初めて聴いた時、少し印象がぼんやりしていた。だからしばらく聞き込んだ。
何しろ、初めて手にしたセカンド・アルバムは半年聴いてようやく自分なりのイメージを持てましたから。
どういうわけだか、Peaple in the boxは自分にとって、この音が好きなのかそうじゃないかすら判断できないのだ。
「Bird Hotel」「Ghost Apple」は、一聴してすぐ気に入った。
ある程度路線が決まってきたから、私の脳が判断しやすかったのだろう。
で、今作である。またわけがわからなくなった。
ギターにセミ・アコースティックな響きが多いことはわかる。
ストロークではなく単音のつながりで作るリフを印象的に用いているのもわかる。
だけどいいのか悪いのか、好きなのか嫌いなのかわからない。
私の脳のどこが混乱しているのかわからないが、私はにやりとほくそ笑んだ。
これは、しばらくしたら病み付きになる予兆だ。
2週間で、大好きになった。
「序」で見せるいたずら心。
「ダンス・ダンス・ダンス」で、演奏と声が同等に渡り合う感じ。今までは声が曲を強くリードして、演奏がそれを固める感じだったのに。
「割礼」での間奏のバリエーションの豊かさ。
「市場」のキャッチーで軽快なフレーズの繰り返し。
詩人も小説家も、AというとつまらないからBと例えるのではない。
Aなどとは表現できないのだ。そもそも、表面的な記号としての言葉をつないでは表現できないから、Bと表現するのだ。
それをAの形に解説してみようとするのは評論家の仕事である。
比喩というのはそういうものだ。この歌詞は、この曲は、ハタノが表現したいものそのままの形なのだ。
日常的な記号的な言語ではないのだ。はじめから比喩そのものとして存在するのだ。