このCDに、手を出す人は、よほどの、ステレオ・ハイファイ党の方だろう。それも、そのハズ。ステレオ評論家・長岡鉄男先生の、「新・長岡鉄男の外盤A級セレクションvol.2」(共同通信社)で、紹介されている、1点だから、である。
当盤は、イランの民族音楽楽器の演奏が、紹介されており、さしずめ、「イランの音楽見本市」、と言った、体裁です。音の切れこみは、抜群で、初めて聴く人は、思わず、息をのむでしょう。
ノンサッチ・エクスプローラーの、CDは、以前、1点・¥1200で、50点、発売されたが、今回、本体価格900円で、55点、出た。興味の有るものを、買いなおしたが、音質では、格差は、つけられていない模様。CPは、上々である。
ステレオ評論家・長岡鉄男先生が、「新・長岡鉄男の外盤A級セレクション」vol.1&2(共同通信社)で、名前を挙げておられる、ノンサッチ・エクスプローラーの録音は、わずかに、〇〈ケニア、タンザニア〉東アフリカの音楽2、〇〈韓国〉パンソリ、〇〈イラン〉ペルシャの伝統、の3点で、いずれも必聴盤だが、他にも、ステレオ・ハイファイ党が、喜びそうな、タイトルが、有る(いずれも、日本盤で、入手・可)。
以下に、いくつか、紹介する。
〇〈中国〉中国琵琶の魅力
録音1979年、アメリカでのスタジオ録音。4弦の中国琵琶の独奏。ハッとする、超絶技巧。素直で、清潔な、音質。
〇〈中国〉山東の音楽~山東地方の民族音楽と伝統的器楽曲
録音1972年、アメリカでのスタジオ録音。合奏曲が、山東の音楽で、音場はサラウンドする。独奏器楽曲は、中国伝統音楽で、左右スピーカー間に、キレイに、展開する。
〇〈オセアニア〉南太平洋の音楽~最後の楽園
録音1978~79年。現地録音。コレは、ノンサッチ有数の、名録音。録音機は、おそらく、76cm/秒の、オープンリール・テレコ。マイクは、2本で、テレコに直結だろう。音楽としては、「?」だが、音質は秀逸。波打ち際のみずみずしさ、虫の声、カチカチと叩く音、総て、ナチュラルで、リアルそのもの。
〇〈バリ〉ガムラン&ケチャ
録音1987年。バリ島でのデジタル現地録音。デジタル・プロセッサー使用だそうだが、正解。DATでは、こんな音は、出ない。音場もサラウンドする。
〇〈バリ〉幻影~バリ影絵芝居
録音1969年、現地録音。バリ島の、影絵芝居の、付随音楽。4人組による、ガムラン演奏。マイクは2本で、ガムランの高さに、並行にセット。録音機は、おそらく、19cm/秒の、オープンリール・テレコ。低音は、サッパリ、無いが、ローカットは、禁物。音像は、華麗に、散乱する。
〇〈チベット〉チベットの仏教音楽4~悪魔払いの秘呪
録音1977年、現地録音。チベットでは、人が病を患うのは、病魔に取りつかれるからだ、と、考えられた。そこで、霊媒師が、病魔払いの、音楽を、奏する。打楽器(太鼓)、金属楽器、いずれも、鮮明で、生そのもの。
〇〈ウガンダ、ケニア、タンザニア〉東アフリカの音楽1~日常の祭礼の音楽
録音1970年代前半、現地録音。ウガンダが4トラック、ケニアが6トラック、タンザニアが3トラック、計13トラック。多分、マイクは、2本、両手に握っているのだろう。録音機は、19cm/秒の、オープンリール・テレコだと思う。テープピッチが、「十九」でも、20kHzは、クリアーするので、大丈夫。
〇〈ジンバブエ〉ショナ族のムビラ1~アフリカン・ミュージックの真髄Ⅰ
〇〈ジンバブエ〉ショナ族のムビラ2~アフリカン・ミュージックの真髄Ⅱ
現地録音。LPレコード時代、カートリッジの針が、サチッたのではないか?と、さんざん、オーディオ・ファイルを、悩ませた、張本人。コレは、ムビラと言う、楽器の、音色だったのデス。どれだけ、リアルに聴こえるか、が、再生上の、ポイント。
〇〈ジャワ〉ジャワの宮廷ガムラン1~ジョク・ジャカルタのパク・アラマン王宮にて
1971年、現地録音。この録音では、始終、南国の鳥たちの声が、聴こえる。とりわけ、トラック2と3で、顕著。若い男女に、聴いてもらったが、男性は、「低音が大きい」と言い、女性は、「どこまでも、高い音まで、聴こえます」、との、お答えでした。
〇〈ジャワ〉ジャワの宮廷ガムラン2~スラカルタのイスタナ・マンクヌガラン王宮にて
録音1976年、現地録音。深い、ホール・トーンを伴った、ガムランの音楽は、「夜の音楽」。すっぽりと、音に取りこめられたい。
追記
〇〈ケニア、タンザニア〉東アフリカの音楽2~祈祷と儀礼
肝心な1点を、忘れていた。ステレオ評論家・長岡鉄男先生の、「新・長岡鉄男の外盤A級セレクション」(共同通信社)からの、タイトルである。録音1975年、現地録音。タンザニアは、1トラック、他は、ケニアで、全16トラック。ケニアでは、人が病を患うのは、病魔に取り付かれるからだ、と、考えられた。そこで、病魔払いの、登場となる。3種類だが、霊媒師の祈祷も、様々。他に、イニシエイション、結婚式、お弔いの音楽・他。録音機は、おそらく、19cm/秒の、オープンリール・テレコで、マイクも2本だろう。その証拠に、サラウンドだ。ヘッドホンで聴いても、サラウンドする。
〇〈韓国〉パンソリ~韓国の語り物音楽と南道系の器楽
「長岡鉄男の外盤A級セレクションvol.2」(共同通信社)からの、一点。録音1972年、アメリカでのスタジオ録音。低音打楽器・プクの低音、40Hzが、床をはう。韓国出身の方に聴いてもらったが、「普通の音」との事。それだけ、実演に近い、と言う事だろう。極めて自然で、音の切れこみは、秀逸。無条件に、「買い」の一点。
〇〈ニジェール〉西アフリカの音楽1~サバンナの響き
録音1976年。現地録音。ニジェールが、5トラック、マリが2トラック、ブルキナ・ファソが1トラック、ガーナが1トラック、計9トラック。このCDで、怪しいのは、ジャケットにも、CDのレーベルにも、「モノラル」とある事。しかし、これは、おそらく、ステレオ録音。オッシロ・スコープは、持っていないので、リサージュ波形は、描かせられないが、コレは、まず、ステレオ録音である。アフリカの砂漠の中で、壁の反射音が、無いので、モノラルに、聴こえたのだろう。アフリカの太鼓の、ドラミングが、面白い。聴いていて、アフリカの、灼熱の大地が、思い浮かぶ。
〇〈ガーナ〉西アフリカの音楽2~ガーナの歌と踊り
録音1979年。ガーナでの、現地録音。これも、モノラル録音と、表記されているが、実は、ステレオ録音。ノンサッチ・エクスプローラーの、モノラル録音と、あるのは、ステレオ録音ばかりである。アフリカの太鼓の、ドラミングを、聴きなれると、クラシック音楽の、アゴーギグの「ゆれ」が、たいそう、良くわかる。それだけ、アフリカのリズムは、イン・テンポ。
〇〈パキスタン〉カッワーリー~スーフィーの音楽
録音1978年。アメリカでの、スタジオ録音。録音風景の、写真で見ると、マルチ・マイクだが、音場感は、ペア・マイク録音のように、比較的、素直。イスラム教スーフィー派の音楽だが、定旋律に、身をゆだねていると、思わず、トランス状態に、陥りそうだ。
〇〈インド〉即興~インドの舞楽
録音1970年代前半。スタジオ録音。インドの音楽も、紹介したいのだが、ノンサッチ・エクスプローラーの、「インド」は、何語か、分からない、歌入りばかり。当CDは、歌入りでは無く、弦楽器・サロットと、打楽器タブラによる、演奏。2トラック目には、ダンサーの踊りが、入り、身に付けた、鈴の音が、キレイで、左右の動きも、自然。アナログ録音で、SN比は、悪いが、買えると、思う。
〇〈メキシコ〉チャパスとオアハカの祭り
録音1976年、メキシコでの現地録音。このCDの、音質は、たとえ話をすると、普通の、ECMマイクと、カセット・テレコ「デンスケ」による、生録音の、ようなモノである。一聴して、高音が、暗いが、実は、鈴の音や、ブラスなどの、高音も、入っている。本体価格¥900。だから、買える。
〇〈カリブ〉カリブの歌と踊り~ハイチ、ドミニカ、ジャマイカの音楽
録音1972年、現地録音。カリブの音楽は、アフリカと、ヨーロッパの音楽が、混じり合っている。様々な音楽が、楽しめるが、一番、面白いのは、最後の18トラック目。録音風景の写真だと、マイクは2本で、上方から下向きに、内側に、45度の角度で、鼓笛隊(と言うより、チンドン屋)を、捉えている。カリブの音楽が、面白く無い方には、「ネコに小判」だが、音マニアには、向いている。
*民族音楽・「今回の、スポット!」
〇「カメルーンのオペラ」(キング・インターナショナル)
ステレオ評論家・長岡鉄男先生の、「新・長岡鉄男の外盤A級セレクション」(共同通信社)の、中でも、音質ベスト・No.1 の、録音が、コレ。
録音1976年。アフリカのカメルーン(フランス語圏である)での、現地録音のテープを元に、ストーリー性を持たせて、オペラとして、構成。人の声、虫の声、雷鳴、驟雨、動物の鳴き声、川の流れ、等々、おそろしく、リアル。当CDは、国内盤だが、SACDハイブリッド盤である。
夜、ヘッドホンを使って、部屋の照明を消して、暗闇の中で聴くと、広大に、サラウンドするので、自分が、ドコに居るのか、分からなくなる。
オープン価格だが、売り値が、3千円くらいだったら、是非、入手すると良い。オーディオ・ファイルならば、絶叫・絶対・必聴・必携盤!ですヨ。
さらに追記
〇〈日本〉尺八の世界/宮田耕八郎
録音1976年。アメリカでのスタジオ録音。曲は、「鶴の巣籠(すごもり)」他、全5曲。素直で、おくゆかしさのある、音質。「幽玄」と言うものも、感じられて、筆者の隣近所では、「本物の実演」と、勘違いされている。
〇〈アイルランド〉アイリッシュ・パイプの魅力
録音1972年頃と有る。演奏をしているのは、フィンパー・フュレーと言う人だが、この録音は、演奏者である、フュレー氏の、自宅の一室で、行われたのでは無いか。録音機は、おそらく、38cm/秒の、オープンリール・デッキ。いかにも、「サンパチ・2トラ」らしく、生き生きとした、音質。コンパクト・2ウェイ・スピーカーで、聴いても、バグ・パイプの低音が、バスレフのダクトから、もろに、出て来る。成功である。
〇〈イラン〉ペルシャのサントゥール
録音1970年代前半。全4トラックで、録音時間38分。省エネ・省スペースだが、LPレコード時代ならば、普通である。サントゥールの音が、目覚しく、ブライト。他、ヴァイオリン、低音打楽器・ドンパックなど。ドンパックの最低音は、20Hz。トラック4で顕著。もはや、風圧である。再生は、むつかしい。
〇〈スウェーデン〉フォーク・フィドルの魅力
録音1969年と、古いが、音質は、比較的良好。フィドルは、ヴァイオリンに似た楽器で、このアルバムでは、2人組による、2重奏。おそらく、屋外で、無風の際に、録音したのだろう。部屋や、スタジオの固有音は、無し。家の壁の、反射音は、有り。
〇〈ブルガリア〉ブルガリアン・ヴォイス RITUAL
録音1983年&84年。ブルガリア国立放送合唱団の、コーラス。ブルガリアの歌、踊り、慣習や信仰を、歌ったものとのコトだが、歌詞は、意味不明。デジタル録音だが、おそらくは、デジタル・プロセッサーを使用したのだろう。DATでは、この音は、出ない。時折、歌無しの、楽器合奏が、入るが、まるで、油絵を見ているように、色彩感が、ベットリ。
〇〈ジャワ〉ジャスミン・アイル~ジャワのガムラン音楽への誘い
録音1970年代前半、現地録音。ガムラン音楽に、ジャワの楽器である、グンデルやガンバン独奏を、交える。録音機は、おそらく、19cm/秒の、オープン・テレコ。マイクは、シンプルに、2本だろう。音場は、サラウンドして、左右スピーカーの外側まで広がる。このアルバムでは、始終、屋外の、虫の声が、聴こえる。これは、スピーカーの、ツイーターのテストに使える。アナログ・テープのヒス・ノイズが、気になるが、安いので、買える。