彼女はアイドル枠で語られるが、単なるアイドルではない。歌手というミュージシャン色を強く持っている。無理にジャンルを作ればミュージシャンソロアイドルとでもなるのだろう。本人が言う通り、松田聖子のようなロールモデルもあるのは間違いなく、どこか懐かしさを感じさせるが、かといって本当に同じような歌手が過去にいたわけではなく、そこに価値がある。自らを野生児のようであったという彼女自信の過去の発言からも汲み取れる通り、ロールモデルの存在以外にも彼女のこれまでの経験が現在の雰囲気を纏わせているはず。そして、そういう環境がこの現代日本にあって、成長に影響を与え得るというのは大きなことだと思うし、誇れる事だと思う。
邦楽シーンは停滞しているとか低レベル化したとか言われるが、シーンの表向きこそそう見えていたが、彼女を見る限り、内側では確実にシーンが成長していたのだと思える。ソロとして世に出た彼女の影響の大きさはこれから顕在化してくるだろう。嘆息を漏らしていた全邦楽ファンに自信を持って言える。邦楽を見捨てずに待ってて良かったね。
曲についてはスタジオ録音曲も良いのだが、私が最も語りたいのはライブ録音のBonus Trackである。もちろん音源修正はあろうが、エモーショナルの低下は限定的であり、十分伝わってくるはずだ。現在中耳炎の私にも伝わってきたのだから間違いない。彼女の声は表情が見える声である。曲調もあって、聴いていて本当に気持ちが良い。カラオケで高得点を得る為に頑張っているタイプの歌声では絶対に感じられないものだ。
アミューズ所属の方々に共通しているのは、スタジオ版よりもライブ版の方が出来が良いということ。それは作品としての出来が良いというよりは、歌声が良いのである。本当に素晴らしい。本作を少しでも良いと感じたら、彼女のライブ映像も買って頂きたいと思う。もっと良い経験が出来るから。
そして18歳というのも見逃せない。つまり、さらに成長していくということでもあり、今しか見られない魅力を湛えているという一種の死生観というか、ものの哀れに似た趣もあるわけだ。もちろん若者に共通することなので珍しいわけではないが、彼女はそれが歌声とパフォーマンスに体現しているのである。将来まとめて観たり聴いたりするのも悪くないだろうが、リアルタイムに感じるのはより感動する為の最も効果的なスパイスである。感動を求めて音楽を聴く人には強くオススメする。
スタジオ版ではややダイナミズムが失われている為、評価は小数点が許されるなら4.6点としたいが、そうは出来ないので4点とするよりは近い5点とした。