本作は、「魚舟・獣舟」「華竜の宮」「リリエンタールの末裔」と続く上田 早夕里氏著作Ocean Chronicleシリーズの一作であり、また現在刊行されてる同シリーズの最新巻となる。まだ上記の作品を未読の読者はそちらから読むことを強くお勧めする。
今作は、前作である「華竜の宮」で活躍したアシスタント知性体や獣舟の異常性などのSF要素は鳴りを潜め、三者の主人公からの視点を持って、前作のラストで描かれた人類滅亡級の災害を前に組織、宗教、闘争といった骨組みを経由して描いていく。
未だ人類が経験したことのない未曾有の災害を前に、人はどこまで傲慢になれるのか。
なにを犠牲にし、なにを得るのか。
三者の主人公は滅亡を目前とする世界になにを刻むのか。
そして、未来に残るものは希望か絶望か。
同シリーズでは、異変後の世界はまだ描かれておらず、本作のあとがきでは、時系列は定かではないが二編ほど物語は続くという。
本作で刻まれた「深紅の碑文」は未来の世界になにを残すのか。そして人類は……
淡々とした文体でも、登場人物たちの生き生きとした描写や、ふいに伝わってくる熱い想いには、たびたび涙が溢れることもあった。まだ続編の余地は幾らか残されているので、いつの日かまたこの世界に触れられることを楽しみにしている。
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深紅の碑文(下) (ハヤカワ文庫JA) Kindle版
困難な時代においても、深宇宙研究開発協会は人類の記録と生命の種を系外惑星に送り込もうと計画していた。その理念に共感した星川ユイは協会で働き始めるが、大量の資源を必要とする宇宙開発は世間から激しい非難を浴びる。 ユイは支援を求めて青澄に会いに行くが……苛烈を極める物資争奪戦、繰り返される殺戮、滅亡を意味する環境変化――いくたびの難事を経てなお、信念を貫いて生きる者たちを描破した比類なきSF巨篇。解説/渡邊利通
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2016/2/25
- ファイルサイズ1915 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
商品の説明
著者について
兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、同作でデビュー。2010年刊行の長篇『華竜の宮』は、雄大なスケールの黙示録的海洋SF巨篇として書評家、読者から支持され、「ベストSF2010国内篇」にて第1位を獲得、第32回日本SF大賞も受賞した。同作を含む〈オーシャンクロニクル・シリーズ〉は『リリエンタールの末裔』、本書と書き継がれ、今後も新作の発表を予定している。他の著作に『魚舟・獣舟』『妖怪探偵・百目(全三巻)』『薫香のカナピウム』などがある。
登録情報
- ASIN : B01CJJ7CKU
- 出版社 : 早川書房 (2016/2/25)
- 発売日 : 2016/2/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1915 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 531ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 219,400位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2018年12月11日に日本でレビュー済み
レポート
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1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2015年8月13日に日本でレビュー済み
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本作はSF小説として一級品であると同時に、人類滅亡級の災害を描いた物語としても最高峰の傑作であると感じた。さらに言えば、メインキャラ達のミクロ視点を中心に据えながら壮大極まりないマクロ視点を語るという離れ業に成功している、希有な小説である。これほどの大傑作が言語的な壁のせいで世界のSFファン達の目に触れないのは、本当に惜しい。
淡々とした文体で語られる物語のそこかしこに、登場人物達の熱い想いが伝わってくる瞬間があり、そのたびに目頭を熱くさせられた。本作を読んでいると、物語に熱を込めるために必ずしも激しい文体は必要ないのだということを再認識させられる。
前作『華龍の宮』のエピローグでは、大異変発生後の光景が簡潔に語られたが、本作の読了後にその部分を読み返すと、いたたまれないことこのうえなし。本作の膨大なページ数を費やして真に迫る命を吹き込まれた世界が、地殻を引き裂く大異変によって為す術もなく蹂躙されていく様は、哀しさを通り越して諸行無常の極致。本作中ではその自信満々な言動に「こいつらなら本当に人類を救ってくれるかもしれない」と頼もしさを憶えた救世の子達だが、前作のエピロードで語られる大異変の光景をいざ目の当たりにしてしまうと、彼らの存在すら大河の濁流に抗う小舟のごとく心許ない・・・。
SFすぎて著者の得意分野から離れてしまうのかもしれないが、是非とも人類とアキーラ号のその後を描いた続編を執筆して欲しいと、心の底から願ってやまない。
淡々とした文体で語られる物語のそこかしこに、登場人物達の熱い想いが伝わってくる瞬間があり、そのたびに目頭を熱くさせられた。本作を読んでいると、物語に熱を込めるために必ずしも激しい文体は必要ないのだということを再認識させられる。
前作『華龍の宮』のエピローグでは、大異変発生後の光景が簡潔に語られたが、本作の読了後にその部分を読み返すと、いたたまれないことこのうえなし。本作の膨大なページ数を費やして真に迫る命を吹き込まれた世界が、地殻を引き裂く大異変によって為す術もなく蹂躙されていく様は、哀しさを通り越して諸行無常の極致。本作中ではその自信満々な言動に「こいつらなら本当に人類を救ってくれるかもしれない」と頼もしさを憶えた救世の子達だが、前作のエピロードで語られる大異変の光景をいざ目の当たりにしてしまうと、彼らの存在すら大河の濁流に抗う小舟のごとく心許ない・・・。
SFすぎて著者の得意分野から離れてしまうのかもしれないが、是非とも人類とアキーラ号のその後を描いた続編を執筆して欲しいと、心の底から願ってやまない。
2014年9月4日に日本でレビュー済み
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一定の面白さはある。ただ、海上民と陸上民の紛争と仲裁を丁寧に描きすぎて、SFとしてのダイナミズムを失ってしまっている。
獣船の変異体、殺戮知性体など、異世界らしい小道具やツールがことごとく封印されたままだった。
リ・クリティシャス以後の世界をしっかり描こうと真面目になりすぎた感じ。空白があってもいいから、SF的なツールを活躍させてほしかった。ルーシィーを中心人物にしたエピソードとか…。
まあしかし、読みごたえはあった。青澄、ザフィール、オクトープスそしてチャム。キャラクターの実在感は確かなものだった。
獣船の変異体、殺戮知性体など、異世界らしい小道具やツールがことごとく封印されたままだった。
リ・クリティシャス以後の世界をしっかり描こうと真面目になりすぎた感じ。空白があってもいいから、SF的なツールを活躍させてほしかった。ルーシィーを中心人物にしたエピソードとか…。
まあしかし、読みごたえはあった。青澄、ザフィール、オクトープスそしてチャム。キャラクターの実在感は確かなものだった。
2016年4月16日に日本でレビュー済み
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もちろん、作者はこの先の物語も書いてくれるんですよね。
こんな面白い話、ここで終わらせてもらっちゃ困りますよ。
こんな面白い話、ここで終わらせてもらっちゃ困りますよ。
2014年2月13日に日本でレビュー済み
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時間に余裕があったら、ぜひ「リリエンタールの末裔」を
読んでからこの「上下巻」を読んでください。
読んでからこの「上下巻」を読んでください。
2014年1月29日に日本でレビュー済み
第32回日本SF大賞受賞作『華竜の宮』の続編的作品。
近未来を舞台とした海洋SFを謳っているが、ストーリーの骨子は、
為政者/経営者/宗教団体などの、組織的立場に立脚した利害、
ならびに官僚的面子のネゴシエーションの応酬という珍しい作品。
もちろんSF的設定や世界観、仮想生物たちの生き生きとした描写は
それはそれで素晴らしく、脳内にリアルに立ち上がってくる。
しかし、最初から最後まで物語を引っ張っていくのは、
組織の頂点や末端で、所属組織の論理や制約に縛られながらも、
自らの倫理にも誠実であらんとするネゴシエーターたちの姿勢と苦悩である。
前作は本作にも登場する一人の官僚を軸に骨子が組み立てられていたが
本作ではより多くの組織の立場を背負った人間たちが物語を担う。
その一人ひとりを、集団の特徴を現す粗い書割としてではなく、血の通った人間として
書き分けている作者の才能の進化には、正直感服するしかない。
下巻では、旧世代の因縁が執拗に語られる。とはいえその結末は、
様々な想いがすべては成就されす、本書の世界観、
そしてダブルバインドな題名と同じく苦く、救いが見出せないものだ。
一方終末が迫る中、人類の希望が、いや、生きていた証が
様々な困難を乗り越え、若者たちの手で深宇宙に打ち上げられる。
誰に渡されることの無いバトンが、無音のラグランジュポイントから
静かに旅立つラストの描写には、読者はじんわりとした感動で満たされるであろう。
近未来を舞台とした海洋SFを謳っているが、ストーリーの骨子は、
為政者/経営者/宗教団体などの、組織的立場に立脚した利害、
ならびに官僚的面子のネゴシエーションの応酬という珍しい作品。
もちろんSF的設定や世界観、仮想生物たちの生き生きとした描写は
それはそれで素晴らしく、脳内にリアルに立ち上がってくる。
しかし、最初から最後まで物語を引っ張っていくのは、
組織の頂点や末端で、所属組織の論理や制約に縛られながらも、
自らの倫理にも誠実であらんとするネゴシエーターたちの姿勢と苦悩である。
前作は本作にも登場する一人の官僚を軸に骨子が組み立てられていたが
本作ではより多くの組織の立場を背負った人間たちが物語を担う。
その一人ひとりを、集団の特徴を現す粗い書割としてではなく、血の通った人間として
書き分けている作者の才能の進化には、正直感服するしかない。
下巻では、旧世代の因縁が執拗に語られる。とはいえその結末は、
様々な想いがすべては成就されす、本書の世界観、
そしてダブルバインドな題名と同じく苦く、救いが見出せないものだ。
一方終末が迫る中、人類の希望が、いや、生きていた証が
様々な困難を乗り越え、若者たちの手で深宇宙に打ち上げられる。
誰に渡されることの無いバトンが、無音のラグランジュポイントから
静かに旅立つラストの描写には、読者はじんわりとした感動で満たされるであろう。
2014年1月6日に日本でレビュー済み
2014年の読み初め。
この物語には、全てがある。
未曽有の環境変化に直面する人類。
遺伝子操作以上の生物改変、核融合技術の開発、人工知性体の開発など、全てのタブーを捨て去ってまで生き延びようとする時、人類はどうなるのか。
人は、何を選び、何を捨て去るのか。
物語の舞台は、残酷で悲惨な未来だが、希望は残る。
恐らく、どれを希望と捉えるかは、読み手次第だ。
著者の既刊「魚舟・獣舟」、「華竜の宮」などと世界観は同じで、読んでいた方が、物語には入り込み易い。
正直、個人的に海が身近ではないため、「魚舟・獣舟」を読んだ時は、作者の世界観に違和感を覚え、馴染めなかった。
しかし、長編の「華竜の宮」と「深紅の碑文」は、壮大な物語だが、一人一人の人生の物語でもあり、彼らと共に、波の音を聞き、潮の匂いを嗅いでいるかのように感じられ、読み終えるのが残念でならなかった。
読み終えた今、まるで「世界のためにお前は何が出来るのか」と問いかけられているようだ。
この物語には、全てがある。
未曽有の環境変化に直面する人類。
遺伝子操作以上の生物改変、核融合技術の開発、人工知性体の開発など、全てのタブーを捨て去ってまで生き延びようとする時、人類はどうなるのか。
人は、何を選び、何を捨て去るのか。
物語の舞台は、残酷で悲惨な未来だが、希望は残る。
恐らく、どれを希望と捉えるかは、読み手次第だ。
著者の既刊「魚舟・獣舟」、「華竜の宮」などと世界観は同じで、読んでいた方が、物語には入り込み易い。
正直、個人的に海が身近ではないため、「魚舟・獣舟」を読んだ時は、作者の世界観に違和感を覚え、馴染めなかった。
しかし、長編の「華竜の宮」と「深紅の碑文」は、壮大な物語だが、一人一人の人生の物語でもあり、彼らと共に、波の音を聞き、潮の匂いを嗅いでいるかのように感じられ、読み終えるのが残念でならなかった。
読み終えた今、まるで「世界のためにお前は何が出来るのか」と問いかけられているようだ。
2014年8月3日に日本でレビュー済み
組織の内側視点の話が、とても興味深く面白く語られます。
詰め込み過ぎで未消化な感じもしましたが、楽しめました。
話は、まだ終わって無いのではないかという楽しみもあります。
厳密な繋がりは求めないので、書き継いで欲しい世界設定です。
詰め込み過ぎで未消化な感じもしましたが、楽しめました。
話は、まだ終わって無いのではないかという楽しみもあります。
厳密な繋がりは求めないので、書き継いで欲しい世界設定です。