Pならではの緊張感に満ちている曲もあったり。
そして最後には、チップチューンやギターなどの独特な音を駆使した、8分間に及ぶ壮大なプログレ風の大作「$4 Vic/FTL (Me and You)」で幕を閉じる。
よくもまあこれほど多様な音を組み立てられるなあ、と素直に感心してしまいました。
しかもこの人、さり気なくラップが非常に上手い。今まではどうしてもサウンドメーカーとしての評価ばかりが先行しがちでしたが（つい先日もKiller Mikeの『R.A.P. Music』のプロデュースをやっていましたし）、「For My Upstairs Neighbor (Mums The Word)」など今作では随所で素晴らしいラップを魅せてくれます。
並みのラッパーなら確実に舌がもつれそうな、言葉遊びも交えた抽象的で複雑なライムは必聴。
白人ラッパーとしては間違いなく最高クラスでしょう。
実験性は薄まったとはいえ、総合的に見ればかなりの良作と言えるのではないでしょうか。
ここ数年でエクスペリメンタルヒップホップ系統の新人たちの存在感が増している中で、ベテランがその力を見せ付けた、といったところ。
特に前述の3曲は、彼のキャリアの中でも屈指の名曲だと思います。
ただし、El-PにCompany Flow時代のような煙たく息苦しいドープなサウンドを求めている人、あるいはこれまでのソロアルバムで見せたような非常に強い実験性を求めている人は、多少拍子抜けするかもしれませんので、その点は注意して下さい。
少し変わったヒップホップを聞きたい方はぜひ。
あとは余談ですが、最近になってCompany Flowとしての活動も少しずつ行っているらしいです。
またいつか、当時のメンバーを集めて『Funcrusher Plus』のような先進的で病的なアルバムを作ってくれることを期待しています。
他の国からのトップレビュー
Dylan Mayberry
Instant classic.
2022年11月13日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
Robert
;)
2023年11月13日に英国でレビュー済みAmazonで購入
Bear the cat
Must own for all progressive hip hop heads
2017年5月16日にカナダでレビュー済みAmazonで購入
Topher
If you have ever liked him, you will love this album.
2021年3月20日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
timdrew
You’re the cancer
2017年11月22日にカナダでレビュー済みAmazonで購入
