芸術と娯楽、政治と個人生活の均衡が奇跡的に保たれたスコリモフスキの代表傑作
詩人チェスワフ・ミウォシュは「完璧にカットされたクリスタル」と本作を絶賛した。 本邦初DVD化!
レフ・ヴァウェンサ(ワレサ)率いる独立自由労組“連帯"の隆盛に伴い、
1981年12月12日から13日にかけてポーランドで戒厳令が施行された一件を背景とする作品。
1981年12月5日、ノヴァク(ジェレミー・アイアンズ)ら四人のポーランド人が、
一ヶ月間の観光ビザを携えてヒースロー空港に到着する。
彼らのなかで唯一英語を話すノヴァクが、自分たちは共同出資で中古車を購入するために
やって来たのだと入国審査官に説明する。しかし実のところ、四人はとある富裕な
ポーランド人に雇われ、ロンドンにある彼の別宅を改修するために入国したのだった。
その後改修作業を開始した四人の生活は、徐々に時間的にも金銭的にも追い詰められたものとなってゆく。
そんなある日、ノヴァクはポーランド全土に戒厳令が敷かれたことを知るが、
仕事をやり遂げるため仲間にはこの一件をひた隠しにする。
同時に彼は、生活費が底をつき始めたおかげで、食糧を連日万引きするはめになる……。
スコリモフスキ自身のきわめて個人的な体験に基づきながらも、故国における戒厳令布告という創作にとっては
一種の僥倖と呼べる出来事に恵まれたこともあって、普遍性を帯びかつ娯楽としても優れた
オリジナル脚本が執筆された。加えて、現在進行形の政治的事件と並走しながら作品を世に
送り出すことが目指されたおかげで、映画全体からアクチュアルな緊張感が強く感じられる。
そうした意味で、本作はまさにこの時期にしか生まれ得なかった奇跡的な作品だといえよう。
完成作は、1982年度カンヌ国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞したほか、英米でも高い評価を受けた。
1980年にノーベル文学賞を受賞した詩人チェスワフ・ミウォシュ(1911年~2004年)は、
本作を「一個のダイアモンド、完璧にカットされたクリスタル」と呼んで激賞したとされる。
<特典>封入:解説リーフレット(60頁)
(c)1982 MICHAEL WHITE LTD.