山田長政は教科書にも出てきたせいかよく知られている人物ですが、どういう人物かと言うと少なくとも私は全く知りませんでした。
本書は山田長政が日本で藤蔵という名のしがない肉体労働者だった頃から如何にしてタイに渡航して日本人町で名を馳せるようになったかを描いた遠藤周作の小説です。
山田長政については記録がほとんどなくて、Wikiなどで色々調べてみると(今はタイ語Wikiの翻訳を一発でできて便利)、タイ側の記録としては日本人町の長として外国との戦争に傭兵長として参加して度々シャムを勝利に導いた戦果から官位を拝するようになったが、王位をめぐる争いに巻き込まれて遠地に左遷され、最期は戦争で負った傷に毒をもった薬を塗られて死んだということまでは真実なようです。
それに加えて日本人町の伝説も幾分混じった話が盛られて今の山田長政像が出来上がっているようで、それに遠藤周作の多分な創作がストーリーの血となり肉となって本作が形成されています。
さらに本作ではペドロ岐部という同じ長崎出身のキリシタンがキリシタン禁止令のために日本から出ざるを得なくなり、艱難辛苦のあげくローマに辿り着き総本山で司祭にまでなり、現地での引き留め要請も断り、決死の覚悟で帰国して地下での布教活動をした話が長政のストーリーと並行で進みます。
遠藤周作はキリスト教をテーマにした作品が多く、本作もページ数で言えば長政のほうが多いけれども作者の思い入れ的にはダブル主人公なのかも知れません。同時期に二人がアユタヤにいたことは史実なようですが、小説のように二人に接点があった証拠はどこにもないそうです。
というわけで遠藤周作の創作が多いわけですが、その創作が大変面白いです。今まで読んだ遠藤周作作品の中でも一番面白かったです。山田長政とペドロ岐部という同時代に生きた同じ長崎出身の若者が片や自分自身のこの世の成功を追い求めて東南アジアへ、もう一方はデウスの永遠なる天の国へ人々を導こうと南蛮へ赴くという対比が素晴らしいです。
さらにアユタヤでのストーリーも長政の好敵手である摂政カラホームとの政治的かけひき、陰謀の毒牙にかかって死んでいく多くの人々、そして長政が憧れるシャム王女の運命と、非常によく構成されていて、遠藤周作さんってこんなにストーリーを面白く作れる作家さんなんだと感心しました。
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王国への道―山田長政―(新潮文庫) Kindle版
シャム(タイ)の古都で暗躍した山田長政と、切支丹の冒険家・ペドロ岐部――。
二人の生き方を通して、日本人とは何かを探る長編。
『沈黙』『侍』『銃と十字架』をも併読したい、切支丹時代の海外歴史小説。
笑っている者には毒があった、至る所に罠があった。――江戸初期、持ち前の才覚と力倆とで出世の野望を遂げようとした山田長政は、陰険な術策と謀略の渦まくシャム(タイ)のアユタヤ王宮の傭兵隊長となった。一方、切支丹の冒険家ペドロ岐部は魂の救いを求め、アユタヤに着いた。
「地上の王国」を築こうとする者と、「天上の王国」をめざす者とを通して日本人とは何かを探る長編小説。
本文より
要するに二人の議論はいつまでも平行線をたどっていた。ペドロ岐部は長政の生き方がこの世のはかない幻影を追ったものだと考えていたし、長政は岐部の信ずる神(デウス)とか永遠の命がわからなかった。
ただこの二人はたがいに気がつかなかったが一点においてよく似ていた。それは狭い日本にあくせくと生きず、おのれの生き方のために海をこえて新しい世界に突入したことだった。自分の熱情を信じて、まっしぐらに進むその生き方には両者共通したものがあった。
「頑固もんが」
ペドロ岐部は舌打ちをしながら怒った。
「こげん言うてきかせても、わからんとか」……(本書285ページ)
遠藤周作(1923-1996)
東京生れ。幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、11歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は『海と毒薬』『沈黙』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』等。1995(平成7)年、文化勲章受章。1996年、病没。
二人の生き方を通して、日本人とは何かを探る長編。
『沈黙』『侍』『銃と十字架』をも併読したい、切支丹時代の海外歴史小説。
笑っている者には毒があった、至る所に罠があった。――江戸初期、持ち前の才覚と力倆とで出世の野望を遂げようとした山田長政は、陰険な術策と謀略の渦まくシャム(タイ)のアユタヤ王宮の傭兵隊長となった。一方、切支丹の冒険家ペドロ岐部は魂の救いを求め、アユタヤに着いた。
「地上の王国」を築こうとする者と、「天上の王国」をめざす者とを通して日本人とは何かを探る長編小説。
本文より
要するに二人の議論はいつまでも平行線をたどっていた。ペドロ岐部は長政の生き方がこの世のはかない幻影を追ったものだと考えていたし、長政は岐部の信ずる神(デウス)とか永遠の命がわからなかった。
ただこの二人はたがいに気がつかなかったが一点においてよく似ていた。それは狭い日本にあくせくと生きず、おのれの生き方のために海をこえて新しい世界に突入したことだった。自分の熱情を信じて、まっしぐらに進むその生き方には両者共通したものがあった。
「頑固もんが」
ペドロ岐部は舌打ちをしながら怒った。
「こげん言うてきかせても、わからんとか」……(本書285ページ)
遠藤周作(1923-1996)
東京生れ。幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、11歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は『海と毒薬』『沈黙』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』等。1995(平成7)年、文化勲章受章。1996年、病没。
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1984/3/27
- ファイルサイズ407 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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出版社より
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白い人・黄色い人 | 海と毒薬 | 留学 | 母なるもの | 彼の生きかた | 砂の城 | |
カスタマーレビュー |
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価格 | ¥572¥572 | ¥407¥407 | ¥649¥649 | ¥649¥649 | ¥880¥880 | ¥693¥693 |
【新潮文庫】遠藤周作 作品 | ナチ拷問に焦点をあて、存在の根源に神を求める意志の必然性を探る「白い人」、神をもたない日本人の精神的悲惨を追う「黄色い人」。〈芥川賞〉 | 何が彼らをこのような残虐行為に駆りたてたのか?終戦時の大学病院の生体解剖事件を小説化し、日本人の罪悪感を追求した問題作。〈毎日出版文化賞・新潮社文学賞〉 | 時代を異にして留学した三人の学生が、ヨーロッパ文明の壁に挑みながらも精神的風土の絶対的相違によって挫折してゆく姿を描く。 | やさしく許す”母なるもの”を宗教の中に求める日本人の精神の志向と、作者自身の母性への憧憬とを重ねあわせてつづった作品集。 | 吃るため人とうまく接することが出来ず、人間よりも動物を愛し、日本猿の餌づけに一身を捧げる男の純朴でひたむきな生き方を描く。 | 過激派集団に入った西も、詐欺漢に身を捧げたトシも真実を求めて生きようとしたのだ。ひたむきに生きた若者たちの青春群像を描く。 |
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悲しみの歌 | 沈黙 | イエスの生涯 | キリストの誕生 | 死海のほとり | 王国への道―山田長政― | |
カスタマーレビュー |
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価格 | ¥737¥737 | ¥693¥693 | ¥605¥605 | ¥737¥737 | ¥880¥880 | ¥737¥737 |
戦犯の過去を持つ開業医、無類のお人好しの外人……大都会新宿で輪舞のようにからみ合う人々を通し人間の弱さと悲しみを見つめる。 | 殉教を遂げるキリシタン信徒と棄教を迫られるポルトガル司祭。神の存在、背教の心理、東洋と西洋の思想的断絶等を追求した問題作。〈谷崎潤一郎賞〉 | 青年大工イエスはなぜ十字架上で殺されなければならなかったのか──。あらゆる「イエス伝」をふまえて、その〈生〉の真実を刻む。〈国際ダグ・ハマーショルド賞〉 | 十字架上で無力に死んだイエスは死後”救い主”と呼ばれ始める……。残された人々の心の痕跡を探り、人間の魂の深奥のドラマを描く。〈読売文学賞〉 | 信仰につまずき、キリストを棄てようとした男──彼は真実のイエスを求め、死海のほとりにその足跡を追う。愛と信仰の原点を探る。 | シャム(タイ)の古都で暗躍した山田長政と、切支丹の冒険家・ペドロ岐部――二人の生き方を通して、日本人とは何かを探る長編。 |
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真昼の悪魔 | 王妃マリー・アントワネット〔上〕 | 王妃マリー・アントワネット〔下〕 | 女の一生 一部・キクの場合 | 女の一生 二部・サチ子の場合 | 侍 | |
カスタマーレビュー |
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価格 | ¥605¥605 | ¥781¥781 | ¥825¥825 | ¥990¥990 | ¥935¥935 | ¥990¥990 |
大病院を舞台に続発する奇怪な事件。背徳的な恋愛に身を委ねる美貌の女医。現代人の心の渇きと精神の深い闇を描く医療ミステリー。 | 苛酷な運命の中で、愛と優雅さを失うまいとする悲劇の王妃。激動のフランス革命を背景に、多彩な人物が織りなす華麗な歴史ロマン。 | 幕末から明治の長崎を舞台に、切支丹大弾圧にも屈しない信者たちと、流刑の若者に想いを寄せるキクの短くも清らかな一生を描く。 | 第二次大戦下の長崎、戦争の嵐は教会の幼友達サチ子と修平の愛を引き裂いていく。修平は特攻出撃。長崎は原爆にみまわれる……。 | 藩主の命を受け、海を渡った遣欧使節「侍」。政治の渦に巻きこまれ、歴史の闇に消えていった男の生を通して人生と信仰の意味を問う。〈野間文芸賞〉 |
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夫婦の一日 | 満潮の時刻 | 十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。 | 人生の踏み絵 | 影に対して 母をめぐる物語 | 【単行本】善人たち | |
カスタマーレビュー |
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価格 | ¥473¥473 | ¥649¥649 | ¥473¥473 | ¥605¥605 | ¥649¥649 | ¥1,870¥1,870 |
たびかさなる不幸で不安に陥った妻の心を癒すために、夫はどう行動したか。生身の人間だけが持ちうる愛の感情をあざやかに描く。 | 人はなぜ理不尽に傷つけられ苦しみを負わされるのか──。自身の悲痛な病床体験をもとに、『沈黙』と並行して執筆された感動の長編。 | 大作家が伝授する「相手の心を動かす」手紙の書き方とは。執筆から四十六年後に発見され、世を瞠目させた幻の原稿、待望の文庫化。 | もっと、人生を強く抱きしめなさい──。不朽の名作『沈黙』創作秘話をはじめ、文学と宗教、人生の奥深さを縦横に語った名講演録。 | 両親が別れた時、少年の取った選択は生涯ついてまわった。完成しながらも発表されなかった「影に対して」をはじめ母を描く六編。 | 戦前の米国で留学生が味わった悲劇を描く「善人たち」、名作を深く語り直す「戯曲 わたしが・棄てた・女」他、話題の新発見戯曲集! |
登録情報
- ASIN : B00BIXNN8O
- 出版社 : 新潮社 (1984/3/27)
- 発売日 : 1984/3/27
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 407 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 331ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 98,813位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1923-1996)東京生れ。
幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、11歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。
一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は『海と毒薬』『沈黙』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』等。1995(平成7)年、文化勲章受章。1996年、病没。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年12月27日に日本でレビュー済み
レポート
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2018年7月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイ、マレーシアに旅行に行くことになり山田長政を知って読んで見た。
旅行には行くけれどもタイには(申し訳ないのだけども)さほど興味が無かったが、ガイドブックを見ていると江戸時代初めの頃にタイ・アユタヤに日本人町があったことに驚き、そして山田長政に興味を持った。
遠藤周作の本は「沈黙」から読み始めて10冊ぐらい読んでいる。遠藤周作は実に読みやすく私は仏教徒だけども異教徒の私にも切支丹の悲哀、大航海時代の海へのロマンを伝えてくれる。この作品のペトロ岐部の肖像の描き方などは彼の他の作品の登場人物となど似ていると感じた。
主人公・藤蔵の日本を出国する前の肖像とアユタヤに渡ってからの肖像の差に違和感があった、また藤蔵が心の友、ペトロ岐部を「糞真面目」な奴とずっと自分と対比させて生きていくが、前半の2人がかかわる部分ではそれほど交わりが無いのに「そんなにお互いに強烈に印象を残しあうかな」とこれまた違和感があった。しかし2人がお互いを意識し続け、対比させる筋立てるのはストーリーの重要な骨組みだ。だから一言で言えば話が展開して行くうえでマカオあたりまでの話の展開がスピード感はあるが少々雑だと思う。しかし後半はそれらの違和感を忘れさせてすごく面白く読ませてもらった。今から読まれる方は読み終えた後に実際の山田長政など登場人物や歴史的事実を確認された良いと思う。
まだタイ・アユタヤには行ってはいないのだけど、旅行に行くということで先にGoogle Mapとそのストリート・ビューでアユタヤの街を確認していたので頭の中に情景を描きやすかった。遠藤さんももちろん取材旅行でその風景を見て描いているのだろうなと想像しながら。また主人公、藤蔵の心を奪う王女はどんな顔をしているのか想像するためにMiss Thailandの写真やタイ人の顔を見ながら読むとまたさらに読みやすかった。タイ王国―マレーシア間は列車で移動をする。図らずも小説の最後の舞台(タイ南部のマレーシア国境周辺)のあたりを車窓から覗けるのかなと今は期待している。
旅行には行くけれどもタイには(申し訳ないのだけども)さほど興味が無かったが、ガイドブックを見ていると江戸時代初めの頃にタイ・アユタヤに日本人町があったことに驚き、そして山田長政に興味を持った。
遠藤周作の本は「沈黙」から読み始めて10冊ぐらい読んでいる。遠藤周作は実に読みやすく私は仏教徒だけども異教徒の私にも切支丹の悲哀、大航海時代の海へのロマンを伝えてくれる。この作品のペトロ岐部の肖像の描き方などは彼の他の作品の登場人物となど似ていると感じた。
主人公・藤蔵の日本を出国する前の肖像とアユタヤに渡ってからの肖像の差に違和感があった、また藤蔵が心の友、ペトロ岐部を「糞真面目」な奴とずっと自分と対比させて生きていくが、前半の2人がかかわる部分ではそれほど交わりが無いのに「そんなにお互いに強烈に印象を残しあうかな」とこれまた違和感があった。しかし2人がお互いを意識し続け、対比させる筋立てるのはストーリーの重要な骨組みだ。だから一言で言えば話が展開して行くうえでマカオあたりまでの話の展開がスピード感はあるが少々雑だと思う。しかし後半はそれらの違和感を忘れさせてすごく面白く読ませてもらった。今から読まれる方は読み終えた後に実際の山田長政など登場人物や歴史的事実を確認された良いと思う。
まだタイ・アユタヤには行ってはいないのだけど、旅行に行くということで先にGoogle Mapとそのストリート・ビューでアユタヤの街を確認していたので頭の中に情景を描きやすかった。遠藤さんももちろん取材旅行でその風景を見て描いているのだろうなと想像しながら。また主人公、藤蔵の心を奪う王女はどんな顔をしているのか想像するためにMiss Thailandの写真やタイ人の顔を見ながら読むとまたさらに読みやすかった。タイ王国―マレーシア間は列車で移動をする。図らずも小説の最後の舞台(タイ南部のマレーシア国境周辺)のあたりを車窓から覗けるのかなと今は期待している。
2021年1月13日に日本でレビュー済み
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数十年ぶりの再読です。現在67のオヤジですが、約30年ほど前に、結婚を機にイスラム教に入信、以来、歴史、文化を眺める際には、キリスト教、ユダヤ教、仏教等の宗教観を意識しながらの複眼的な見方を知らず持つようになりました。更に、私自身の経験も踏まえての再読でしたので、本作品の深さを実感する事ができました。沈黙、侍等の歴史小説も、やはり数十年ぶりの再読をしていますが、遠藤周作氏の作品には再読したくなる奥行きがあるのですね。
2018年3月18日に日本でレビュー済み
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タイには随分行ってましたし、アユタヤにも行ってましたが、山田長政はどういう人物なのか、何故アユタヤに日本人村跡があるのか?がわかりませんでしたが、まさか、隠れキリシタンが国外追放された結果として、氏がアユタヤに行ったとは知りませんでした。
2014年4月15日に日本でレビュー済み
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この作品を論ずるにはどうしても白石一郎氏「風雲児」と比較したくなる。
資料が少ないため本当の長政像は私にはわからないが「風雲児」の方が本当のようでならない。
本作品では長政の過去すなわち駿府時代の話が一切なくどのようないきさつ、野望を持っていたかがわからなく、異国で旗揚げしたい希望を前面に出し、話が展開している。
一方前作品はこれといった野心もなく異国へ渡った経緯が明確であり展開がおもしろい。
長政の本当の人物はどちらかだったかを想像しながら両者を比較して読むことをお勧めしたい。
一般文学通算755作品目の感想。通算1131冊目の作品。2011/12/17
資料が少ないため本当の長政像は私にはわからないが「風雲児」の方が本当のようでならない。
本作品では長政の過去すなわち駿府時代の話が一切なくどのようないきさつ、野望を持っていたかがわからなく、異国で旗揚げしたい希望を前面に出し、話が展開している。
一方前作品はこれといった野心もなく異国へ渡った経緯が明確であり展開がおもしろい。
長政の本当の人物はどちらかだったかを想像しながら両者を比較して読むことをお勧めしたい。
一般文学通算755作品目の感想。通算1131冊目の作品。2011/12/17
2019年10月19日に日本でレビュー済み
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江戸時代初期に、現在のタイで生きた山田長政を主人公とする物語である。野望と裏切りに満ちたストーリーが面白い。
また、同時代人のキリシタンであるペドロ岐部が、もう一人の主人公でもある。正反対の価値観の二人が、互いに認め合うようになるのが、いい。
本書で残念なのは、物語の最後になって、著者自身が語り手となって出てくることである。せっかくの壮絶な最後なのに、ずるずると尻つぼみになってしまった。
また、同時代人のキリシタンであるペドロ岐部が、もう一人の主人公でもある。正反対の価値観の二人が、互いに認め合うようになるのが、いい。
本書で残念なのは、物語の最後になって、著者自身が語り手となって出てくることである。せっかくの壮絶な最後なのに、ずるずると尻つぼみになってしまった。
2016年6月16日に日本でレビュー済み
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仕事で何度か東南アジアに行った際、日本のプレゼンスが想像以上に大きいことに気がついた。興味を持っていろいろな書物を読み、日本と東南アジアの間の人的つながりは歴史的なものであることが分かり、その中でもかつて東南アジアに存在していた日本人町に関心を持つに至った。そこで出会ったのが本書である。
山田長政については、恥ずかしながらあまりよく知らなかったので、本書の内容(かなり脚色されているようだが、大筋は史実に沿っているようである)は、まさに目に鱗だった。江戸時代に、日本から抜け出して、タイで権勢を奮ったり、陸路でインドからポルトガルに渡った日本人がいたとは知らなかった。現代の我々からすれば、宇宙でビジネスをするような次元の話である。これだけの大志を持った日本人が今、どれだけいるか。高校生や大学生に読んでもらいたい本である。
久々に読んだ遠藤周作だった。本書は、筆者ならではのキリスト教文学としての性格も有しているが、肩肘張らずに読める歴史小説としての色の方が遥かに濃い。タイの王宮での権謀術数はスリリングで、なかなか読み応えがある。
山田長政については、恥ずかしながらあまりよく知らなかったので、本書の内容(かなり脚色されているようだが、大筋は史実に沿っているようである)は、まさに目に鱗だった。江戸時代に、日本から抜け出して、タイで権勢を奮ったり、陸路でインドからポルトガルに渡った日本人がいたとは知らなかった。現代の我々からすれば、宇宙でビジネスをするような次元の話である。これだけの大志を持った日本人が今、どれだけいるか。高校生や大学生に読んでもらいたい本である。
久々に読んだ遠藤周作だった。本書は、筆者ならではのキリスト教文学としての性格も有しているが、肩肘張らずに読める歴史小説としての色の方が遥かに濃い。タイの王宮での権謀術数はスリリングで、なかなか読み応えがある。
2017年1月2日に日本でレビュー済み
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42年前に高校生の私には劇団雲のシャムの日本人のチケットは高値の華でしたがあちこちで観に行きたいと発言していると裕福な農家の同級生からチケットが~放課後の吹奏楽部の練習をサボるとこも出来ずギリギリ市民会館へまあ学校から直線で300メートル走り開演ギリギリにチケットを汗だくで差し出すとこの引き替券なくさないでねと渡された劇も終わり感動の余韻に浸っていると、引き換え券の抽選で劇団のサイン色紙が当たった~市民会館を出るときに引き換え券をなくさないでねと言ったお姉いさんと目が会うとがニコニコしていた~私の世代がラスト遠藤周作読者の気がする、感動の作品です。