現代的ブラックジャズの新解釈に、彼の好きなJayDilla的Hiphopの要素や
ポストダブステップの感覚が合わさっています。

ブラックミュージックの一つの側面であるスペーシーな部分が有りながら、
全体に美しく音の細部までこだわって作られていると感じられます。
個人的には４曲目のflorasiaが気に入り何度も繰り返し聴いています。

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夢人

Hip-Hopとジャズを融合させ，スピリチュアルに昇華させた独創的な1枚

2014年8月16日に日本でレビュー済み

　名ジャズ・シンガー，ボビー・マクファーリンを父に持ち，祖父のロバート・マクファーリンは，メトロポリタン・オペラ・カンパニーで黒人初の主役を務めたオペラ歌手。血筋も一流なら，シンガー，ヒューマン・ビートボクサー，DJ，プロデューサー，キーボード奏者と才能もマルチなテイラー・マクファーリンのデビュー作です。
　Hip-Hopとジャズの融合と言えば，これまでも多くのアーティストが取り組んできたことですが，このアルバムはそれだけでは止まりません。フューチャリスティックでスピリチュアルな雰囲気が漂うサウンドは他に類を見ない独創性にあふれています。
　冒頭の「Postpartum」。ゴスペルのように温もりのあるサウンド，遥か彼方から聞こえてくるかのようなエコーを効かせたコーラス・・・・神秘的な雰囲気が昇華して，オルガンにも似たキーボードの音色が洪水のように押し寄せてきます。よくわからないですが，生きる力がみなぎってくるような不思議なナンバーです。「Florasia」は，甘美なメロディーとレイドバックしたヴォーカルが緩やかに流れる心地良いミッドテンポ。どことなく，Delegationの名曲「Oh Honey」を想起させます。「Already There」は，最初，ピコピコ，ゴーッと何やらUFOの離陸を思わせるようなシンセ音が続いたかと思うと，やがてメロウなキーボードやギターへとサウンドが展開。甘美で幻想的な雰囲気の中，フェードアウト。そして，ヴォーカルにEmily Kingを起用した「Decisions」では，遥か彼方から響いてくるエミリーの神秘的なヴォーカルと，フューチャリスティックなシンセ・サウンドが交錯。
　緑深い森でハミングしているかのような自然回帰的な前半から，後半はアンビエントなピアノと穏やかでふくよかなウッドベースが絡むジャズへと展開する「Invisible/Visible」。セクシーな歌声の男性シンガー（Vincent Parker？）を起用した「My Queen」は，穏やかでしなやかなミッドテンポです。
　お世辞にもキャッチーとは言えませんし，ちょっと難解と感じる人も少なくないでしょう。でも，この独創性，ただものではありません。神秘的にして芸術性の高い1枚です。

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