きょうから寝るまえの読書は、テッド・チャンのSF短篇集『あなたの人生の物語』だ。再読であるが、1作も記憶にない。なんという忘却力。人生で起こった厭なこともいっさい忘れてしまえたなら、人生に対する思いも変わっていただろう。実人生における厭なことというのは、教えてくれることも大いにあるのだから、記憶に残っておいてもらわなければならない。うれしかったこととともに。ぼくが詩を書く理由のひとつだろう。書くものから学べる。
1作目は、「バビロンの塔」バビロンの塔に登る職人が主人公。「生まれてはじめて、夜の正体を知ったのだ。夜とは、大地そのものが空に投げかける影であることを。」という印象的な言葉がある。物語は、バビロンの塔の頂上が地面と同じ位置にあるという位置的な不思議さを描いたもの。
2作目は「理解」薬を投与されて劇的に知能が発達した主人公。主人公よりまえに薬を投与された男と決闘する。負ける。
3作目は、「ゼロで割る」数学者が主人公。自分の考えたことが数学自体に反することに気づいて悩むという話。
4作目は、「あなたの人生の物語」異星人とコンタクトして意思疎通をはかる主人公の言語学者。異星人の言語を理解することは、自分の意識が現在と未来の間を行き来することになる。
5作目は、「七十二文字」ゴーレムがいる。文字を書くことによってゴーレムは動く。人類もあと5世代すると滅びることが科学者によってわかった。卵子に文字を押印することによって人間を生まれさそうとする。主人公はその方法にどうやらたどり着けそうだ、というところで作品は終わる。
6作目は、「人類科学(ヒユーマン・サイエンス)の進化」超人類が出現したが、人類は彼らを恐れる必要がない、と書いてある。
7作目は、「地獄とは神の不在なり」天使の顕現で妻を失った主人公が、自分も妻のように天国に行けるように努力したが、けっきょくは地獄に堕ちたのだった。
さいごの8作目は、「顔の美醜について」美醜失認処置ができる世の中になっているところの話。
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あなたの人生の物語 Kindle版
【映画「メッセージ」原作】地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく……ネビュラ賞を受賞した感動の表題作をはじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語--ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集。
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2012/8/25
- ファイルサイズ1836 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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商品の説明
著者について
1967年、ニューヨーク州ポート・ジェファーソン生まれ。ブラウン大学でコンピュータ・サイエンスを専攻し、1989年に卒業。現在はワシントン州シアトル近郊で、フリーランスのテクニカル・ライターをつとめながら創作活動を続けている。大学卒業の年に、有名なSF創作講座クラリオン・ワークショップに参加し、翌年に発表したデビュー作「バビロンの塔」がネビュラ賞を受賞した。以後、発表する作品はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞などを受賞、英米ではもちろんのこと、日本でも高い評価を受けている。
本書の表題作「あなたの人生の物語」は、「メッセージ」のタイトルで映画化された。
本書の表題作「あなたの人生の物語」は、「メッセージ」のタイトルで映画化された。
登録情報
- ASIN : B00O2O7JEA
- 出版社 : 早川書房 (2012/8/25)
- 発売日 : 2012/8/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1836 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 422ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 13,124位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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4 星
読みにくいかなぁ。。
8のSF作品収録。小説として純粋に巧みに書かれており、宗教的・既得観念的なモチーフの作品でも、情感が響きやすい作品となっているけれど、読みやすいかと言われると、人を選ぶかなというのが正直な感想。SF好きな人にとっては堪らない世界観なのかもしれないけれど。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年1月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画が面白かったので原作を読んでみようと思い購入しました。
予想とは違い、あっさりとした印象でした。映画を見ていなければ、熟読しないと読後の印象が、全く違うものかもしれません。
他の短編も物語内の作り込まれた学術系が興味深いものが多く、それを理解するのを楽しめる人にはたまらない作品かなぁ、といった印象。
予想とは違い、あっさりとした印象でした。映画を見ていなければ、熟読しないと読後の印象が、全く違うものかもしれません。
他の短編も物語内の作り込まれた学術系が興味深いものが多く、それを理解するのを楽しめる人にはたまらない作品かなぁ、といった印象。
2022年7月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
当たり前すぎて意識したこともない前提条件からひっくり返される快感は、一流のSFの醍醐味ですね。
短編集なので、今度はそこからか!と何度も頭を殴られました。
短編集なので、今度はそこからか!と何度も頭を殴られました。
2022年12月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画の出来が非常に素晴らしかったため、本作は表題作のみを飛ばして読みました。
他のレビュアーの方もおっしゃっている通り、確かに人間を描いていませんね。
グレッグ・イーガンと同じ様な、アイディアひけらかし型の作家。
とは言え「地獄とは神の不在なり」に含まれた視点は、自分にとって新しい視点でした。
私は映画や本に触れる時、読む前と読んだ後で何か1つでも行動が変わったか?を
重視しているのですが、そういう意味で言えば、よく分からない短編作品が多く
収められている本作だとしても、価値のある出会いであったとdeserve it.
他のレビュアーの方もおっしゃっている通り、確かに人間を描いていませんね。
グレッグ・イーガンと同じ様な、アイディアひけらかし型の作家。
とは言え「地獄とは神の不在なり」に含まれた視点は、自分にとって新しい視点でした。
私は映画や本に触れる時、読む前と読んだ後で何か1つでも行動が変わったか?を
重視しているのですが、そういう意味で言えば、よく分からない短編作品が多く
収められている本作だとしても、価値のある出会いであったとdeserve it.
2022年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あなたの人生の物語を読破。
短編SFです。映画メッセージの原作。
映画観た時の印象は薄かったけど、これは映像化しづらいテーマの話だと思った。強いて言えばカールセーガンのコンタクトに似ているが、センスオブワンダーではなく、多分に心理的な物語。
紙の動物園もそうだったが、テッド・チャンはSFを題材に使いながら、言葉の不一致によるすれ違いと親子のすれ違いの悲喜を静かに描き出す作家なんだということがわかりました。静かな秀作です。
短編SFです。映画メッセージの原作。
映画観た時の印象は薄かったけど、これは映像化しづらいテーマの話だと思った。強いて言えばカールセーガンのコンタクトに似ているが、センスオブワンダーではなく、多分に心理的な物語。
紙の動物園もそうだったが、テッド・チャンはSFを題材に使いながら、言葉の不一致によるすれ違いと親子のすれ違いの悲喜を静かに描き出す作家なんだということがわかりました。静かな秀作です。
2021年12月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画「メッセージ」が面白く、原作も読んでみたくなり購入。満足。その他の短編も独自の世界観があり読み応えがありました。
2022年3月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『トップをねらえ2!』を視聴し、本作の題名がサブタイトルに引用されていたから…という俗な理由で読んでみましたが、想像を遥かに超える面白さでビックリしました。テッド・チャン氏の他の著作も読みたくなりました
2017年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書には、アメリカのSF作家テッド・チャンが発表した、以下の短編が収められています。
「バビロンの塔」(The of Babylon, 1990)浅倉久志 訳
「理解」(Understand, 1991)公手成幸 訳
「ゼロで割る」(Division by Zero, 1991)浅倉久志 訳
「あなたの人生の物語」(Story of Your Life, 1998)公手成幸 訳
「七十二文字」(Seventy-Two Letters, 2000)嶋田洋一 訳
「人類科学の進化」(The Evolution of Human Science, 2000)古沢嘉通 訳
「地獄とは神の不在なり」(Hell Is the Absence of God, 2001)古沢嘉通 訳
「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」(Liking What You See : A Documentary, 2002)浅倉久志 訳
「作品覚え書き」(Story Note)古沢嘉通 訳
日本では2017年5月に公開予定の『メッセージ』(映画の原題は “Arrival”)の原作「あなたの人生の物語」が収録されていたため、本書を手に取ってみました。はじめてテッド・チャンの作品を読んだのですが、どの短編もまるで違う魅力を放っていて、それでいながら共通のテーマを持つことに驚きました。
旧約聖書における神と人との対立を象徴するモチーフが、世界の構造を探求しようとする人々の営みの象徴として読み替えられた「バビロンの塔」。人間が人間を超越していくさいの意識の変容がつづられた「理解」。
けっして到達できるはずのない真理に到達してしまった人間の悲哀が語られた「ゼロで割る」。異星人とのコンタクトによる人間的世界観の変革がシミュレーションされた「あなたの人生の物語」。
ユダヤ教におけるゴーレムの伝承と、前成説(あらゆる動物の胚珠のなかに生まれてくる子がすでに形をなして存在しているとする説)とが近代合理主義にもとづいて運用されている、サイバーパンク風の世界が舞台の「七十二文字」。人類と人類を超越した存在が共存する世界において、人類に残された学究の可能性を説く疑似論文「人類科学の進化」。
天国と地獄が実在するうえ、それらが可視化された世界を舞台にし、信仰の意義や滑稽さを寓話的に描く「地獄とは神の不在なり」。美醜を認識する働きを抑制するテクノロジーが開発された未来を、ドキュメンタリー風に描いた「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」。
科学、言語学、数学、宗教と異なるモチーフに彩られながらも、いずれの作品も “わたしたち人類がこれまで抱いていた認識の変容をせまられたらどうなるか” という問題意識を孕んでいます。そのなかでも、とくに表題作「あなたの人生の物語」と「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」は傑出していると思いました。
「あなたの人生の物語」は言語SFであり、“人類は言葉を使って世界を認識している” とすれば、“人類とまったく異質の知的生命体の言語と接触したばあいにどうなるか” を突き詰めた作品です。壮大なテーマが徹頭徹尾 “あなた” に向けた個人の物語として語られるうえ、喜びと苦しみをもふくめた生の肯定を謳っていることに、すごみを感じました。
「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」で描かれるのは、容姿による差別をなくすために美醜を認識する機能を抑制するテクノロジーが開発された世界。考えうる賛否様々な知見がドキュメンタリータッチに叙述されます。
“差別はいけない” というポリティカル・コレクトネスが、科学技術によって実現および強制されたらどうなるか。その答えが示唆されているのですが、たくみに皮肉とユーモアが交えられているので、おもしろおかしく読めてしまいました。もちろん差別一般のメタファーとも読めますが、人種や性に関する差別とは違い、“美醜” という政治や司法ではあつかえないデリケートな問題にフォーカスしているところがユニークです。
*kindle版には、SF翻訳家の山岸真さんによる解説は収録されておりません。
「バビロンの塔」(The of Babylon, 1990)浅倉久志 訳
「理解」(Understand, 1991)公手成幸 訳
「ゼロで割る」(Division by Zero, 1991)浅倉久志 訳
「あなたの人生の物語」(Story of Your Life, 1998)公手成幸 訳
「七十二文字」(Seventy-Two Letters, 2000)嶋田洋一 訳
「人類科学の進化」(The Evolution of Human Science, 2000)古沢嘉通 訳
「地獄とは神の不在なり」(Hell Is the Absence of God, 2001)古沢嘉通 訳
「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」(Liking What You See : A Documentary, 2002)浅倉久志 訳
「作品覚え書き」(Story Note)古沢嘉通 訳
日本では2017年5月に公開予定の『メッセージ』(映画の原題は “Arrival”)の原作「あなたの人生の物語」が収録されていたため、本書を手に取ってみました。はじめてテッド・チャンの作品を読んだのですが、どの短編もまるで違う魅力を放っていて、それでいながら共通のテーマを持つことに驚きました。
旧約聖書における神と人との対立を象徴するモチーフが、世界の構造を探求しようとする人々の営みの象徴として読み替えられた「バビロンの塔」。人間が人間を超越していくさいの意識の変容がつづられた「理解」。
けっして到達できるはずのない真理に到達してしまった人間の悲哀が語られた「ゼロで割る」。異星人とのコンタクトによる人間的世界観の変革がシミュレーションされた「あなたの人生の物語」。
ユダヤ教におけるゴーレムの伝承と、前成説(あらゆる動物の胚珠のなかに生まれてくる子がすでに形をなして存在しているとする説)とが近代合理主義にもとづいて運用されている、サイバーパンク風の世界が舞台の「七十二文字」。人類と人類を超越した存在が共存する世界において、人類に残された学究の可能性を説く疑似論文「人類科学の進化」。
天国と地獄が実在するうえ、それらが可視化された世界を舞台にし、信仰の意義や滑稽さを寓話的に描く「地獄とは神の不在なり」。美醜を認識する働きを抑制するテクノロジーが開発された未来を、ドキュメンタリー風に描いた「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」。
科学、言語学、数学、宗教と異なるモチーフに彩られながらも、いずれの作品も “わたしたち人類がこれまで抱いていた認識の変容をせまられたらどうなるか” という問題意識を孕んでいます。そのなかでも、とくに表題作「あなたの人生の物語」と「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」は傑出していると思いました。
「あなたの人生の物語」は言語SFであり、“人類は言葉を使って世界を認識している” とすれば、“人類とまったく異質の知的生命体の言語と接触したばあいにどうなるか” を突き詰めた作品です。壮大なテーマが徹頭徹尾 “あなた” に向けた個人の物語として語られるうえ、喜びと苦しみをもふくめた生の肯定を謳っていることに、すごみを感じました。
「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」で描かれるのは、容姿による差別をなくすために美醜を認識する機能を抑制するテクノロジーが開発された世界。考えうる賛否様々な知見がドキュメンタリータッチに叙述されます。
“差別はいけない” というポリティカル・コレクトネスが、科学技術によって実現および強制されたらどうなるか。その答えが示唆されているのですが、たくみに皮肉とユーモアが交えられているので、おもしろおかしく読めてしまいました。もちろん差別一般のメタファーとも読めますが、人種や性に関する差別とは違い、“美醜” という政治や司法ではあつかえないデリケートな問題にフォーカスしているところがユニークです。
*kindle版には、SF翻訳家の山岸真さんによる解説は収録されておりません。