NYの伝説的エクスペリメンタルパンク・バンド、Swansの12th。
13年の沈黙を破った前作「My Father Will Guide Me up a Rope to the Sky」に続く復帰第二作は、CD二枚組、2時間超、11曲の大作にして、間違いなくエクスペリメンタル・パンクの歴史に名を刻むであろう大傑作です。
レーベルはもちろんYoung God。
ドローンやノイズのような一般的に「ヘヴィー」と表現される類の音も少なからずありますが(Ben Frostを起用していることから明らかなように)、何よりも聞き手の精神にずっしりのしかかるのは、Michael Giraの渋いボーカルと、単語の反復を巧みに用いた猟奇的なリリック。
そしてそれに合わせてミニマルな展開を見せる、膨大な種類の生楽器(ドラム、ギター、ベースはもちろん、果てはハーモニカ、ダルシマー、オルガン、アコーディオン、マンドリン…等々に至るまで)でしょう。
こんな楽器を使ったら普通はカントリーやらフォークやらのトラディショナルなアメリカン・ミュージックが出来そうなものですが、Giraがつくり上げる巧妙な展開の中では、それらも途端にリスナーの精神を蝕む重いサウンドへと変貌します。
鬼気迫るギターと、何かに取り憑かれたかのように連呼される"Lunacy"というワード、そして"Your Childhood is Over"という声が恐ろしげなオープニング・トラック、「Lunacy」。
繰り返し振り下ろされる鉄槌の如き暴力性を持つギターリフが数分間にわたって反復された後、醜い「世界の母」に対する畏敬が朗々と歌いあげられる「Mother of The World」。
本作中最大規模の楽器隊を投入して演奏されるドローンと、ハーモニカの独奏がどうしようもない絶望感を増幅させる30分超の表題曲「The Seer」。
燃え盛る炎の音が徐々にノイズへと変貌していき、最後には美しいボーカルトラックとなる「A Piece of The Sky」など、聞いてるだけで頭がおかしくなりそうな曲の連続。
ラストは「The Apostate」(背教者)。おそらく最も濃厚で残虐で暴力的で快楽的な23分間。
脳みそを叩き潰すように掻き鳴らされる超攻撃的な演奏が10分ほど続いたあたりで、曲調が一変。
どこか神々しさすら感じさせるチューブラーベルの音色に合わせ、還暦間近のGiraが精神に異常をきたしたとしか思えない超絶高テンションで怒鳴り散らす。
"It's not in my mind"
"You're not in my mind"
"Get out"
"We're on a ladder to god"
"Blessed"
…
薬物中毒者がNYの路地裏でつぶやいてそうな言葉ですが、この異常な作品の最後を飾るにはふさわしい歌詞。
Michael Giraという奇人が、30年の年月をかけてたどり着いた前人未到の境地。見事です。
The Seer
仕様 | 価格 | 新品 | 中古品 |
CD, CD, インポート, 2014/3/6
"もう一度試してください。" | CD, インポート | ¥2,251 | ¥1,790 |
CD, CD, インポート, 2014/3/18
"もう一度試してください。" | CD, インポート |
—
| ¥4,347 | ¥2,598 |
CD, CD+DVD, スペシャル・エディション, 2012/8/28
"もう一度試してください。" | CD+DVD, インポート |
—
| — | ¥2,700 |
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登録情報
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 製品サイズ : 12.65 x 14.33 x 1.32 cm; 113.4 g
- メーカー : Young God Records
- EAN : 0658457004524
- 商品モデル番号 : 26256699
- レーベル : Young God Records
- ASIN : B008K7WCJM
- ディスク枚数 : 2
- Amazon 売れ筋ランキング: - 342,794位ミュージック (ミュージックの売れ筋ランキングを見る)
- - 70,062位ロック (ミュージック)
- - 96,929位輸入盤
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年9月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2015年1月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
SWANSまだいたんだ、と懐かしさのあまり購入。
初期のノイズ大魔王を経てLove Will Tear Us Apartのカバーあたりで聞かなくなっていたので、本当に久しぶり。
ところが、これが思いの外、よい。進化というか深化していて、味わい深い。
思わずTo Be Kindも買ってしまいました。
初期のノイズ大魔王を経てLove Will Tear Us Apartのカバーあたりで聞かなくなっていたので、本当に久しぶり。
ところが、これが思いの外、よい。進化というか深化していて、味わい深い。
思わずTo Be Kindも買ってしまいました。
2012年9月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
Michael GiraがSWANSとしてのキャリアの最高到達点かつ集大成と言っているようですが、実際そのような充実した内容です。初期SWANSを思わせる反復的で不穏な重いビートの曲で始まり、Angels of Light風の曲などが間に挟まれますが、この重さや不穏さはやっぱりSWANSだなあという感じです。The Burning World以降の展開とはまた違った作風で、いい意味で新しいSWANSが聴けたという印象です。ゲストも豪華で(当然Jarboeも参加してます)、意外なところではRobert Rutman(steel cell)が挙げられます。Current 93といいSWANSといい、10代の時に聴いていたバンドがこのところ新境地を示す充実した作品を発表しているのはうれしい限りです(年寄臭い感慨ですが)。
2013年2月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
コレを聴くと前作は肩慣らしだったンだなと思わざるおえない。通して聴いてもダレない。楽曲の構成が明らかに固まって聴きやすいです。(SWANSとしては)
2012年9月17日に日本でレビュー済み
82年結成、既存のジャンルに囚われない自由なスタイルでNYアンダーグラウンドシーンに大きな影響力を誇ったMichael G
ira率いるアート・パンク集団Swansの13作目。
14年振りの再結成作となった前作「 My Father Will Guide Me Up a Rope to the Sky 」は評論筋を含め高評価を得たが、前作
が復帰時のウォーム・アップだったのかと捉えてしまう程、格段に濃厚さとボリュームを増した大作を間髪入れず放ってきた。
全119分・CD2枚組に及ぶ本作はGira自身Swans30年を数えるキャリアの頂点と捉えており、彼ら独自の表現を徹底的に突
き詰め膨らませた11篇が揃う。結果として楽曲は2分程度〜30分超の大曲迄がいびつに並び、各曲がそれ単体で別個の色
を放つのには驚かされる。
全体として共通するのが彼ら独自の暗く屈折した音世界観。作品の特徴である呪文のような断片フレーズや民族楽器をも駆
使したリズムの反復、轟音の塊は、一度その魅力に嵌ればブラック・ホールの如く飲み込まれる強い引力を持つ。
楽曲は歌を軸としたものと、言葉・リズムの反復を軸としたものに大別される。まず歌を主軸にした楽曲。比重としては小さいが
、全体に暗い色彩で統一される流れの中で小休止的に配置される。例えばYeah Yeah YeahsのボーカリストKaren Oを迎え
る「Song for a Warrior」、穏やかなフォーク調ギターとKarenの自然体の艶ある歌との2重奏は、彼らが創作したとは信じ難い
程の安息と美しさに満ちる。
そして言葉・リズムの反復を軸としたプログレ的性格の楽曲。本作の大半を占めるのがこの類であり、カードに刻まれた謎め
く断片的フレーズが延々と繰り返される。楽曲は定形としての起承転結を持たず、映画の中で場面が推移する様に突如別の
リズム・パターンへと変遷する。これも最後の数分で展開に変化が待ち受けたりと油断できない。
最も衝撃的なのが30分超の大曲「The Seer」。前半猛進するドラム・ビートと「I see it all…」の文句が10数分の時間をかけ繰
り返され、じわじわ熱を帯びた音の渦はある瞬間頂点に達し爆発する。その後燃え盛る轟音の炎が鎮静される迄を音で表現し
た様な後半はさらに壮絶だ。何十回も叩きつけられる不穏なコードとその周りを蠢くギターの叫びは大自然の天変地異を目の
当たりにしたかの様で極めて映像的。楽曲と呼ぶには微妙な不定形さを持つこの曲、聴き終えた後は一本の映画を見終えた
様な充実感だ。
もう一曲推したいのがインストの「93 Ave.B Blues」。まるで鳥の鳴き声の如くキーキー飛び回るホーンの高音、不定期に爆発
するドラム、呪術的なコーラスの組み合わせが産みだす不穏な音像はアヴァン・ジャズの感触がある。
聴き手に寄り添う娯楽性よりも、アートとしての音楽表現を追求した性格の強い作品で、受け止める側も相当な消化エネルギー
が要求される。好き嫌いが明確に分かれる類の音楽で万人にはお薦めしにくいのだが、私的には稀有な音楽体験が出来た。
ira率いるアート・パンク集団Swansの13作目。
14年振りの再結成作となった前作「 My Father Will Guide Me Up a Rope to the Sky 」は評論筋を含め高評価を得たが、前作
が復帰時のウォーム・アップだったのかと捉えてしまう程、格段に濃厚さとボリュームを増した大作を間髪入れず放ってきた。
全119分・CD2枚組に及ぶ本作はGira自身Swans30年を数えるキャリアの頂点と捉えており、彼ら独自の表現を徹底的に突
き詰め膨らませた11篇が揃う。結果として楽曲は2分程度〜30分超の大曲迄がいびつに並び、各曲がそれ単体で別個の色
を放つのには驚かされる。
全体として共通するのが彼ら独自の暗く屈折した音世界観。作品の特徴である呪文のような断片フレーズや民族楽器をも駆
使したリズムの反復、轟音の塊は、一度その魅力に嵌ればブラック・ホールの如く飲み込まれる強い引力を持つ。
楽曲は歌を軸としたものと、言葉・リズムの反復を軸としたものに大別される。まず歌を主軸にした楽曲。比重としては小さいが
、全体に暗い色彩で統一される流れの中で小休止的に配置される。例えばYeah Yeah YeahsのボーカリストKaren Oを迎え
る「Song for a Warrior」、穏やかなフォーク調ギターとKarenの自然体の艶ある歌との2重奏は、彼らが創作したとは信じ難い
程の安息と美しさに満ちる。
そして言葉・リズムの反復を軸としたプログレ的性格の楽曲。本作の大半を占めるのがこの類であり、カードに刻まれた謎め
く断片的フレーズが延々と繰り返される。楽曲は定形としての起承転結を持たず、映画の中で場面が推移する様に突如別の
リズム・パターンへと変遷する。これも最後の数分で展開に変化が待ち受けたりと油断できない。
最も衝撃的なのが30分超の大曲「The Seer」。前半猛進するドラム・ビートと「I see it all…」の文句が10数分の時間をかけ繰
り返され、じわじわ熱を帯びた音の渦はある瞬間頂点に達し爆発する。その後燃え盛る轟音の炎が鎮静される迄を音で表現し
た様な後半はさらに壮絶だ。何十回も叩きつけられる不穏なコードとその周りを蠢くギターの叫びは大自然の天変地異を目の
当たりにしたかの様で極めて映像的。楽曲と呼ぶには微妙な不定形さを持つこの曲、聴き終えた後は一本の映画を見終えた
様な充実感だ。
もう一曲推したいのがインストの「93 Ave.B Blues」。まるで鳥の鳴き声の如くキーキー飛び回るホーンの高音、不定期に爆発
するドラム、呪術的なコーラスの組み合わせが産みだす不穏な音像はアヴァン・ジャズの感触がある。
聴き手に寄り添う娯楽性よりも、アートとしての音楽表現を追求した性格の強い作品で、受け止める側も相当な消化エネルギー
が要求される。好き嫌いが明確に分かれる類の音楽で万人にはお薦めしにくいのだが、私的には稀有な音楽体験が出来た。
他の国からのトップレビュー
Rodrigo Frias
5つ星のうち1.0
???
2021年6月29日にブラジルでレビュー済みAmazonで購入
The Seer é um dos álbuns favoritos da minha banda favorita da vida, mas não foi ele que eu recebi.
Paguei +300 reais no LP triplo de uma banda de Post-Rock e Rock Experimental para chegar em casa um disco de 180 de Soul...
Paguei +300 reais no LP triplo de uma banda de Post-Rock e Rock Experimental para chegar em casa um disco de 180 de Soul...
Dan Lavington
5つ星のうち5.0
Simply brilliant!
2023年12月31日に英国でレビュー済みAmazonで購入
The first of a trilogy of albums by Swans, fans of the NY band will obviously know that many other albums by Swans are also available since they formed around 1982.
This album is yet another change in Michael Gira’s musical direction & it’s nothing short of yet another masterpiece!
This album is yet another change in Michael Gira’s musical direction & it’s nothing short of yet another masterpiece!
Matteo M.
5つ星のうち5.0
The Seer
2018年9月25日にイタリアでレビュー済みAmazonで購入
Spedito da Amazon e arrivato in perfette condizioni.
Disco incredibile di una band fenomenale, questo capolavoro firmato da M. Gira & co. esplode in tutti i sensi con 2 ore di musica spaventosamente viscerale, inquietante, a tratti soave, si insinua nella pelle dell'ascoltatore e regala emozioni disparate e sempre differenti. Richiede più ascolti soprattutto ai neofiti di questa band o in generale a chi è poco abituato alla musica sperimentale, ma dopo, l'appagamento diventa totale. Consigliato invece a chi conosce già i cigni e ha apprezzato particolarmente lavori come Children of God e Soundtracks for the Blind ma anche a chi conosce band come i Godspeed you! Black emperor e giù di lì. Quest'album apre l'ultima trilogia della band che comprende anche To Be Kind e The Glowing Man. Tre dischi meravigliosi tra i quali questo, a mio avviso, continua a spiccare sugli altri. Da ascoltare e riascoltare per coglierne ogni sfumatura. 10/10
Disco incredibile di una band fenomenale, questo capolavoro firmato da M. Gira & co. esplode in tutti i sensi con 2 ore di musica spaventosamente viscerale, inquietante, a tratti soave, si insinua nella pelle dell'ascoltatore e regala emozioni disparate e sempre differenti. Richiede più ascolti soprattutto ai neofiti di questa band o in generale a chi è poco abituato alla musica sperimentale, ma dopo, l'appagamento diventa totale. Consigliato invece a chi conosce già i cigni e ha apprezzato particolarmente lavori come Children of God e Soundtracks for the Blind ma anche a chi conosce band come i Godspeed you! Black emperor e giù di lì. Quest'album apre l'ultima trilogia della band che comprende anche To Be Kind e The Glowing Man. Tre dischi meravigliosi tra i quali questo, a mio avviso, continua a spiccare sugli altri. Da ascoltare e riascoltare per coglierne ogni sfumatura. 10/10
Autonomeus
5つ星のうち5.0
Raw and visionary, it rips open the perceptual cage
2015年5月18日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
I was initially underwhelmed by this album, which made all the critics' best-of lists for 2012, but eventually I realized what everyone was raving about. The thing is, though, THE SEER is not equally superb throughout. The second disc is just amazing, so don't be too hasty to form your opinion after only hearing Disc One. The opening track (Lunacy) is fairly light, and there is a clear minimalist influence. Then Disc Two shoots us screaming into space on a dark, psychedelic voyage!
Michael Gira's reformed Swans are more powerful than ever. The more recent TO BE KIND (2014) is more consistent than THE SEER -- it's stronger throughout -- but it does not reach the same heights.
The music of Michael Gira and Swans is raw, visionary and uncompromising. His vocals remind of both Lou Reed and Iggy Pop, but the music is sui generis. Listening is like plugging your mind directly into the black hole at the heart of the galaxy.
Michael Gira's reformed Swans are more powerful than ever. The more recent TO BE KIND (2014) is more consistent than THE SEER -- it's stronger throughout -- but it does not reach the same heights.
The music of Michael Gira and Swans is raw, visionary and uncompromising. His vocals remind of both Lou Reed and Iggy Pop, but the music is sui generis. Listening is like plugging your mind directly into the black hole at the heart of the galaxy.