本書の副題『青酸カリからギンナンまで』とあることや、このページの上の「商品の説明」に「身の回りは毒であふれている。食べ物や嗜好品に含まれる毒から歴史のひとこま……毒にまつわる事故や犯 罪まで幅広く紹介」とることからすると、些かセンセーショナルなイメージが浮かぶが、本書は「青酸カリ」や「アルカロイド」等の代表的な化学物質に留まらず、毒性物質の基本的解説から、毒の種類・作用、歴史事実(犯罪)に見える毒、食品の毒(動植物)、毒に依る事故や注意事項、毒に依る犯罪事件、「麻 薬」の原理と作用など、幅広く身近な動植物や食品類、事件・事故に関するトピックを化学的(科学的)に紐解いていくものである。各トピックでは必要に応じて化学構造式なども掲示される、論述では専門的な解説も展開されるが、細かな側面まで理解しなくても大きな支障にはならないと思う。本書の構成・内容詳細については、「なか見!検索」ができるので、本稿では特に取り上げず右に譲る。以下では特に個人的に興味を惹いたトピックについて幾つか紹介したい。
全てのトピックが興味深いと言えるのだが、その中でもやはり興味を惹くのは、第4章の身近な「食べ物と毒」であろうか。ワラビ、フキノトウの毒性(多くは灰汁抜きで分解される)、そして副題にも見える「ギンナン」である。特に「ギンナン中毒」については、実例が報告されており、「嘔吐、下痢、めまい、両上肢の振戦、悪寒」といった症例があると言う。このほか、「ペットにチョコレートを与えるのは間違い」と注意を喚起している。また第5章では「毒による事故」の例を取り上げ、例えば「スイセン」(葉をニラ、球根を玉ねぎと間違えた実例)、「アジサイ」(料理の盛り付けに葉を使用)などに依る中毒症例が解説されている。身近な実例だけに覚えておきたい事情である。これら以外には第3章の「歴史」編も興味深いが、特に「華岡青州と通仙散」では、華岡青州の「全身麻酔薬」の開発(生体実験)の経緯にも言及があるが、詳細は有吉佐和子の『華岡青州の妻』が小説ながら、この生体実験を題材にしている(但し実情は小説のような妻と姑の対立・献身という構図はフィクションとされている)。全体にいずれのトピックも興味深く、広くお薦めできる一冊だろう。
Kindle 価格: | ¥693 (税込) |
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毒 青酸カリからギンナンまで (PHPサイエンス・ワールド新書) Kindle版
身の回りは毒であふれている。食べ物や嗜好品に含まれる毒から歴史のひとこまとしての毒、毒にまつわる事故や犯罪まで幅広く紹介。
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2012/5/19
- ファイルサイズ22210 KB
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- 販売: Amazon Services International LLC
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商品の説明
出版社からのコメント
はじめに
第1章 毒についての基本知識
身の回りにある毒
人、毒に会う
動植物と毒
第2章 毒とは何か
その起源による毒の分類
作用による毒の分類
法規による毒の分類
第3章 歴史のひとこまを飾る毒
中国皇帝たちの「不老不死」の夢
ソクラテスとクレオパトラの死
大仏の鍍金に使われた水銀
第4章 食べ物と毒
薬食同源と薬毒同源
毒きのこによる中毒
坂東三津五郎の死とフグ毒
第5章 毒による事故
からしれんこん事件
ハチ類とアナフィラキシーショック
毒ヘビ
第6章 毒にまつわる犯罪
トリカブト保険金殺人事件
本庄保険金殺人事件
二つの愛犬家殺人事件
第7章 麻薬と関連物質
麻薬とは何か
アヘンとアヘン戦争、モルヒネ、ヘロイン
コカ葉とコカイン
おわりに
参考文献
第1章 毒についての基本知識
身の回りにある毒
人、毒に会う
動植物と毒
第2章 毒とは何か
その起源による毒の分類
作用による毒の分類
法規による毒の分類
第3章 歴史のひとこまを飾る毒
中国皇帝たちの「不老不死」の夢
ソクラテスとクレオパトラの死
大仏の鍍金に使われた水銀
第4章 食べ物と毒
薬食同源と薬毒同源
毒きのこによる中毒
坂東三津五郎の死とフグ毒
第5章 毒による事故
からしれんこん事件
ハチ類とアナフィラキシーショック
毒ヘビ
第6章 毒にまつわる犯罪
トリカブト保険金殺人事件
本庄保険金殺人事件
二つの愛犬家殺人事件
第7章 麻薬と関連物質
麻薬とは何か
アヘンとアヘン戦争、モルヒネ、ヘロイン
コカ葉とコカイン
おわりに
参考文献
著者について
1951年仙台市生まれ。東北大学薬学部卒業、同大学大学院薬学研究科博士課程修了。薬剤師・薬学博士。天然物化学・薬用植物学・薬史学専攻。イリノイ大学薬学部博士研究員、北里研究所微生物薬品化学部室長輔佐、東北大学薬学部専任講師、青森大学工学部教授、日本薬科大学教授などを経て、現在、日本薬科大学特任教授。日本薬史学会常任理事。著書に『毒と薬の世界史』(中公新書)、『毒の科学』(ナツメ社)、『〈麻薬〉のすべて』(講談社現代新書)、『アルカロイド―毒と薬の宝庫』(共立出版)、『毒と薬の文化史』(慶應義塾大学出版会)などがある。TV出演にNHK「爆笑問題のニッポンの教養(file082)ヒトと毒薬」など。
登録情報
- ASIN : B008CY1IIE
- 出版社 : PHP研究所 (2012/5/19)
- 発売日 : 2012/5/19
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 22210 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 246ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 51,595位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 1位PHPサイエンス・ワールド新書
- - 64位基礎医学 (Kindleストア)
- - 3,957位科学・テクノロジー (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2014年11月23日に日本でレビュー済み
レポート
Amazonで購入
6人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2013年7月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
もう少し難しく重いのかと思っていましたが、過去の事件なども絡めて思い出しながら読めました。
2022年4月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「青酸カリからギンナンまで」というタイトル通り、取り上げられる毒の幅広いこと。
「薬毒同源」と著者は何度もいう。アンモニア合成法を開発してノーベル化学賞を受賞した化学者がイペリット(毒ガス)開発の指揮をとり(薬→毒)、そのイペリットをベースに抗癌剤(抗白血病薬)が実用化された(毒→薬)というくだり(pp.91-92)など、まさにそれを実感させられる。
昨今の世界情勢とのかかわりでは、元KGB職員でロンドンに亡命したアレクサンドル・リトヴィネンコが2006年にポロニウム210で暗殺された事件(pp.184-185)が恐ろしい。
「毒をただ恐ろしいものとみなすのではなく、また軽々に面白がるのでもなく、普段の注意は払いながらも冷静に付き合い、正当にこわがっていくべきであろう(p.235)」というのが著者の結論でありアドバイスである。
「薬毒同源」と著者は何度もいう。アンモニア合成法を開発してノーベル化学賞を受賞した化学者がイペリット(毒ガス)開発の指揮をとり(薬→毒)、そのイペリットをベースに抗癌剤(抗白血病薬)が実用化された(毒→薬)というくだり(pp.91-92)など、まさにそれを実感させられる。
昨今の世界情勢とのかかわりでは、元KGB職員でロンドンに亡命したアレクサンドル・リトヴィネンコが2006年にポロニウム210で暗殺された事件(pp.184-185)が恐ろしい。
「毒をただ恐ろしいものとみなすのではなく、また軽々に面白がるのでもなく、普段の注意は払いながらも冷静に付き合い、正当にこわがっていくべきであろう(p.235)」というのが著者の結論でありアドバイスである。
2014年10月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
薬と毒のすれすれの部分が素人にもわかりやすく、又、
興味深い事例も多く書かれており、すぐに読んでしまいました。
中学生の子供も勉強になったと言っています。
興味深い事例も多く書かれており、すぐに読んでしまいました。
中学生の子供も勉強になったと言っています。
2016年9月1日に日本でレビュー済み
kindle unlimitedで読了。
思いのほか知らないことばかりで恥ずかしい限りです。
現在にあっても、食というと、ベジタリアンからローカーブまで、極端な話ばかり注目されますが、浅はかなのはだめだなと勉強になりました。
書かれている素材の多くが植物系でした。
ベジタリアンなんて、どうするんだろう。食べているものが蓄積型の毒だったら。
思いのほか知らないことばかりで恥ずかしい限りです。
現在にあっても、食というと、ベジタリアンからローカーブまで、極端な話ばかり注目されますが、浅はかなのはだめだなと勉強になりました。
書かれている素材の多くが植物系でした。
ベジタリアンなんて、どうするんだろう。食べているものが蓄積型の毒だったら。
2017年8月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
毒植物のフォトが少な過ぎで、視覚に訴えるところがないに等しいです。解説も硬い文章で新聞記事を読んでるみたいで、触覚も反応しませんでした。物足りない出来かと思います。
2018年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前置がくどい上に、内容はあまり深くもなく、とおり一遍のことしか書かれていない。テニオハがおかしいところも誤字誤植もある(1版3刷)し、ウィキ丸写し的な記述もある。政治的な背景が指摘されている森村誠一の本を参考文献にしていたり、毒性が消えることの無い物質と、放っておけば能力を失う放射性物質を同列に扱ったり、と、ちょっと学者さんとしてどうなの、と思わざるを得ない内容でした。
アスベストの性質を列記してあったけど「耐音性」ってどういう意味?この本の内容、信用して良いの?
中古書店さんの出品を買ったので金銭的な損得は抜きにするとしても、知識欲を満たしてくれる書物ではなかったですね。
アスベストの性質を列記してあったけど「耐音性」ってどういう意味?この本の内容、信用して良いの?
中古書店さんの出品を買ったので金銭的な損得は抜きにするとしても、知識欲を満たしてくれる書物ではなかったですね。
2014年1月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
文庫本ながら主要な毒について簡潔にまとめられていて
とても読みやすかったです。
ジャンルがジャンルなので実用性には乏しいですが
雑学知識としてはとても良いと思います。
とても読みやすかったです。
ジャンルがジャンルなので実用性には乏しいですが
雑学知識としてはとても良いと思います。