(原作からの大ファンにつき、個人的、一元的、盲目的な視点で語ります。また、若干のネタバレを含みます。ご了承のほどを。)
このゲームはドキドキワクワクするようなおもしろさはないし心温まるような感動シーンはないし目を背けたくなるような鬱展開もないと思う。
ならばなぜ名作と言われるのか。
私は「浸水してくる」ところに良さがあるのだと感じるようになった。
2週目以降で徐々に明かされてくる主人公やヒロインの異常性は最初はまったくもって理解不能の人が多いと思う。
「自己愛」「猜疑」「偏執」「依存」「規律」「破壊衝動」
これらの要素を濃縮したような登場人物たち。
しかし、狂っているだけに見える彼らの根源は人間が基本的に持ち合わせており、少しは保有維持しなければならないものだ。
そういったことが無意識下で理解されるようになり、登場人物の狂気と自分の中にある要素が重なってくる。
そうなったら、プレイヤーが日々悩み感じ耐えている自身のちょっとした異質性という「亀裂」からこのゲームが「浸水して」くる。
日常的に感じている他人との差異への不安だったり孤立感から、知らず知らずのうちに染み込んでくるのだ。
それが涙に変わったり表現できない感動になったりする。人によってはこの作品への嫌悪となってあらわれるかもしれない。
そしてラスト。
このとき一気に蒸発する。美しく刹那的に、哀愁すら漂うのに爽快感を伴って。
作中の主張は独りよがりで酔っていると感じる人もいるでしょう。だが、そう言われることを恐れて安易な男女愛や家族愛にはしることをしなかったのがこの作品の価値だと思う。
正直、ここまで痛く語っておきながら、まったくもって私自身が独りよがりで自分に酔っている。ひどい。恥ずかしい。
要は、この作品はこれだけ強い影響を与えるのだ、ということにしといてください(適当)
追加テキストや追加CGにはあまり期待しない方がいいです。年月がかなり経っているので原作からかなり歪んでいますので。仕方無いですね。
でも初期プロットはよかった。最初はこんな設定だったのかと驚きました。ロミオ氏の当時の脳内を窺えただけでファンとしては嬉しかったです。