メンバーは、Jon Anderson(ヴォーカル)、Steve Howe(ギター)、Chris Squire(ベース)、Rick Wakeman(キーボード)、Alan White(ドラムス)という、ほぼ黄金期のラインアップ。ほぼ、と書いたのは、「Fragile (1971年11月)」、「Close to the Edge(1972年9月)」というプログレッシヴ・ロック史上に永遠にその名を刻まれる、Yes の傑作アルバムに参加したBill Bruford(ドラムス)が、ここにはいないからです。
しかし、後任のWhiteは、この1972年秋の北米ツアーが始まる直前にバンドに加入し、数日間で全てのパートをこなせるようになったというから驚きです。ちなみに、Whiteは、Plastic Ono Bandのメンバーとして1969年9月13日にトロントでライブを行った際は、なんと、当地へと向かう飛行機の中でJohn Lennon、Eric Claptonらと音合わせをし、本番に臨んだとのこと。
さて、「Progeny: Seven Shows From Seventy-two」は、タイトル通り、1972年10月31日から11月20日まで、カナダ、アメリカの7ヶ所で行われたライブが収録されており、この2枚組は、各地のハイライトを編集したもの。
7公演全てが収録された14枚組の「Deluxe Edition」も同時リリースされています。
全公演のセットリストはほぼ同じであり、2枚組の方は、そのセットリストを尊重し、各地の演奏がバランスよく収録されています。
いずれにしても、バンド絶頂期の未発表音源を聴くことが出来るのは、プログレ・ファンにとっては、大いなる喜びであり、古びたテープをここまで修復してくれた関係者に感謝したいと思います。
ジャケットはもちろん、Yes の6人目のメンバーとまで呼ばれたRoger Deanが担当しており、1970年代初頭にタイムスリップしてしまいそう。
レコードでは3枚組の超大作であった「Yessongs」が、1972年2月及び11月、12月のライブからベスト・テイクを収録したものであり、同時期の演奏が収められた「Progeny」が悪かろうはずがありません。スタジオと同じ演奏をライブでも再現するという、彼らの気迫のこもった姿勢に、各地の観客は圧倒されたはず。
私がYes を観たのは、1973年3月14日、京都でのコンサートであり、メンバーもセットリストも、ほぼ「Progeny」と同じだったのではないかと思います。
Chris Squireは、ベース片手にステージで華麗に舞い、Rick Wakemanのラメのマントは、キラキラとまるでミラーボールのように輝いて、Steve Howeは、何本ものギターを器用に操り、Jon Andersonは、複雑なリズムに乗って、身振り手振りを交えて歌を紡ぎ出していました。Alan Whiteのドラムスが、何の違和感もなく、バンドのサウンドに溶け込んでいたのは、言うまでもありません。
そんな思い出が、ここに収録された目くるめくような演奏から蘇ってきます。
曲目と、収録会場は次の通りです。
DISC1の、1曲目「Opening (Excerpt From Firebird Suite)/Siberian Khatru」は、1972年11月20日、Nassau Coliseum, Uniondale, New York。
2曲目「I’ve Seen All Good People」と3曲目「Heart Of The Sunrise」は、1972年11月15日、Knoxville Civic Coliseum, Knoxville, Tennessee。
4曲目「Clap/Mood For A Day」は、1972年11月12日、Greensboro Coliseum, Greensboro, North Carolina。
5曲目「And You And I」は、1972年11月11日、Cameron Indoor Stadium, Durham, North Carolina。
DISC2の、1曲目「Close To The Edge」も、1972年11月11日、Cameron Indoor Stadium, Durham, North Carolina。
2曲目「Excerpts From “The Six Wives Of Henry VIII”」は、1972年11月12日、Greensboro Coliseum, Greensboro, North Carolina。
3曲目「Roundabout」は、1972年10月31日、Maple Leaf Gardens, Toronto, Ontario。
4曲目「Yours Is No Disgrace」は、1972年11月12日、Greensboro Coliseum, Greensboro, North Carolina。
私は、ラストの「Yours Is No Disgrace」が、このアルバムを聴いていて、最も熱くなりました。各地のコンサートでも、アンコールで、メンバー全員が一丸となって燃え尽きるまで演奏した曲だったろうと思います。