最近の流行りである「タイトルにキャラの名前」系、特定のキャラを売りにしているまんがではありますが、
他のものとは一線を画している作品です。同じ系統のまんがだと、サンデー周辺だけでも「だがしかし」
「からかい上手の高木さん」「天野めぐみはスキだらけ!」「古見さんはコミュ症」「魔王城でおやすみ」
などありますが、そのどれとも違う魅力があると思います。
際立ってわかりやすく特殊なキャラクターはいません。タイトルに出ている湯神くんも、
ギャグ/コメディ系のまんがにしては個性が大人しい方だとは思います。変なやつではありますけども、
「坂本ですが?」と比較すればまだ普通な人柄です。表紙のちひろさんは、
主人公を隣の席から俯瞰するポジションなので「普通かわいい」みたいなキャラ。
彼女をふくめ、湯神くんの家族、親戚、部活のメンバー(先輩後輩など関係ない!)、
クラスメイト、他校にいる因縁深い野郎など、だいたいは湯神くんに振り回されるキャラです。
彼らの中にも、普通に振る舞っていて鼻につくような属性が付加されているキャラはいません。
作中における立場や役割をはっきりさせられて少し外見に反映してあるくらいで、
「あーこんなやついるいる」みたいなキャラばかりです。なので「誰こいつ」みたいなキャラも特にいません。
一見はキャラものコメディなのですが、ズガーンと印象に残るようなキャラデザ、言動、行動、
キャラどうしの関係性は特にありません。「だがしかし」のほたるさんのような、
田舎が舞台だけど都会から来たフリフリ着用カワイイやんちゃ系お姉さんかつ独特な絵柄でインパクト(や胸など)が
ドカーンしてるようなキャラデザはありません。涼宮ハルヒの自己紹介のような破壊力高めな声明もありませんし、
「隣の関くん」の関くんのような奇行をするキャラもいません。LGBT、先生×生徒など禁断の関係、
はっきりした主従関係などもありません。
キャラものギャグまんがらしからぬフックの少なさですが、それでは何がよいかと言いますと、
ただただ「笑い話作りの丁寧さ」というところに尽きます。
作中にたびたび出てくる要素として、主人公である湯神くんが落語好きであるというものがあります。
話の軸として置かれることも多々ありつつ、毎回上手に絡めてくるので、
作者さん自身も相当な落語好きなのだなぁと思わされます。そしてこの落語という要素は、
まんがのいちエピソードを形作るだけに留まらず、この「湯神くんには友達がいない」
というまんが全体の雰囲気、下地作りにも活かされているのだなと新しい話を読むたびに感じます。
筆者は特に落語に詳しいというわけではないのですが、
ああだいたいこんな感じなんだろうなという説得力がある気がします。
超常現象は起こりませんし、ケガをしてもページをめくればノーダメージみたいなギャグまんがな描写は一切なく、
登場キャラたちの都合や思惑、日常に根差した希望や悩みなどを話のテーマに据えて、
前提として「笑い噺」というのが置かれたうえで各話が作られています。
表紙のちひろさんですが、第1話で湯神くんのいる学校へ転校してきたところから始まり、
湯神くんと違って友達を作りたい彼女はいろいろ奮闘し、
様々ありつつも8巻あたりでようやく友達作りも落ち着いてきたというキャラです。
転勤族である父親を持つ彼女が、湯神くんに振り回されつつもクラス内や部活に居場所を得ることができたわけです。
作中の時期は、4月から始まって12月くらいまでの出来事。
そして9巻では、あらすじにもあるように再びちひろさんの父親が転勤することによる転校が決まってしまうわけです。
さあ大変だ、という感じですね。そして【編集担当からのおすすめ情報】 にもあるように、
この話題自体は「笑い噺」になって割とあっさり流れていきます。
ここに至るまでに、まあギャグまんがですので、なんだか深刻になったり大喧嘩をしたり
お涙頂戴したりなどの起伏は特にありません。端から端まで、1巻の最初から9巻の最後までずーっと「笑い噺」です。
作中で湯神くんが「笑い噺はウケなきゃダメなんだ」と言っているように、この軸は一度も外れずに進みます。
「そんな中で、ちひろさんが友達作ったりなんなりするような変化が8巻も続けて描けてるの?」と思うかもしれませんが、
出来てるんですよね。あくまで笑い噺のための各キャラが持っている動機という位置づけなので、
そちらが主軸に置かれてストーリー展開することなどはありませんが、読者を笑わせてくれているせいで
ぐねぐねと変化しています。湯神くんが「面倒くさい!」といつも切って捨てていく、
各キャラの考え方や人間関係のうっとうしさを存分に活かしつつ、9巻ラストではさらにこじれていきましたね。
登場人物たちは本当に普通で、湯神くんも昨今の流行りからすれば少し尖っている程度のキャラ付けながら、
様々な思惑を持った彼らが好き勝手に動くことで描かれるエピソード群はどれも秀逸なものです。
「よくできてるなぁ」と思わされる笑い噺です。バレンタインの話などは特に際立って出来がよかったと思わされます、
あんなにたくさんキャラがいてもスッキリ読めてしまう、話作りの匠だなぁと思わず「ほー」と唸ってしまいました。
いろいろ総合して、実にサンデーらしいまんがだなと思わされます。「サンデーらしい」というのは、ごくごく私的に
「まんがとしての完成度が高く、老若男女を問わずまんが好きなら誰でも楽しんで読める」という雰囲気だと定義してます。
この一点で語るとするなら、最近のサンデーにおけるギャグ/コメディまんがの中では「だがしかし」と
並ぶかそれ以上に秀逸な作品だと思います。
9巻には収録されていない最新話もふくめ、最近はなんだかラブコメを重点してますが、
このラブコメっぽさも「笑い噺」としてうまくエピソード作りに活かされていくだろうな~と安心できるんですよね。
思いっきりラブコメとか他の軸にシフトしていったら落胆してしまいますが、月イチ連載で丁寧に作られていますので、
おそらくそういったこともないでしょう。作中では新年度も迎えることでしょうし、
これからも月イチでこの「笑い噺」が読めるのを楽しみにしています。
作者先生ほど話作りが上手ならここまでレビュー長くならないだろうなと思いつつ、
まかり間違ってこのレビューを読んだ新規な方が1巻からチェックしてくれるように祈りつつ。
おあとがよろしいようで。…よろしいでしょうか。
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湯神くんには友達がいない(9) (少年サンデーコミックス) Kindle版
“湯神くんには友達はいないくせに彼女はいる”
しかも、その“彼女”は
我らがヒロイン(?)綿貫ちひろだと
思い込んでしまった門田くん…!!
そんな、ただでさえこじれた状況の中…
転勤族・綿貫家の再度の引っ越しという
“確かな筋”からの情報が吹き荒れて…!?
大荒れ模様の湯神周辺…!!
大人気お一人様コメディー
怒濤の急展開第9巻!!!
しかも、その“彼女”は
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“確かな筋”からの情報が吹き荒れて…!?
大荒れ模様の湯神周辺…!!
大人気お一人様コメディー
怒濤の急展開第9巻!!!
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日2016/5/18
- ファイルサイズ38203 KB
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登録情報
- ASIN : B01FQI5SO8
- 出版社 : 小学館 (2016/5/18)
- 発売日 : 2016/5/18
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 38203 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効になっていません。
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- 付箋メモ : 有効になっていません
- 本の長さ : 171ページ
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年5月21日に日本でレビュー済み
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2016年11月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「今日から俺は」とはテイストが違うとは思うが、そこに通ずる独特な正統派ではない主人公が活躍するストーリー。すごく好きです。
2016年5月21日に日本でレビュー済み
相変わらず面白い。
この作品の最大のキモは、キャラクター設定の上手さもさることながら、そのキャラクターの性格が決してブレないことであると思います。
下手な漫画では、作者が思い描くストーリーを無理矢理にでも成立させるため、キャラクターの性格が急に変わってしまうことが多々あります。「このキャラってこんなこと言う(する)やつだったっけ?」…そういったことが繰り返されるうち、キャラクターの意思よりも作者の思惑ばかりが目立つようになり、いつしかキャラクターはただの書き割り・舞台装置と化し、完全に魅力を失ってしまいます。
しかしこの漫画では、“最強のお一人様”湯神くんを筆頭に、全てのキャラが確固たるパーソナリティを持ち、決してそれが変わることはありません。
人が人であるからこそ起こる様々な出来事、それこそがこの作品のテーマであり面白さだと思います。また、そのどれもが最終的に笑い話として昇華されるのは作者のユーモアのなせる業でしょう。
まだまだ先が楽しみな作品ですが、願わくばサンデーは無理な引き伸ばしなどせず、作者の思う通りのタイミングで終わらせて欲しいです。続けることが目的になってしまった時、キャラクター達は輝きを失ってしまうでしょう。
この作品の最大のキモは、キャラクター設定の上手さもさることながら、そのキャラクターの性格が決してブレないことであると思います。
下手な漫画では、作者が思い描くストーリーを無理矢理にでも成立させるため、キャラクターの性格が急に変わってしまうことが多々あります。「このキャラってこんなこと言う(する)やつだったっけ?」…そういったことが繰り返されるうち、キャラクターの意思よりも作者の思惑ばかりが目立つようになり、いつしかキャラクターはただの書き割り・舞台装置と化し、完全に魅力を失ってしまいます。
しかしこの漫画では、“最強のお一人様”湯神くんを筆頭に、全てのキャラが確固たるパーソナリティを持ち、決してそれが変わることはありません。
人が人であるからこそ起こる様々な出来事、それこそがこの作品のテーマであり面白さだと思います。また、そのどれもが最終的に笑い話として昇華されるのは作者のユーモアのなせる業でしょう。
まだまだ先が楽しみな作品ですが、願わくばサンデーは無理な引き伸ばしなどせず、作者の思う通りのタイミングで終わらせて欲しいです。続けることが目的になってしまった時、キャラクター達は輝きを失ってしまうでしょう。
2016年5月20日に日本でレビュー済み
湯神はヒロインちひろの転校に対しても「達者でな…」の一言だけ。
しかし湯神とは正反対の林山の行動には衝撃、青春してますね!
バレンタインの渡辺対八重樫の歴研の勝ち誇った顔にも笑いました。
今回もささいな行き違いの連続でおかしなことが色々起きていますが、この人間観察の妙は作者の方も落語が好きでいらっしゃるからかなと思ったり。
次回、悩めるちひろに新たに起きた事件の展開もとても楽しみです。個人的には門田くんと城戸さんの関係が気になっています。
あと野球している湯神くんはやっぱり生き生きしてますね。さんざんもめた壮行試合編もおもしろかったです。
しかし湯神とは正反対の林山の行動には衝撃、青春してますね!
バレンタインの渡辺対八重樫の歴研の勝ち誇った顔にも笑いました。
今回もささいな行き違いの連続でおかしなことが色々起きていますが、この人間観察の妙は作者の方も落語が好きでいらっしゃるからかなと思ったり。
次回、悩めるちひろに新たに起きた事件の展開もとても楽しみです。個人的には門田くんと城戸さんの関係が気になっています。
あと野球している湯神くんはやっぱり生き生きしてますね。さんざんもめた壮行試合編もおもしろかったです。
2016年6月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本巻のお題はお正月、バレンタインデー、
ちひろの引越し、卒業生のお見送りです。
湯神くんのおせっかい焼きな従姉妹が登場
しますが、強引さは湯神くんとそっくり。
ひとりよりがりの勘違いで湯神くんを次々
困らせます。
バレンタインデーのチョコ騒動は、うまく
ネタをふくらませられなかった印象でした。
王道の恋愛イベントなだけに、ネタを料理
し切れなかったのはもったいなく感じます。
野球部の卒業生たちのための壮行会では、
あいかわらずの湯神節。空気を読んで先輩
を立てるなんて殊勝な心がけはありません。
そして、ちひろの引越しをめぐる勘違いは
悲劇を生み…犠牲者が哀れでした。笑
いつもどおり巻末のおまけページが充実。
単行本の楽しみが増えるのは嬉しいです。
ちひろの引越し、卒業生のお見送りです。
湯神くんのおせっかい焼きな従姉妹が登場
しますが、強引さは湯神くんとそっくり。
ひとりよりがりの勘違いで湯神くんを次々
困らせます。
バレンタインデーのチョコ騒動は、うまく
ネタをふくらませられなかった印象でした。
王道の恋愛イベントなだけに、ネタを料理
し切れなかったのはもったいなく感じます。
野球部の卒業生たちのための壮行会では、
あいかわらずの湯神節。空気を読んで先輩
を立てるなんて殊勝な心がけはありません。
そして、ちひろの引越しをめぐる勘違いは
悲劇を生み…犠牲者が哀れでした。笑
いつもどおり巻末のおまけページが充実。
単行本の楽しみが増えるのは嬉しいです。
2016年5月18日に日本でレビュー済み
同じようなエピソードばかりで、ネタがループしてる…
前回は湯神とちひろの関係が大幅に動いたりとストーリー進展があったが、
今回は誤解やすれ違いの連続であまり話が進まず。
主人公に友達がいないって設定もほとんど関係なく、
ただの唯我独尊男のコメディになってる。
絵は抜群にきれいになっただけに、今回はいまひとつ。
どうせなら湯神とちひろのちょっと変わったラブコメにしたほうが、まだおもしろそう
前回は湯神とちひろの関係が大幅に動いたりとストーリー進展があったが、
今回は誤解やすれ違いの連続であまり話が進まず。
主人公に友達がいないって設定もほとんど関係なく、
ただの唯我独尊男のコメディになってる。
絵は抜群にきれいになっただけに、今回はいまひとつ。
どうせなら湯神とちひろのちょっと変わったラブコメにしたほうが、まだおもしろそう
2022年7月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本類はたいてい読んだらリサイクルショップに持って行きますがこれは気に入っているので持っていきません。