去年、リリースされたMan Who Died in His Boatとある意味、対になる作品なのかもしれない。
あちらはフォーク、こちらはピアノ。
ただし、1曲目と最終曲はフィールド・レコーディングを基調としたものであり、Made ofと謳われている
ことから、この2つが残りの曲をはさみこむことで一つの作品としようとしていることが窺える。
いつものGrouperの作品にくらべて、歌詞は聴き取りやすく、明らかにこれまでの彼女の作品に
較べて、パーソナルな響きを帯びており、内容も人間の関係性を(恋愛なのだろうか)主軸においていると
いえるだろう。ただし、あの「声」はいい意味で変わらない。
優しいが、喪失感を感じさせる響き。それはピアノという楽器と非常に親和性が高いようだ。
特に美しいのが、Holdingだろう。
I hear you calling and I wanna go
Run straight into the valleys of your arms
あのささやくようなヴォーカルでこのラインが提示されるとき、はかなささえ感じられる。
それは実現することはないことかもしれない。
でも、胸をうつ。感情を希薄にさせるように歌われているのに、より多くのフィーリングが
伝えられる不思議。聞いてみてほしい。