2012年リリース、曲目は商品紹介の通り。本アルバムは写真家、映画監督の蜷川実花氏がセレクトした戸川純のベスト・アルバムです。個人的には戸川純、ヤプーズ、ゲルニカのアルバムは概ね所有しているし、他のベスト・アルバムもあるしで、本アルバムの存在は知ってはいましたが、今までスルーしていたのです。しかし最近になって突然思い出して、他の方のレビューを読ませていただいたら、とても好意的なものが多いので、思い切って購入してみました。
そして早速聴いてみたら、評判通り実に良い選曲ですね。それとブックレットの1ページ目に蜷川氏による簡単なメッセージがあるので、全文紹介させていただきますと、
ー私の人生の中で最も多く聞いた曲は間違いなく、この「蛹化の女」。初めて聞いた小学生の時から今の今まで、私にとって一番大切な曲です。そんな私が今回アルバムを選曲させていただくなんて。あぁ当時の私に自慢したい。蜷川実花
というワケでこのアルバムには「蛹化の女(むしのおんな)」が3曲も入っているのです。7は「玉姫様」(1984年リリース)からの最初の録音。20はパンク・ヴァージョンのライヴ演奏「パンク蛹化の女」で、名作ライヴ盤「裏玉姫」(1984年)からではなく、より過激で曲の崩しの強烈な「東京の野蛮」ヴァージョン(1987年)なのが意表を衝きます。そして21は7とほぼ同じアレンジとテンポで歌う2011年の未発表ライヴ・テイクである。この21も凄い。何故って当時50歳を超えたばかりの戸川さんのお声が年相応の渋みを持っていて、聴いてドッキリですから。
あと驚いたのは15。実は恥ずかしながら今回初めて聴きましたが、緊張感あふれるブリジット・フォンテーヌのオリジナル歌唱をあざ笑うかのような脱力感を伴うボーカルは意表を突くものなのですが、曲の魅力の本筋を外してもいない。バックの演奏も、アート・アンサンブル・オブ・シカゴのオリジナル伴奏を踏襲したものだから安心して聴ける。これはもしかしたらオリジナルを超えているかも。これを持ってしても月並みな言い方しかできませんが、戸川さんは天才的な表現者であることがわかります。本アルバムは購入して本当によかったと、戸川純のファンであれば誰もが思う好編集盤です。
ちなみに「東京の野蛮」はアナログ盤しか持っていなかったので、本アルバムの20と21をダウンロードして、これで私のiPodに取り込まれた「蛹化の女」は計4曲となりました。あー幸せ・・・・。
そして例によって皆さんのレビューに大感謝です。