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クライマーズ・ハイ (文春文庫) Kindle版
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2006/6/10
- ファイルサイズ1129 KB
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商品の説明
商品説明
組織と個人の軋轢、追う者と追われる者の駆け引きなどを緻密な筆でつづり、水際立った展開で読み手を引きこむのが横山の持ち味である。しかし本作では、あえてその筆の巧みさに自ら縛りをかけ、実体験をベースに抑制の効いた渋い群像小説となった。トリッキーな仕掛けや、えっ、と声が出そうなスリリングな結末、といったものはない。練りに練ってこれ以上は足し引き不可能な研ぎ澄まされた文章で、未曾有(みぞう)の大事故に決然と立ち向かい、あるいは奔流を前に立ちすくむ人間を描いている。
地方新聞の一筋縄ではゆかない、面妖と言っても過言でない人間関係、ひりひりした緊張感。おそらく横山自身が体験したのであろう新聞社の内幕はリアルで、読み止めを許さない。過去に部下の新人がなかば自殺の事故死を遂げた負い目をもつ主人公は40歳の遊軍記者だ。大惨事の現場にいち早く到着し、人間性のどこかが壊れてしまった26歳の若手記者や、現場雑感の署名記事をつまらぬ社内の覇権争いでつぶされる33歳の中堅記者、「下りるために登るんさ」と謎の言葉を残して植物状態になった登山家の同僚――どの登場人物も、著者の一部であり、また思い通りにゆかない人生を懸命に生きる、すべての人間の一部でもある。
本作は、普通に捉えれば著者の新境地だろう。しかし、これはむしろ横山が元々、奥深くに抱いていたものではないか。著者は本書を上梓することで、自身も過去に決着をつけようとしている印象を強く受ける。やや明る過ぎて物足りない感のある結末も、聖と俗を併せ持つ人間にもっと光を当てたい、救いたいという願いであり、そしてなにより著者自身が本作を支えに新たな一歩を踏み出すためのものだろう。また、そうであってほしい(坂本成子)
内容(「MARC」データベースより)
登録情報
- ASIN : B009DEDBH8
- 出版社 : 文藝春秋 (2006/6/10)
- 発売日 : 2006/6/10
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1129 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 429ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 62,928位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について

1957(昭和32)年、東京生れ。国際商科大学(現・東京国際大学)卒。上毛新聞社での12年間の記者生活を経て、作家として独立。’91(平成3) 年、『ルパンの消息』がサントリーミステリー大賞佳作に選出される。’98年「陰の季節」で松本清張賞を受賞する。2000年、「動機」で日本推理作家協会賞を受賞。現在、最も注目されるミステリ作家のひとりである。(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 看守眼 (新潮文庫) (ISBN-13: 978-4101316727)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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日航機事故や登山に興味のない人も、ある程度の年齢を経で、大事なものをあれこれ置き忘れてきた男の生き様を、主人公に付き合ってタイムトラベルしてあげて下さい。なお本作はドラマ化と映画化もされましたが、原作の熱量を保っていたのはNHKのドラマ版のほうでしょうか。
私も歳を重ね悠木さんの歳を超えましたが
年々受け取り方が変わります
変わらないのは
いつ読んでも勇気をもらえることかな
横山秀夫は短編の人との思いを強くした。
いつも東京を気にする群馬県。全国紙を敵視する地方紙。
東京は群馬を気にしないし、全国紙も地方紙を気にしていないのに。
この妙な田舎根性、ひがみ根性がリアルだ。
「記者屋」とか「山屋」とか男の世界における自己陶酔。
この作者って女性の性を悲劇的なものとしか描けない人だよなー。
女性記者の結末にしても。パンパンの母親にだって誇りはあっただろ。
でも実際、群馬ってこういう土地だ。2022年でも公職の男性が「若い女が」と平気で口にする。
他紙と比べてどうだこうだって、多くの読者は一紙しか取ってないんだから関係ないだろ。
主人公や幹部の熱についていけない。
社内の権力闘争の描写なら高村薫の『レディー・ジョーカー』の方がずっとよかった。
他の方も書いているように、最後の唐突な投書。蛇足。
しかもこれだけ問題を起こした本人が後にその企業に就職できるか?
スクープは飛ばさないし主人公も犬になるしで、現実的ではあるがそれ以外にいいところが見つからない。
小説として一定のレベルに達しているとは思った。
描写の細かさなどは、具体的なイメージを沸かせるのに十分。
ただ、他の方が書かれているように、読み終えてあまりスッキリはしないですね。
それでも、読んでよかったと思える1冊。
その結果横山が採用したのは、現場をあえて書かないという手法だった。地獄を目撃したにもかかわらず、それをあえて書かない。現場から帰ってきた記者に間接的に語らせる、その手法が見事に奏功している。まだ三年目のほとんど駆け出しの記者神沢が別人のようになって帰社し、主人公であるデスクの悠木と対峙する場面は、実際の現場を直接的に描写するよりもはるかに迫力のあるシーンとなっている。「これだけは覚えとけ。お前を調子づかせるために520人死んだんじゃないんだ」という悠木の台詞は、横山が自分自身に向けた戒めの言葉ではなかったか。
事故発生当時の地方新聞社内の上へ下へのドタバタ劇は、元新聞記者ならではの筆致である。編集局の社会部、政治部、さらに制作局、販売局、社長まで交えて、各人の思惑が目まぐるしく交錯する。特に興味深いのは「大久保連赤」世代の社員たちの、この世界的大事故に対する反応である。大久保事件と連合赤軍事件。それはこれまで群馬最大の事件であり、当時の担当記者はその遺産で飯を食ってきた。「大久保」の昔話でうまい酒を飲み、「連赤」の手柄話で後輩記者を黙らせた。そのかつての金メダルが色あせることへの焦りと嫉妬が、紙面づくりへも影響を及ぼす。さらに悠木の幼少期の秘密を知る人物も絡んで、浅ましいとしか言いようのない足の引っ張り合いが始まる。
時折挿入される登山のシーンは、事故から17年後のもう一つの物語である。「下りるために登る――」友人が遺した謎の言葉の意味を知るために、すでに57歳になっている悠木はその友人の息子と一緒に衝立岩に登る。載せるべきではない投書を独断で載せて草津の通信部へ飛ばされることになる悠木のその後は、しかしまんざらでもまんざらでもないことを知って読者は安堵する。
今回が3度目の再読だが、わずか一週間の出来事の中に、新聞社内はもちろん悠木家の家族関係まで、実にさまざまな人間模様が無理なく織り込まれていることに改めて驚く。横山秀夫はミステリー作家であり、とりわけ警察小説を得意とする。そういった意味では、この作品は傍流に位置するだろう。ミステリーはほとんどないが、本作に限ってはミステリーなど必要ない。現代屈指の小説家が、小説家になる前に在籍していた新聞社で、偶然遭遇した未曽有の飛行機事故。「鎮魂ではない」とインタビューで横山は言い切っているが、結果的に本書は同事故を扱った山崎豊子『沈まぬ太陽』よりもはるかに雄弁に、あの大事故を物語っている貴重な遺産であると思う。
横山が当時上毛新聞の記者でなかったら、この作品が書かれることはなかったし、横山が新聞記者を辞めて作家になっていなかったら、やはりこの作品が書かれることはなかった。真実を暴く新聞記者と、物語を紡ぐ小説家。相反する二人の横山が互いを叱咤しつつも手を取り合って完成させた本作は、奇蹟の一冊と言っても過言ではあるまい(あの事故が起こらずこの作品が書かれなかった方が一番よかったのかも知れないが……)。
決して、綺麗事では無い。
うまくいく事ばかりじゃない。
みんなが愛と友情に溢れているわけじゃない。
それでも、嬉しいことや幸せがある。
いい作品だと思いました。