著者の1995年前後の講演など11編の関連するものとしてまとめられています。したがって、同じような内容も多く含まれていますが、要点は、「自分も10年前までは百姓=農民、日本は農業国、村は遅れたところ」と言う一般に教科書でも習ったような認識でいたが、実際に能登や瀬戸内海などの研究を通じて、「百姓はまさに”ひゃくせい”で、農民を表した言葉ではない。それ以外を「水吞」、能登では「頭振」と言われるが、これは、当時の年貢・農本主義の政策で、田畑の保有を中心の考え方が反映したものであり、海や川や山やいろんな職人は、その様な土地は必要がないだけで、それぞれの場所と仕事で活発な活動がされていた。
資料発掘で、それらの人を「農」としたり、土地を持たない「水吞」としたりしていて、凡そ、実態とはかけ離れた文章だけが残り、後は捨てて残されていない。ただ、発掘により、一旦使った計算紙その他が、ふすまの裏紙や別の用途に使った使用紙が古く屋敷の蔵から大量に出てきた。
それを丹念に拾っていくと、中世までの日本では、農民だけでなく、海・河関係の仕事(漁業や廻船や製塩や流通など)や山関係の仕事(木材や炭焼き、その流通)、また、鍛冶屋、陶器、養蚕・糸・布、などなど多彩な日本の仕事と生計の在り方が見えてきて、決して、農業、百姓=農民がほとんどの国であったという「思い込み」を覆さなければならないと、力説されている内容である。
日本列島は海に囲まれ、すぐ山川があり、当然近隣の国との関係を持た、そういう世界であったことは容易に想定されそうであるが、そうではない認識が自分も含めてあった。その認識を変えなければならないという事を、現地調査から実証的に解明し、語られている。
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海民と日本社会 (新人物文庫) Kindle版
農業中心の歴史観に疑問を抱き、非農業民の視点から新しい日本の歴史像を構築してきた著者が、最新の研究成果を基に海民の実像を明らかにし、更なる歴史像を描き出す。
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2013/10/29
- ファイルサイズ6306 KB
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
視点を変えると、新しい日本の歴史が見えてくる。農業中心の歴史観に疑問を抱き、非農業民の視点から新しい日本の歴史像を構築してきた著者が、最新の研究成果を基に海民の実像を明らかにする。
登録情報
- ASIN : B00FZH3ETC
- 出版社 : KADOKAWA (2013/10/29)
- 発売日 : 2013/10/29
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 6306 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- Amazon 売れ筋ランキング: - 198,031位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 62位新人物文庫
- - 9,099位歴史・地理 (Kindleストア)
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2020年3月10日に日本でレビュー済み
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百姓と呼ばれている集団の実態について作者なりの調査に基づき、百姓=農人では無く、様々な職業に携わり日本社会を形成してきたと言う事例を示しながら、古くから、日本は海に開かれた地政学的な観点から海民として東アジアの国々とも交わり歩んできたと言う歴史観が描かれていました。
2016年5月17日に日本でレビュー済み
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四囲を海に、とわかりつつ、海民という視点は、沖縄を除いては、欠けていたと改めて認識した次第です。
2010年7月22日に日本でレビュー済み
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海賊を含む海民達が近隣諸国ばかりか、遥か西洋まで航路を伸ばして、異文化交流をしていた事を知り、我が祖先だった松浦党に対する誇りを感じる事ができました。私の父は、顔中に濃い巻き髭を生やし、しかも、それが赤色をしていました。だから、恐らく、西洋人の血が混じっていたと思われます。私も、その髭を父から貰いました。今赤い部分は白くなっています。
私的な事は別にして、この本を読んだお陰で、日本は、その歴史において、国全体が危機に直面する度に、海民達がどこからか現れて立ちあがり、血を流して死んで行き、そして国家を救い、平和になるとどこかへと消えて行く、そういう思いを抱きました。
ですから、これから日本が直面するであろう国家の危急存亡の危機において、そろそろ海民達がむくむくと起き上り、日本を救うために死を恐れずに活躍するであろうと予感しております。
この本は、実に素晴らしい。
私的な事は別にして、この本を読んだお陰で、日本は、その歴史において、国全体が危機に直面する度に、海民達がどこからか現れて立ちあがり、血を流して死んで行き、そして国家を救い、平和になるとどこかへと消えて行く、そういう思いを抱きました。
ですから、これから日本が直面するであろう国家の危急存亡の危機において、そろそろ海民達がむくむくと起き上り、日本を救うために死を恐れずに活躍するであろうと予感しております。
この本は、実に素晴らしい。
2013年4月8日に日本でレビュー済み
本書を購入した動機は、背表紙に「明らかになる"海民"が果たした大きな役割」とあったからです。
海民の具体的な活動を知りたかったのですが、資料不足のためか具体的な記述が乏しく、残念ながら物足りない内容でした。
本書は、シンポジウムなどでの講演と、網野氏の小論で構成されています。
そのため重複する内容も多々あり、最も頻出するのが「百姓は農民だけではない」ということ。
能登での調査で、水呑百姓と分類された人々が土地を持てない貧しい農民ではなく、土地を持つ必要のない生業を持つ人々が多くいたという点は、目から鱗でした。
また、納税品目から数多の生業があったとの指摘も、目から鱗でした。
しかし、逆に言うと、この本のポイントは上記2点に尽きるかも知れません。
海民の具体的な活動を知りたかったのですが、資料不足のためか具体的な記述が乏しく、残念ながら物足りない内容でした。
本書は、シンポジウムなどでの講演と、網野氏の小論で構成されています。
そのため重複する内容も多々あり、最も頻出するのが「百姓は農民だけではない」ということ。
能登での調査で、水呑百姓と分類された人々が土地を持てない貧しい農民ではなく、土地を持つ必要のない生業を持つ人々が多くいたという点は、目から鱗でした。
また、納税品目から数多の生業があったとの指摘も、目から鱗でした。
しかし、逆に言うと、この本のポイントは上記2点に尽きるかも知れません。
2016年4月25日に日本でレビュー済み
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日本国の成り立ちの歴史的背景が、新たに再認識出来ました。戦時中、今の金沢港に疎開し、北前船の話を、祖父母等に聴いたことが、走馬灯の様に心に浮かんで来ました!。
銭屋五兵衛 会館が、金石に有りますが? さぞ、大きな貿易をしていたのでは?と ふと 感じました。
銭屋五兵衛 会館が、金石に有りますが? さぞ、大きな貿易をしていたのでは?と ふと 感じました。
2019年2月14日に日本でレビュー済み
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私は網野史学のファンです。今回は先史時代から九州北西岸、玄界灘から壱岐・対馬、五島列島、済州島、朝鮮半島南岸の島々、さらには中国大陸沿岸部、琉球など一衣帯水の領域を自由に行きかっていた海洋民が、水稲栽培の伝来、日本人の形成においてどのような働きをしたかについて知りたくてこの本を購入しました。確かにはじめと終わりにそれについて総論的に触れられ、日本が決して閉ざされた世界ではないことを強調されていました。さすが網野さん、慧眼だと思いました。
しかし、各論はお馴染みの中世を中心としたdomesticな内容なので、私としては期待外れでした。書棚を調べたら一度読んでいた本だった。嗚呼・・・・・・・・。
しかし、各論はお馴染みの中世を中心としたdomesticな内容なので、私としては期待外れでした。書棚を調べたら一度読んでいた本だった。嗚呼・・・・・・・・。
2010年12月5日に日本でレビュー済み
「百姓は農民でない」と繰り返し主張する網野善彦先生が90年代(主として後半)に各地で行った講演をまとめた本の文庫化。先生によると百姓を農耕にだけ携わっていたとするのは誤りで、かれらは漁労をはじめ海運、製鉄、紙漉にいたるさまざまな生業で暮らしを立てていた。特に興味深いのは「能登の中世」と題する40頁におよぶ長編で、先生は能登はそっちのけにしてもっぱら東寺にのこる備中(岡山県)・新見荘の史料から荘園経営の実態を読み解いていく。史料から14世紀には現地の地頭代官が東寺に送る年貢は為替決済で、新見荘では鎌倉時代から定期的に市庭(市場)が立っていたことが判る。網野先生は貨幣経済の浸透を示すキーワードに本書のいたるところで都市を用いるが、商品経済化を都市化と等値できるかは検討の余地がある。流通経済に注目し、百姓=農民史観の打破を図った網野先生は2004年に逝去された。本書は小著であり体系的な著述でもなく、先生の数ある本の中でも目立たない一冊だろう。しかしここには先生が後世に残されたヒントが詰まっている。好著が手に入り易いかたちで再刊されたのは企画のヒットだろう。