時間がかかった。ファースト・アルバム『明日など来るな』でデビューしたのが2008年。すぐに次作の制作に入るが、レイト本人が連絡を断ち、レコーディングは中断(それらの楽曲は結局ミニ・アルバム『さよなら昨日』として発表)。その後、制作を再開するも、震災をはさみ、レイトは再び連絡を断つ。 劣等感、焦燥感、自己嫌悪。絡みつくような混沌とした感情の渦から、距離をおく必要があった。自分自身を認め、自分の想いを音にするために、独り静かに頭をからっぽにする時間が必要だった。 リリースとしては3年ぶり、フル・アルバムとしては5年ぶり。ヒップホップのみならず様々な音楽をクロスオーヴァーさせるこのセカンド・フル・アルバムは、レイトが自分自身や現実を受容し、外へ歩き出す記録でもある。彼なりの不器用な自己肯定宣言「それを愛す」、自身の苦悩をバスケ部で苦しむ少年に重ねる「少年R」、本当に救いたい人を救えない、自分は歌を歌うしかできないと知る「連鎖」、自分の理解されなさ、他者の不可解さに戸惑う「野獣」。そして「死にたい」という“君”へ率直な想いを綴る「君を愛す」まで。クソみたいな現実を前に、そこから這い上がる言葉の数々が並ぶ。 故郷・金沢から上京し、レイトは一人暮らしを始めた。周囲と、そして自分自身と、なんとかうまくやる方法を彼は今も探している。それはつまり自分を、他人を、世界を許し、愛すること。「君を愛す」。この作品は、もがき苦しみながらもそう叫ぶまでの道程でもある。
2008年にアルバム・デビューを果たした石川県金沢市出身のラッパー/トラックメーカー、レイトのフル・アルバムとしては5年ぶり(2013年時)となるセカンド・フル・アルバム。ヒップホップのみならず様々な音楽をクロスオーヴァーさせて、自身も含めて誰もが直面する現状から這い上がるための言葉を連ねた説得力のある1枚。 (C)RS
石川県金沢市出身。「トイレ」を逆から読んだ名を持つラッパー/トラックメーカー。2008年、アルバム『明日など来るな』でデビュー。同作でREMIX誌年間ベスト・ディスクにランク・イン。FUJI ROCK FESTIVAL 2009 出演。2010年ミニ・アルバム『さよなら昨日』リリース。客演もいくつか。