[テクノとアンビエントⅠ]
少し調べていただければわかるが,エリーヌ・ラディーグの音楽はチベット仏教の世界観に多大に影響を受けている。
通読しなくてもチベットの死者の書である「バルト・トゥドゥル」が頁から頁へと散見してみただけで,生と死という人間存在を超えて生命そのもの,さらにはそれをも凌駕して宇宙の,宇宙意識の,そのさらに遥か彼方,阿頼耶識の向こうにある絶対なるもの,永遠なるものへの追究の書であることは宗教や哲学に全く無縁の多くの人びとにも感じ取れると思う。
彼女の創り出す持続音響音楽も同様に,チベット仏教になど全く昧入したことなどなくてもその深淵なる持続音響世界に身も心も置くことができる。