リスクという言葉、トレードオフという言葉、ベネフィットという言葉
それぞれについて、言葉の意味を知っている、もしくは、それを使って説明ができ、我々が身近に直面する様々な事について総合的に確からしさを判断しながら生活している人は少ないのではないでしょうか。
この三つの言葉、すべて日本語で説明すると長くなるということは、日本人に本来なじみの薄い概念ということになります。
そんな日本的文化に、いろいろな解釈のリスクが混在し、普段の生活習慣の中でのその三つの言葉を正しく使えるまたは理解できる事がいかに重要かを震災後のコミュニケーションの中で思い知らされた福島県民は多かったと思います。
本書は、震災後に起こったリスクという先鋭的な感情だけが独り歩きしている状況の中で、住民と行政、住民と科学者や専門家、住民と医者、住民と支援者組織や社会学者といった構図本来対立するべきでない状況を改善し協調を模索していった過程で生まれたと推察いたします。
著者は、その三つの外来語を身近に理解し有識者の知識を説明する工夫や住民の不安を代弁し専門家へ「通訳」するという潤滑材としての役割を果たす中、損失余命というツールに着目しリスクを損失余命という物差しの上に並べて比較するという斬新でかつ判り易い手法で、住民が先鋭化したリスクという言葉に対し悲嘆にくれ、葛藤している状況を改善してきた実績があります。さらに専門的な予備知識を必要としない感覚として理解しやすいツールであるいえます。
日本人からこのような発想が生まれ実用書として世に出したことは称賛に値するとともに、数多いる専門家の中から震災直後に、こういった視点での説明が出来る人材が、今まで現れなかったことは残念に思います。
この損失余命という物差しは、ベネフィットやトレードオフを過大に喧伝して利益をむさぼる企業も多数ある中、それらに騙されない物差しともなり、また、消費者にとって最大の武器になりうる道具となって行くでしょう。
今後は、その方面寄りからのバッシングが少なからず増える事、また損失余命の偽ツールを使った宣伝をして一儲けといった企業も少なからず出てくることも予想されるでしょう。
著者には、今後もその手のまやかしに負けることなく、この損失余命というツールを健全に発展させ行く著作活動を期待したい。
本書の中身は大変わかりやすく誰にでも読みやすい為、手に取って読んで頂く事が一番誤解が少なくなると考えますので、中身の書評はあえて控えます。
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それで寿命は何秒縮む? Kindle版
健康分野のテーマを評価する際の、「損失余命」という新しいものさしを提示する1冊です。
「損失余命」とは、ある食事や行動をしたとき、どの程度その後の寿命が減るのか、先行するさまざまな研究で積み重ねられてきた発がんなどの健康被害との関係から計算した平均値のこと。
たとえば、喫煙ならば1本12分、毎朝のコーヒーならば1杯20秒、コンビニのフランクフルト1本なら1分14秒の寿命が減るだけのリスクがある、といった感じです。
著者が福島の風評被害対策の講演などを行う中でも、もっとも聴衆の反応がよいリスク提示方法であり、UNSCEAR(原子放射線に関する国連科学委員会)などの国際機関も注目し、放射性物質のリスク説明手段として、損失余命を使う研究を始めているそうです。
この損失余命の考え方に従い、さまざまな食品や習慣で縮む寿命の長さと、その理由を示す1冊です。
「損失余命」とは、ある食事や行動をしたとき、どの程度その後の寿命が減るのか、先行するさまざまな研究で積み重ねられてきた発がんなどの健康被害との関係から計算した平均値のこと。
たとえば、喫煙ならば1本12分、毎朝のコーヒーならば1杯20秒、コンビニのフランクフルト1本なら1分14秒の寿命が減るだけのリスクがある、といった感じです。
著者が福島の風評被害対策の講演などを行う中でも、もっとも聴衆の反応がよいリスク提示方法であり、UNSCEAR(原子放射線に関する国連科学委員会)などの国際機関も注目し、放射性物質のリスク説明手段として、損失余命を使う研究を始めているそうです。
この損失余命の考え方に従い、さまざまな食品や習慣で縮む寿命の長さと、その理由を示す1冊です。
- 言語日本語
- 出版社すばる舎
- 発売日2016/9/17
- ファイルサイズ41083 KB
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商品の説明
出版社からのコメント
筆者は原発事故の直接の被災者であり、体を張って最前線で被災の実態を見届けつつ、科学的な視点だけでなく社会学的な視点も加えて「リスクを避ける工夫」を伝え続けてきました。
そうしたさまざまな取り組みの中で、一般の地域住民の方から意外なほど好評であった政策科学・規制科学のツール「損失余命」の考え方を、一般の読者に初めて伝える1冊です。
そうしたさまざまな取り組みの中で、一般の地域住民の方から意外なほど好評であった政策科学・規制科学のツール「損失余命」の考え方を、一般の読者に初めて伝える1冊です。
著者について
半谷 輝己(はんがい・てるみ)
地域メディエータ
工学修士
BENTON Inc.代表取締役
◎──1962年、福島県双葉町生まれ。
日本大学大学院にて抗生物質の探索と同定を研究。その後、民間企業の研究機関で抗菌剤の合成を研究したのち、脱サラ。福島県葛尾村にて学習塾BENTON SCHOOLを立ち上げ、田村市船引町の駅前再開発を担う。
原発事故後は、科学的な専門知識を地域住民へとわかりやすく伝える「地域メディエータ」として、「たむらと子どもたちの未来を考える会(AFTC)」副代表、NPO放射線安全フォーラム会員、伊達市放射能健康相談窓口相談員、東京大学科学技術インタープリター養成プログラム招待講師などを歴任。数多くの講演会や勉強会、ツイッターなどSNSでの情報提供、メディアへの寄稿などを通じて、故郷・福島の再生と復興のために尽力中。
2016年、BENTON SCHOOL東京・荒川校を設立。
著書に、ペンネームの半井紅太郎の名で執筆した自伝的小説『ベントン先生のチョコボール』(朝日新聞出版)がある。
地域メディエータ
工学修士
BENTON Inc.代表取締役
◎──1962年、福島県双葉町生まれ。
日本大学大学院にて抗生物質の探索と同定を研究。その後、民間企業の研究機関で抗菌剤の合成を研究したのち、脱サラ。福島県葛尾村にて学習塾BENTON SCHOOLを立ち上げ、田村市船引町の駅前再開発を担う。
原発事故後は、科学的な専門知識を地域住民へとわかりやすく伝える「地域メディエータ」として、「たむらと子どもたちの未来を考える会(AFTC)」副代表、NPO放射線安全フォーラム会員、伊達市放射能健康相談窓口相談員、東京大学科学技術インタープリター養成プログラム招待講師などを歴任。数多くの講演会や勉強会、ツイッターなどSNSでの情報提供、メディアへの寄稿などを通じて、故郷・福島の再生と復興のために尽力中。
2016年、BENTON SCHOOL東京・荒川校を設立。
著書に、ペンネームの半井紅太郎の名で執筆した自伝的小説『ベントン先生のチョコボール』(朝日新聞出版)がある。
登録情報
- ASIN : B01LXWZ1EW
- 出版社 : すばる舎 (2016/9/17)
- 発売日 : 2016/9/17
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 41083 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 231ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 331,168位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 8,851位医学・薬学
- - 26,806位科学・テクノロジー (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年9月26日に日本でレビュー済み
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31人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2017年1月26日に日本でレビュー済み
「損失余命」という切り口が良い。
一般的な食材や「運転」「肥満」といった身近な題材を一つ一つ例にあげて説明していくスタイルも良い。
東京電力福島第一原発事故で放出された放射性物質について言及する部分もあるが、本書の核心的部分とは言えない。
放射性物質についての記述も安全寄りに盛った記述とは言えない。
学会国際機関で主流となっている意見を基にした保守的で妥当なもの。
本書のような「楽しい読み物」の書評らんに、目を三角にして激しい言葉を書き込むような人は、少し冷静になった方が良いと思う。
一般的な食材や「運転」「肥満」といった身近な題材を一つ一つ例にあげて説明していくスタイルも良い。
東京電力福島第一原発事故で放出された放射性物質について言及する部分もあるが、本書の核心的部分とは言えない。
放射性物質についての記述も安全寄りに盛った記述とは言えない。
学会国際機関で主流となっている意見を基にした保守的で妥当なもの。
本書のような「楽しい読み物」の書評らんに、目を三角にして激しい言葉を書き込むような人は、少し冷静になった方が良いと思う。
2017年1月10日に日本でレビュー済み
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あらゆるリスクを余命損失という数字に一元化する試みは面白いと思いましたが、数字の根拠を見ていくと客観性には疑問も残りました
たとえば、ひじきの煮物小鉢一杯58分は衝撃的ですが、なぜか水戻しをしないで乾燥ひじきをそのまま煮た場合という通常の調理法とは異なる場合の値しか載っていません。
たばこについては、一本あたりの損失余命が上げられていますが、お酒については一生での値しか載っておらず、逆にお酒については、損失余命以外にストレス解消になるなど複数のメリットが挙げられていますが、たばこについてはメリットが一つもあげられていません。(本文の記述から著者はお酒を嗜むことは分かります。ちなみに私もたばこは吸いませんがお酒は嗜みます。)
遺伝子改良食品については、安全性検査を受けているとの根拠だけからリスクはほぼ0と主張していますし、また、残留農薬や食品添加物については、「当てずっぽうの推計で計算根拠も何もない」と本文では言いつつ大きな字で「ほぼ0秒~最大10秒」として、小さな字で「(予想値)」と付け加えています。根拠もなく当てずっぽうなら無理に書かない方がいいのでは?
このように食品や嗜好品だけ見ても、根拠なるデータが取り上げられたり取り上げられなかったりしていますし、根拠がない数字も根拠がある数字と(項目として)同列に扱われているので、誤解を招く危険性が低くはない本だと判断しました。
それでも、あらゆるリスクを同列に数値化するという試み自体は評価できると思います。
たとえば、ひじきの煮物小鉢一杯58分は衝撃的ですが、なぜか水戻しをしないで乾燥ひじきをそのまま煮た場合という通常の調理法とは異なる場合の値しか載っていません。
たばこについては、一本あたりの損失余命が上げられていますが、お酒については一生での値しか載っておらず、逆にお酒については、損失余命以外にストレス解消になるなど複数のメリットが挙げられていますが、たばこについてはメリットが一つもあげられていません。(本文の記述から著者はお酒を嗜むことは分かります。ちなみに私もたばこは吸いませんがお酒は嗜みます。)
遺伝子改良食品については、安全性検査を受けているとの根拠だけからリスクはほぼ0と主張していますし、また、残留農薬や食品添加物については、「当てずっぽうの推計で計算根拠も何もない」と本文では言いつつ大きな字で「ほぼ0秒~最大10秒」として、小さな字で「(予想値)」と付け加えています。根拠もなく当てずっぽうなら無理に書かない方がいいのでは?
このように食品や嗜好品だけ見ても、根拠なるデータが取り上げられたり取り上げられなかったりしていますし、根拠がない数字も根拠がある数字と(項目として)同列に扱われているので、誤解を招く危険性が低くはない本だと判断しました。
それでも、あらゆるリスクを同列に数値化するという試み自体は評価できると思います。
2016年9月19日に日本でレビュー済み
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身の回りのリスクを過剰なまでに煽る人々がいる。
今、話題になっている豊洲市場移転問題でいえば、共産党都議が地下ピットに溜まっている水の水質検査をして、「環境基準値の4割のヒ素が検出された」と騒いだが、それに対して、「環境基準値以下じゃないか」「その水で魚や野菜を洗うのか」「ミネラルウォーターとほぼ同じ濃度だ」との反論が出て、ネット上で都議らは笑いものになっている。福島の原発事故のあとに見た光景が、いままた豊洲移転問題でデジャブのように繰り返されている。
特定のリスクを煽り立てる人々は、(政治的な意図がないと仮定すれば)そのリスクがどの程度のものかを判断する“ものさし”をもっていない。いや、正確に言えば、“感情”というものさししかもっていないのだ。世間の多くの人々も、同様にものさしがないから、感情に訴えられて、そして騙される。
本書の目的は、我々の身の回りにあるさまざまなリスクを「損失余命」というものさしで比較し、リスクの大きさを判断できるようにすることにある。タバコ1本吸うと寿命は12分縮み(1箱20本で4時間)、コーヒー1杯飲むと20秒縮むという。遺伝子組み換え作物は? 加工肉は? 自動車の運転は? PET検査は? 福島県伊達市に住むことは? 福島県産の野生きのこは? と、それぞれのリスクを損失余命で表現している。無機ヒ素に関していえば、豊洲の地下水を気にするよりは、白米やヒジキを気にしたほうがいい。お茶碗1杯のごはんを食べると39秒(一週間で18分)、ヒジキの煮物は小鉢一人前で58分、寿命が短くなる計算だという。
では、こうしたリスクをすべて避ければ長生きできるのかといえば、否である。ゼロリスクを追い求めれば、必ず別のリスクを呼び込むからだ。人はモノを食べずに生きてはいけないし、偏食は肥満や疾病を招く。
寿命を縮めるリスクがある一方で、日本人の平均寿命は医療の進歩などで、約12年で1歳ずつ伸びているという。つまり、プラマイで判断するべきで、何を避け、何を許容するかは自分で考えればいい。本書はその手引きとなるだろう。
この手の本にはトンデモが多々あるが、見分けるポイントは、「単位が正確であること」と「数字の出典が明記されていること」である。その意味で、本書はちゃんとした本の部類に入る。
今、話題になっている豊洲市場移転問題でいえば、共産党都議が地下ピットに溜まっている水の水質検査をして、「環境基準値の4割のヒ素が検出された」と騒いだが、それに対して、「環境基準値以下じゃないか」「その水で魚や野菜を洗うのか」「ミネラルウォーターとほぼ同じ濃度だ」との反論が出て、ネット上で都議らは笑いものになっている。福島の原発事故のあとに見た光景が、いままた豊洲移転問題でデジャブのように繰り返されている。
特定のリスクを煽り立てる人々は、(政治的な意図がないと仮定すれば)そのリスクがどの程度のものかを判断する“ものさし”をもっていない。いや、正確に言えば、“感情”というものさししかもっていないのだ。世間の多くの人々も、同様にものさしがないから、感情に訴えられて、そして騙される。
本書の目的は、我々の身の回りにあるさまざまなリスクを「損失余命」というものさしで比較し、リスクの大きさを判断できるようにすることにある。タバコ1本吸うと寿命は12分縮み(1箱20本で4時間)、コーヒー1杯飲むと20秒縮むという。遺伝子組み換え作物は? 加工肉は? 自動車の運転は? PET検査は? 福島県伊達市に住むことは? 福島県産の野生きのこは? と、それぞれのリスクを損失余命で表現している。無機ヒ素に関していえば、豊洲の地下水を気にするよりは、白米やヒジキを気にしたほうがいい。お茶碗1杯のごはんを食べると39秒(一週間で18分)、ヒジキの煮物は小鉢一人前で58分、寿命が短くなる計算だという。
では、こうしたリスクをすべて避ければ長生きできるのかといえば、否である。ゼロリスクを追い求めれば、必ず別のリスクを呼び込むからだ。人はモノを食べずに生きてはいけないし、偏食は肥満や疾病を招く。
寿命を縮めるリスクがある一方で、日本人の平均寿命は医療の進歩などで、約12年で1歳ずつ伸びているという。つまり、プラマイで判断するべきで、何を避け、何を許容するかは自分で考えればいい。本書はその手引きとなるだろう。
この手の本にはトンデモが多々あるが、見分けるポイントは、「単位が正確であること」と「数字の出典が明記されていること」である。その意味で、本書はちゃんとした本の部類に入る。
2019年12月9日に日本でレビュー済み
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当方、診療放射線技師です。
他のリスクについては分かりかねますが、放射線のリスクの算出方法についてはかなり疑問が残ります。
基本的に100mSv以上では発がんのリスクが放射線量に比例して多くなることが分かっていますが、それ以下では発がん以外の影響はまず出ないし、発がんの影響すらどの程度あるのか分かっていません。リスクがあるかどうか、あったとしてもその影響が小さすぎて検出することはできないのが現状です。ICRP(国際放射線防護委員会)もこの領域についての結論は当分出ないだろうとしています。
しかし、この本では少ない線量でも、あたかも実際に影響が出るかのように書かれています。その計算方法を簡単に説明すると、100mSv以上の被ばくで0.5%の人が致死性の癌になるとされていますが、それ未満の線量でも同様の確率で影響があるとして計算されています(10mSvでは0.05%、1mSvでは0.005%が致死性の癌になる、といった具合です)。ちなみに、このリスク係数を提示しているICRP自身も、科学的根拠が不足しているため100mSv未満では実際に起こる影響として計算してはならないと警告しています。
本来、放射線による損失余命は「100mSv未満の放射線は人体に影響を及ぼすか不明だが影響がないとも言い切れないために、放射線を用いる時はこれくらいのリスクがあると仮定して管理しよう」という前提の下でのみ使用されるべきものであり、このようにあたかも個人の寿命が縮むかのような書き方は、読者に誤解を招く恐れがあると思いました。CT検査によって発がん率が3.2%上昇したという論文も紹介されていますが、この論文もICRPが推奨しない方法でリスク係数を用いて発がん者数を計算しており、各関連学会に波紋を呼んだかなり問題のある論文です。著者は放射線の専門家でもないし、地域メディエータというのも資格でも何でもありませんので、その辺の放射線の知識は乏しいのかと察します。これを読んで、「少しの被ばくでも自分の寿命が縮んでいく」と思う方がおられたら、そんなことはないことを知っていて頂きたいと思い、レビューを書きました。
ちなみに、ある対象について損失余命を考える時、必ず獲得余命(寿命を延ばす効果)をセットで考慮に入れなければなりません。胃透視のバリウム検査では損失余命は30時間程度とされていますが、参考にされている飯沼先生の論文によると、獲得余命は男性で160日とされています。これほど損失余命について言及されているのに、そこに関して触れられていないことも甚だ疑問です。
他のリスクについては分かりかねますが、放射線のリスクの算出方法についてはかなり疑問が残ります。
基本的に100mSv以上では発がんのリスクが放射線量に比例して多くなることが分かっていますが、それ以下では発がん以外の影響はまず出ないし、発がんの影響すらどの程度あるのか分かっていません。リスクがあるかどうか、あったとしてもその影響が小さすぎて検出することはできないのが現状です。ICRP(国際放射線防護委員会)もこの領域についての結論は当分出ないだろうとしています。
しかし、この本では少ない線量でも、あたかも実際に影響が出るかのように書かれています。その計算方法を簡単に説明すると、100mSv以上の被ばくで0.5%の人が致死性の癌になるとされていますが、それ未満の線量でも同様の確率で影響があるとして計算されています(10mSvでは0.05%、1mSvでは0.005%が致死性の癌になる、といった具合です)。ちなみに、このリスク係数を提示しているICRP自身も、科学的根拠が不足しているため100mSv未満では実際に起こる影響として計算してはならないと警告しています。
本来、放射線による損失余命は「100mSv未満の放射線は人体に影響を及ぼすか不明だが影響がないとも言い切れないために、放射線を用いる時はこれくらいのリスクがあると仮定して管理しよう」という前提の下でのみ使用されるべきものであり、このようにあたかも個人の寿命が縮むかのような書き方は、読者に誤解を招く恐れがあると思いました。CT検査によって発がん率が3.2%上昇したという論文も紹介されていますが、この論文もICRPが推奨しない方法でリスク係数を用いて発がん者数を計算しており、各関連学会に波紋を呼んだかなり問題のある論文です。著者は放射線の専門家でもないし、地域メディエータというのも資格でも何でもありませんので、その辺の放射線の知識は乏しいのかと察します。これを読んで、「少しの被ばくでも自分の寿命が縮んでいく」と思う方がおられたら、そんなことはないことを知っていて頂きたいと思い、レビューを書きました。
ちなみに、ある対象について損失余命を考える時、必ず獲得余命(寿命を延ばす効果)をセットで考慮に入れなければなりません。胃透視のバリウム検査では損失余命は30時間程度とされていますが、参考にされている飯沼先生の論文によると、獲得余命は男性で160日とされています。これほど損失余命について言及されているのに、そこに関して触れられていないことも甚だ疑問です。
2021年7月25日に日本でレビュー済み
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それなりに面白くはあったけど覚えようとは思わないです(=w=)
2016年12月6日に日本でレビュー済み
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○○は危険だ!リスクがある!と言われても、その危険の中身は痛みだったり苦しさだったり、病気だったり或いは命に触るなどなど様々です。
この本は食べ物や嗜好品、日常生活の行動に関わるリスクを、「失われる寿命」という一種類の時間に置き換えて紹介してくれています。
個々のリスクを感覚的に把握できるばかりでなく、それぞれのリスクを簡単に比較できるのが特徴的ではないでしょうか。
リスクは時間で表現されていますので、リスクがあるとしてもそれをメリットと比較して受け入れるかどうかの判断もしやすいです。
多くの人、特にお母さんや学生・生徒さんにに読んでもらいたい本だと思いました。
この本は食べ物や嗜好品、日常生活の行動に関わるリスクを、「失われる寿命」という一種類の時間に置き換えて紹介してくれています。
個々のリスクを感覚的に把握できるばかりでなく、それぞれのリスクを簡単に比較できるのが特徴的ではないでしょうか。
リスクは時間で表現されていますので、リスクがあるとしてもそれをメリットと比較して受け入れるかどうかの判断もしやすいです。
多くの人、特にお母さんや学生・生徒さんにに読んでもらいたい本だと思いました。
2016年10月18日に日本でレビュー済み
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食べ物やタバコ,放射線といった身近な「リスク」に対して,「損失寿命」という一つのものさしを使って比較した,意欲的(人によっては挑戦的?)な著作です。
食べ物のリスクを事さらに強調する論調は以前から存在していましたが,福島原発事故以降,それが顕著になってしまった感があります。
この本にも書かれてているとおり,「安全」と「安心」は別物,「安心」はその人の心の問題ですので,話は単純なものではないのですが,いま一度立ち止まって冷静にこの本を読まれることが,身の回りの「安全」について再評価し,「安心」につなげていくことができるものだと思います。
危険だ,危ない,と巷で言われ,そう信じてきたものがさほど大きなリスクではなく,別のもの,体に良いと思って食べていたものが非常に大きなリスクとして示されていて戸惑うかもしれませんが,それが真実です。
必ずしも読まれた方の意見とは合わないかもしれません。反発を覚えるかもしれませんが,そんなときこそ冷静に読み返し,一つ一つを検証していくことで心の「安全」につながっていくのではないでしょうか?
食べ物のリスクを事さらに強調する論調は以前から存在していましたが,福島原発事故以降,それが顕著になってしまった感があります。
この本にも書かれてているとおり,「安全」と「安心」は別物,「安心」はその人の心の問題ですので,話は単純なものではないのですが,いま一度立ち止まって冷静にこの本を読まれることが,身の回りの「安全」について再評価し,「安心」につなげていくことができるものだと思います。
危険だ,危ない,と巷で言われ,そう信じてきたものがさほど大きなリスクではなく,別のもの,体に良いと思って食べていたものが非常に大きなリスクとして示されていて戸惑うかもしれませんが,それが真実です。
必ずしも読まれた方の意見とは合わないかもしれません。反発を覚えるかもしれませんが,そんなときこそ冷静に読み返し,一つ一つを検証していくことで心の「安全」につながっていくのではないでしょうか?