『放浪息子』は、志村貴子原作のアニメです。アニメは、1クールで描かれているため、原作で描かれている部分がカットされていたりします。第1巻の特典映像で監督が述べていますが、時系列を組み替えて全話を(1クールの中で)アニメ化するかどうか悩んだ末にこのような形になったということです。
わたしは、原作未読でこのアニメをみましたが大変に面白い作品だと思いました。最初、第1話をみた時は、淡い白い画面が多くてみづらいアニメだなと思っていましたが、視聴していく内にその演出にも慣れ、最終的には作品の魅力にハマっている自分がそこにはいました。
この作品の最大の魅力は、ジェンダー問題を描きながら終始深刻なドラマにはならず、等身大の中学生たちの青春物語として描かれている所にあるのではないでしょうか。だからこそ、みている視聴者も主人公をはじめとしたキャラクターを通して自分たちの中学生時代を想起し、共感してしまうのではないだろうか。
物語は、女の子になりたい男の子・二鳥修一と、男の子になりたい女の子・高槻よしのを中心として描かれていく。アニメは、1クールで描かれている為、最終話で声変わりしていく自分を修一が受け入れるところで終わる。
彼が本当に女の子になりたいのであればその先にあるのは、理想ばかりではない世界だ。だが、アニメはその後の修一を描かない。だからこそ、アニメは中学生の青春物語として綺麗に完結している。
みたことがない方にもお薦めしたい良作アニメ。等身大の中学生たちの青春物語がそこにはある。(2018.1.30記)