吉川英治文庫で「宮本武蔵」は全8巻であるが、文庫本第4巻は吉岡伝七郎との三十三間堂での対決と、一乗寺の決斗(この直前のお通のセリフ「心の妻」を含む)を収録。本書に描かれている部分は、内田監督・中村錦之助主演の映画『宮本武蔵』シリーズの全5部作の第4作『宮本武蔵 一乗寺の決斗』で、かなり忠実に映画化されている。
原作と映画を比べると、映画は原作の流れに忠実であるが、原作のほうが長く映画でカットされた章は多い。映画ならではのシーンは、光悦の住まいに光悦垣(現在でも光悦寺でみることができる独特の竹垣)が登場したり、刀剣の鑑定などを本職とする光悦が職場を見回るシーンがさりげなく入っていたりするシーン。
武蔵と伝七郎との決闘は、映画では実際に三十三間堂を使って撮影されているが、本物ならではの歴史の重みを感じさせるシーンとなっている(ちなみに、映画の「一乗寺下り松」のシーンで見事な松の大木が映画で登場するが、こちらは作り物)。小説では、伝七郎には吉岡側から一人加勢するが、映画では二人が加勢している。映画では決闘は一瞬で武蔵が三人を、それぞれ一刀のもとに切り伏せているのに対し、小説では武蔵と伝七郎が青眼の構えでしばし対峙しており、描写は長く、構えにゆとりのある武蔵に軍配があがる。
武蔵はこの対決の後、吉野太夫のもてなされるのは映画も小説も共に同じで、「武蔵は張り緊まっているので弛(ゆる)みがないと、吉岡の門人衆に斬られてしまう」と太夫は忠告する(「断弦」の章、第4巻p170)。この流れは映画の方がよい。なぜなら、小説では、このシーンの直前に、「弛みがないため決闘に負けた」のは伝七郎で、肘に余裕をもった武蔵が勝っている(太夫との会話が伝七郎との対決の前であれば、流れはいいのだが、逆になっているので太夫の指摘が当たらなくなってしまっている)。一方、映画の伝七郎と武蔵の決闘では、両者のゆとりに対する説明がないため、太夫のセリフに違和感がない。
太夫は武蔵に忠告する前の場面では、光悦、沢庵、灰屋紹由(はいやじょうゆう、映画では東野英治郎が演じる。小説で、「しょうゆう」と仮名がふられている)らに茶をふるまうが、映画では沢庵は含まれていない。歴史的には、太夫を身請けし妻とするのは小説・映画には登場しない灰谷紹益で、紹由の養子。太夫と紹益の墓は京都市鷹峯(たかがみね)の光悦寺の近くの常照寺(じょうしょうじ)にある。ちなみに吉岡清十郎と武蔵が対決する場所は、吉川英治は洛北船岡山の北、蓮台野にしているが、蓮台野という地名は「上品蓮台寺」という真言宗の寺院にちなむが、今は京都市北区紫野の佛教大学の構内であり、鷹峯から近い場所にあるので、この辺を旅行すると、宮本武蔵の世界に浸れることになる。
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宮本武蔵(4) (吉川英治歴史時代文庫) Kindle版
いまや、武蔵は吉岡一門の敵である。清十郎の弟・伝七郎が武蔵に叩きつけた果し状! 雪の舞い、血の散る蓮華王院。つづいて吉岡一門あげての第二の遺恨試合。一乗寺下り松に、吉岡門下の精鋭七十余人が、どっと武蔵を襲う。--「一回一回の原稿が出来上がるまでは、主人の気迫が反映して、私どもまで緊張につつまれる毎日」だったと、文子夫人は当時の著者を回想している。
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1989/12/5
- ファイルサイズ393 KB
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
完全な戦いの中に呼吸しあう二人の生命。櫂削りの木剣か、物干竿の長剣か。武蔵、小次郎、巌流島での対決のとき来たる。鏤骨の名作、最高潮に。新聞連載時の全挿画を収録。
登録情報
- ASIN : B009GAIGN8
- 出版社 : 講談社 (1989/12/5)
- 発売日 : 1989/12/5
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 393 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 374ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 296,385位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 33,114位日本の小説・文芸
- カスタマーレビュー:
著者について
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1892年神奈川県生まれ。様々な職業を経た後、作家活動に入る。国民文学作家と称され、今も読み継がれている作品が多い。1962年没(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 新装版 三国志(三) (ISBN-13: 978-4062761888 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年11月2日に日本でレビュー済み
大変面白かった。個人読書履歴。
一般文学通算323作品目の読書完。通算467冊目の作品。1991/02/23
一般文学通算323作品目の読書完。通算467冊目の作品。1991/02/23
2009年12月19日に日本でレビュー済み
再び、京の都に姿を現した武蔵。心に留めていた本阿弥光悦との再会を果たし、
陶器や書画を眺め誘われるまま光悦、紹由と共に、六条の遊郭に登楼ります。
灰屋紹由や遊び敵の烏丸光広卿に冷やかされつつ、座興の夜は更けてゆきました。
そこで、2代目吉野太夫に野趣あふれる趣向の中、緊張と弛緩、
相伴うことが理にかなうことを静かに諭されます。
今までに無い駘蕩な日々を吉野太夫の元で過ごした武蔵を
雪辱を期するおびただしい吉岡一門が待っていました。
世に名高い「一乗寺下り松」です。厳しい鍛錬を経て、
吉野太夫のもてなしも味わい、お通の心情や、城太郎の純真も
手の内にした武蔵は人としても、大きくなったようです。
自らの心の声が少し聞こえるようになった武蔵は相手の動きや、殺気が
手に取るように分かります。そこへ行くと鍛え方の根本から違う吉岡一門、
武蔵の敵ではありませんでした。
陶器や書画を眺め誘われるまま光悦、紹由と共に、六条の遊郭に登楼ります。
灰屋紹由や遊び敵の烏丸光広卿に冷やかされつつ、座興の夜は更けてゆきました。
そこで、2代目吉野太夫に野趣あふれる趣向の中、緊張と弛緩、
相伴うことが理にかなうことを静かに諭されます。
今までに無い駘蕩な日々を吉野太夫の元で過ごした武蔵を
雪辱を期するおびただしい吉岡一門が待っていました。
世に名高い「一乗寺下り松」です。厳しい鍛錬を経て、
吉野太夫のもてなしも味わい、お通の心情や、城太郎の純真も
手の内にした武蔵は人としても、大きくなったようです。
自らの心の声が少し聞こえるようになった武蔵は相手の動きや、殺気が
手に取るように分かります。そこへ行くと鍛え方の根本から違う吉岡一門、
武蔵の敵ではありませんでした。
2004年10月11日に日本でレビュー済み
中間のクライマックスである一乗寺下がり松の決闘がこの第四巻です。ここで感動のお通との再開もありますし吉岡との最後の決闘があります。吉川英治さんの深い哲学もはいっています。