『Roots』がリリースされたのは71年で、翌年にはブラックスプロイテーションを代表する名盤『Superfly』がリリースされており、どうしても影が薄くなってしまうのですがその実、非常に充実した名作だと思います。
『Roots』はカーティスの全作品のなかで最も“黒い”作品と言えるのではないでしょうか?まずはこのアルバムで私が最も好きなナンバー『Beautiful Brother of Mine』から。この曲は女性のコーラスやファンキーなギター・サウンドが『Superfly』を連想させるナンバーです。ドラムのキレもいい名曲です。
そしてオープニング・ナンバーである『Get Down』。このファンキーさは、まさにブラックスプロイテーションそのものです。実際この曲は『ソウル・キッチン』という映画で使われていましたし。女性の喘ぎ声も入る鬼ファンキーな曲です。
しかし次の『Keep On Keeping Out』では一転、とろけるようなソウル・ナンバーを披露しています。カーティスらしい甘いメロディとキレの良いリズム、そして至極のフィルセットを味わうことのできる名曲です。
そして続く『Underground』では再び黒いグルーヴへと戻っていきます。ただ、グイグイ押していた『Get Down』と比べると、緊張感漂うギターが中心となっており、人種問題やベトナム戦争といった時代背景を感じさせられます。
次の『We Got Have Peace』では再びメロディアスなソウル・ナンバーといった具合に、『Roots』では時代に対するメッセンジャーとしてのカーティスと、ドリーミーなソウル・ミュージシャンとしてのカーティスがバランスよく配されており、その点も私がこの作品を繰り返し聴く理由です。『We Got Have Peace』はキャッチーなメロディを持つ取っ付きやすい曲ですが、同時に“Save the children”という悲痛な叫びを繰り返すメッセンジャー性の強い曲でもあります。
そして“Now You’re Gone”という歌詞が繰り返される7分近いナンバー、『Now You’re Gone』はソウル/ファンクという体裁はとっていますが、ひたすら自分のもとを去ってしまった彼女のことを語るこの曲は完全なブルースですよね。思いが重過ぎる。
捨て曲一切なし、カーティスのファンキー・サイドとスウィート・ソウル・サイドの両方を味わうことのできる名作です!