タイムリーな企画で興味深い事柄が分かり易く解説されている。
ここでは、従来型と量子それぞれの特徴及び組み合わせに絞る。
世の中のすべてのものは、量子力学に従って動いている。だが、量子力学がわかったと思っているうちは、量子力学がわかっていない。(ファインマン)
量子コンピュータの効率は、「重ね合わせ」を利用する。
具体的には、「0」、「1」の重ね合わせ状態をとる「量子」ビットを使ってする計算装置である。
その、アイディアや要素技術は日本で開発されたものが多い。
数年前、カナダのD-Waveが商用の量子コンピュータの発売を開始した。
それは、「量子アニーリング(焼きなまし)方式」を使い計算を行う。
紙と鉛筆で西森は、スピングラスの対称性に関する端正な理論を打ち立て、大関もそれを発展させてスピングラスの相転移に関する理論を作り出した。それは、回りまわって現在の量子アニーリングの一大潮流を生み出している。
量子アニーリングは、人工知能の実現に欠かせない「機械学習」の進化の引き金を引くかもしれない。
量子アニーリングは、相互作用は予めわかっていて最適化問題の解が知りたかった。ところが、機械学習では逆で解はわかっていて、その解を導き出す相互作用を知りたいのである。相互作用で繋がるのである。
また、ディープラーニング(深層学習)を行う上で必要となるサンプリングにも有用であることも解かってきた。
量子コンピュータは、厖大な開発コストがかかるため現在の汎用コンピュータではとても出来ない、特殊な大規模計算だけを託すのが正しい。なので、従来型コンピュータと量子コンピュータは、長い期間に亘り共存するであろう。
特殊な目的とは、「組み合わせ最適化問題」やサンプリングを解くというものである。それらは、機械学習にも活用できる。
しかもそれらは、従来型コンピュータの苦手とするところでもある。
B=Waveは、コンピュータというより「実験装置」である。
それは、金属をゆっくり冷やしていくと構造が安定するという「焼きなまし」=アニーリングをつかっている。
従来型は、演算を繰り返して答えを得られるが、量子アニーリング方式では相互作用を設定し横磁場をかけ、弱めていくだけで答えが見つかる。
最適化問題は、最低エネルギー状態(基底状態)を探す問題と見ることができる。
量子力学の世界の現象をそのまま利用する。量子トンネル効果も利用する。
まさに自然が、答えを見つけるのである。
自ら開拓された分野であり非常に解り易く索引もある。
アメリカの懐の深さも解かる。
資源に恵まれず、その変わり人材に投資してきた国として、今後何が起こるか解らない分野であるので、外に出てみよう、横にすり抜けてみよう。アイディアを重ね合わせるところから始めようと言っておられる。
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量子コンピュータが人工知能を加速する Kindle版
「これは日本人研究者によるノーベル賞級の発見だ!」
元グーグル日本法人社長 村上憲郎
実現は早くても21世紀後半と言われていた「量子コンピュータ」が突然、商用マシンとして販売が開始された。
作ったのはカナダのメーカーだが、その原理を考え出したのは日本人研究者。
しかも、人工知能に応用でき、グーグルやアメリカ政府も開発競争に参戦、NASAやロッキード・マーティンも活用を開始した。
どのようにして量子力学で計算するのか。
どのようにして人工知能、特に機械学習やディープラーニングに応用できるのか。
そして、どうすれば日本の研究が世界をリードできるか。
画期的な量子コンピュータの計算原理、「量子アニーリング」を発案した本人が語る。
元グーグル日本法人社長 村上憲郎
実現は早くても21世紀後半と言われていた「量子コンピュータ」が突然、商用マシンとして販売が開始された。
作ったのはカナダのメーカーだが、その原理を考え出したのは日本人研究者。
しかも、人工知能に応用でき、グーグルやアメリカ政府も開発競争に参戦、NASAやロッキード・マーティンも活用を開始した。
どのようにして量子力学で計算するのか。
どのようにして人工知能、特に機械学習やディープラーニングに応用できるのか。
そして、どうすれば日本の研究が世界をリードできるか。
画期的な量子コンピュータの計算原理、「量子アニーリング」を発案した本人が語る。
- 言語日本語
- 出版社日経BP
- 発売日2016/12/9
- ファイルサイズ6311 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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商品の説明
著者について
西森秀稔(にしもり・ひでとし)
東京工業大学理学院教授
1954年高知生まれ。1977年、東京大学理学部物理学科を卒業。1981年、カーネギーメロン大学で博士研究員となる。1982年、東京大学大学院博士課程を修了し理学博士を取得、ラトガース大学博士研究員に着任。
1990年、東京工業大学理学部物理学科の助教授に就任。1996年より現職。1990年に日本IBM科学賞、2006年に仁科記念賞を受賞。
著書に『スピングラス理論と情報統計力学』(岩波書店)、『相転移・臨界現象の統計物理学』(培風館)、『物理数学II ―フーリエ解析とラプラス解析・偏微分方程式・特殊関数』(丸善出版)、
『Statistical Physics of Spin Glasses and Information Processing: An Introduction』(Oxford University Press)、共著『Elements of Phase Transitions and Critical Phenomena』(Oxford University Press)など。
大関真之(おおぜき・まさゆき)
東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻准教授
1982年東京生まれ。2008年、東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻博士課程早期修了。東京工業大学産学官連携研究員として量子アニーリングの研究に従事したのち、ローマ大学物理学科研究員、
京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻助教を経て、2016年10月から現職。2012年に第6回日本物理学会若手奨励賞、2016年に平成28年度文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。
著書に『機械学習入門 ボルツマン機械学習から深層学習まで』(オーム社)がある。
東京工業大学理学院教授
1954年高知生まれ。1977年、東京大学理学部物理学科を卒業。1981年、カーネギーメロン大学で博士研究員となる。1982年、東京大学大学院博士課程を修了し理学博士を取得、ラトガース大学博士研究員に着任。
1990年、東京工業大学理学部物理学科の助教授に就任。1996年より現職。1990年に日本IBM科学賞、2006年に仁科記念賞を受賞。
著書に『スピングラス理論と情報統計力学』(岩波書店)、『相転移・臨界現象の統計物理学』(培風館)、『物理数学II ―フーリエ解析とラプラス解析・偏微分方程式・特殊関数』(丸善出版)、
『Statistical Physics of Spin Glasses and Information Processing: An Introduction』(Oxford University Press)、共著『Elements of Phase Transitions and Critical Phenomena』(Oxford University Press)など。
大関真之(おおぜき・まさゆき)
東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻准教授
1982年東京生まれ。2008年、東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻博士課程早期修了。東京工業大学産学官連携研究員として量子アニーリングの研究に従事したのち、ローマ大学物理学科研究員、
京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻助教を経て、2016年10月から現職。2012年に第6回日本物理学会若手奨励賞、2016年に平成28年度文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。
著書に『機械学習入門 ボルツマン機械学習から深層学習まで』(オーム社)がある。
登録情報
- ASIN : B01MRWW1PD
- 出版社 : 日経BP (2016/12/9)
- 発売日 : 2016/12/9
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 6311 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 151ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 189,033位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 507位物理学 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1982年、東京生まれ。
2000年私立高輪高等学校卒業、2004年東京工業大学理学部物理学科卒業
2008年東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻博士課程早期修了(学位:博士(理学))
東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻 産学官連携研究員、
京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻 助教、
ローマ大学物理学科 研究員を経て、
2016年10月より東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻 准教授
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2016年12月29日に日本でレビュー済み
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2018年2月9日に日本でレビュー済み
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どういうものかは分かった積りですが内容まで理解する能力はなかった。
仕組みが知りたかったがその前提となる知識がなかったため。
仕組みが知りたかったがその前提となる知識がなかったため。
2017年9月29日に日本でレビュー済み
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人文科学とともに、科学や数学の啓蒙書も時々読んでみたくなる。
科学や数学の系統的な学習は、高2でほぼ終了している。
若い頃から、コンピュータの技術には関心があったので「量子コンピュータ」という言葉は知っていた。
量子コンピュータの啓蒙書として読むのは、1冊目だ。
最近では、こうした最先端の科学啓蒙書を日本語で読める有り難さと重要性を強く自覚している。
この種の啓蒙書で重要なのは、読んだ者を何となく分かった気にさせてくれることと読後の満足感だ。
本書でも「量子力学とは何か」という項があり、「シュレーディンガーの猫」や「不確定性原理」が紹介されいて、よいことだと思う。
子どもの頃、相対性理論の啓蒙書(確かブルーバックス)を読んで、とても驚き好奇心を刺激されたことを覚えている。その後読んだ「量子力学」の啓蒙書にも驚嘆した。その頃、UFO、心霊、超能力に夢中になっていたが、正当な科学分野でも、驚きに満ちた世界があるのだということを知った。
ただ、「量子力学」の啓蒙書の中には、分かりにくいものもある。読み手と書き手のどちらが問題なのか。最近は図々しくなったので、普通の理解力あって理解できないのは書き手や作り手の側に問題があることにしている。
例えば、カタカナ語の扱いである。素粒子関連の言葉など、クォーク、フェルミオン、レプトン、バリオン、ハドロン、ニュートリノ、ボソン、ゲージ、ヒッグス、グラビトン、タキオン等々、何の説明も概念図の掲載もなく、地の文でずらずらと出てくると、理解しようとする思考が途切れてストレスとなってしまう。何が上位概念で何が下位概念か、重なり合う概念は何と何かなど、読者に余計な思考を強いることになる。結局何冊か手にして、わかりやすい図表に出会って疑問が氷解し理解が進んだ。
この時考えたのは、欧米人はギリシア語やラテン語の知識や音の響きなどで、これらの語が、すっと頭に入り、定着するのだろうかということであった。また、中国語では、どのように訳されているのかも知りたくなったものだ。
いずれにしても、普段英語や数学を使わないで暮らしているが、知りたいという知的好奇心旺盛な多くの日本語話者に応えるような編集が重要であると思う。
本書では、はしがきの冒頭に読み手を意識した記述がある。
「本書を手に取った方は、「量子コンピュータ」に興味があるのだろうか、それとも「人工知能」に興味があるのだろうか、もしくは両方だろうか?」と。
それに答えるとすると、もう一つ加えて「科学を解説する日本語に興味がある」と。
本書の題名『量子コンピュータが人工知能を加速する』は、漢字、カタカナ、ひらがなのバランスがよく、素直でよい題名だと思う。小学校で習う漢字だし、漢語も造語もイメージしやすい、小学校の高学年なら、「人工知能」も「加速」もほぼ読めてイメージできるだろう。一般の大人でも、「量子」は読めても説明はできないかもしれないが、自分達の使っているコンピュータとは違うのかなということはイメージできる。
「量子コンピュータ」という漢語とカナとを合わせて造語できることが日本語の優れた点だ。
マーカーを手にして、ポイントとなる言葉、文章などを気にとめながら一気に読んだ。少し引っかかった所や止まって少し考えた所は後で記載する。活字も大きく内容も絞り込んであったので読みやすかった。何となく分かった気にさせてくれたので満足感も大きい。何よりも「量子アニーリング」理論の考案者が著者であることが嬉しい。
この「量子アニーリング」という言葉は、2ページ目に初めて出てくる。本書の核心であるので、この語の解説は小出しにしている感がある。アニーさんのリング?アニーさんの輪っか?
読後に気がついたのだが、英語の(副)題が表紙に載っていた。「Quantum Annealer Accelerates Artificial Intelligence」。アニールか。アニールなら聞いたことがあるぞ。光学レンズに興味があったので本で読んだこともある。製作の過程でアニールがあることを思い出した。
ポートフォリオ!アルゴリズム!。株やソフトウェアに馴染みのない人、子どもにはわからないかもしれない。ポートフォリオ(資産構成?)、アルゴリズム(算法?)と括弧書きで漢語を載せてくれたら親切なのにと思って読み進めていたら、本書でもそのように配慮していた語があった。ディープラーニング(深層学習)。シンギュラリティ(技術的特異点)。
その他、ストレスに感じたカタカナ語は「コヒーレンス時間」。この語は技術的に重要な語であるらしいので(可干渉性?)の併記があってもよいかもしれない。「キメラグラフ」(p.54)のキメラって生物学に出てくるあのキメラ?。「クラスタリング」(p.87)のクラスタって、クラスタ爆弾のクラスタのこと?など。
反対に理解を進める上でよい漢語の使用もあった。①組み合わせ「最適化問題」②「厳密解」③「近似解」など。
以前(20年位前?)、「フェルマーの最終定理」が解けたということが話題となった。その時、何がすごいのか知りたいと思った。最初の啓蒙書は駄目だった。2冊目は確か厚めの文庫本で、最終定理を解く鍵となる先行研究やなぜフェルマーの最終定理と関連するのかが丁寧に説明されていてよく理解できた。
本書でも先行する理論や技術の説明があり、「ムーアの法則」がどのように越えられようとしているのかが理解できた。また、掲載されている図などが理解の手助けとなる。個人的には「量子ビットに「横磁場」をかける」の項の図(p.34)がよかった。
数学が得意な人はp.134の「ハイゼンベルグの不等式」や「小澤の不等式」を、物理が得意な人はp.136 の図を、技術に関心がある人はp.142の図を、理解しようとするに違いない。
それにしても、「量子コンピュータ」の最初の提唱者であるファインマンの「世の中の全てのものは量子力学に従って動いているのだから、量子力学の原理をうまく使って動くコンピュータを作れば、いろいろなシミュレーションが効率よくできるはずだ」(p.45)という発想は、やはり天才的だ。
そして「量子アニーリング」という理論を打ち立てた著者たち、実際に商用の「量子コンピュータ」を完成させてしまったベンチャー企業の人たち、凡人には人智を越えているようにさえ思える。ノーベル賞級の成果であることは間違いない。もし投資家だったら、量子コンピュータの可能性に賭けてみたい。
最近、今後日本でノーベル賞受賞者が出なくなるのではないか、論文数が伸び悩んでいるという懸念がニュースになっていた。
確かに問題であろう。ただ研究環境は制度とお金と時間の問題だから、その気になれば改善できる。
同時に大切なのは、研究や研究者を大切にするという文化である。日本人は好奇心が旺盛な民族であると思う。裾野を大切にする意味でも科学ジャーナリズムの役割は大きい。
しかし拙速に慌てる必要はない。
日本には「日本語」と「漢字」と「科学啓蒙の出版文化」があるからだ。
ブルーバックスの第1作目は『人工頭脳時代』(1963年)であった。きっとこの本を読んでコンピュータ科学を志した人がいるに違いない。
本書についても、日本のどこかで子どもが手にしているはずだ。そして、その中から将来の科学者が生まれることを願っている。科学に興味のありそうな子どもがいる家庭では、まず親が読んでみて何気なくテーブルに置いておくのもよいかもしれない。
科学や数学の系統的な学習は、高2でほぼ終了している。
若い頃から、コンピュータの技術には関心があったので「量子コンピュータ」という言葉は知っていた。
量子コンピュータの啓蒙書として読むのは、1冊目だ。
最近では、こうした最先端の科学啓蒙書を日本語で読める有り難さと重要性を強く自覚している。
この種の啓蒙書で重要なのは、読んだ者を何となく分かった気にさせてくれることと読後の満足感だ。
本書でも「量子力学とは何か」という項があり、「シュレーディンガーの猫」や「不確定性原理」が紹介されいて、よいことだと思う。
子どもの頃、相対性理論の啓蒙書(確かブルーバックス)を読んで、とても驚き好奇心を刺激されたことを覚えている。その後読んだ「量子力学」の啓蒙書にも驚嘆した。その頃、UFO、心霊、超能力に夢中になっていたが、正当な科学分野でも、驚きに満ちた世界があるのだということを知った。
ただ、「量子力学」の啓蒙書の中には、分かりにくいものもある。読み手と書き手のどちらが問題なのか。最近は図々しくなったので、普通の理解力あって理解できないのは書き手や作り手の側に問題があることにしている。
例えば、カタカナ語の扱いである。素粒子関連の言葉など、クォーク、フェルミオン、レプトン、バリオン、ハドロン、ニュートリノ、ボソン、ゲージ、ヒッグス、グラビトン、タキオン等々、何の説明も概念図の掲載もなく、地の文でずらずらと出てくると、理解しようとする思考が途切れてストレスとなってしまう。何が上位概念で何が下位概念か、重なり合う概念は何と何かなど、読者に余計な思考を強いることになる。結局何冊か手にして、わかりやすい図表に出会って疑問が氷解し理解が進んだ。
この時考えたのは、欧米人はギリシア語やラテン語の知識や音の響きなどで、これらの語が、すっと頭に入り、定着するのだろうかということであった。また、中国語では、どのように訳されているのかも知りたくなったものだ。
いずれにしても、普段英語や数学を使わないで暮らしているが、知りたいという知的好奇心旺盛な多くの日本語話者に応えるような編集が重要であると思う。
本書では、はしがきの冒頭に読み手を意識した記述がある。
「本書を手に取った方は、「量子コンピュータ」に興味があるのだろうか、それとも「人工知能」に興味があるのだろうか、もしくは両方だろうか?」と。
それに答えるとすると、もう一つ加えて「科学を解説する日本語に興味がある」と。
本書の題名『量子コンピュータが人工知能を加速する』は、漢字、カタカナ、ひらがなのバランスがよく、素直でよい題名だと思う。小学校で習う漢字だし、漢語も造語もイメージしやすい、小学校の高学年なら、「人工知能」も「加速」もほぼ読めてイメージできるだろう。一般の大人でも、「量子」は読めても説明はできないかもしれないが、自分達の使っているコンピュータとは違うのかなということはイメージできる。
「量子コンピュータ」という漢語とカナとを合わせて造語できることが日本語の優れた点だ。
マーカーを手にして、ポイントとなる言葉、文章などを気にとめながら一気に読んだ。少し引っかかった所や止まって少し考えた所は後で記載する。活字も大きく内容も絞り込んであったので読みやすかった。何となく分かった気にさせてくれたので満足感も大きい。何よりも「量子アニーリング」理論の考案者が著者であることが嬉しい。
この「量子アニーリング」という言葉は、2ページ目に初めて出てくる。本書の核心であるので、この語の解説は小出しにしている感がある。アニーさんのリング?アニーさんの輪っか?
読後に気がついたのだが、英語の(副)題が表紙に載っていた。「Quantum Annealer Accelerates Artificial Intelligence」。アニールか。アニールなら聞いたことがあるぞ。光学レンズに興味があったので本で読んだこともある。製作の過程でアニールがあることを思い出した。
ポートフォリオ!アルゴリズム!。株やソフトウェアに馴染みのない人、子どもにはわからないかもしれない。ポートフォリオ(資産構成?)、アルゴリズム(算法?)と括弧書きで漢語を載せてくれたら親切なのにと思って読み進めていたら、本書でもそのように配慮していた語があった。ディープラーニング(深層学習)。シンギュラリティ(技術的特異点)。
その他、ストレスに感じたカタカナ語は「コヒーレンス時間」。この語は技術的に重要な語であるらしいので(可干渉性?)の併記があってもよいかもしれない。「キメラグラフ」(p.54)のキメラって生物学に出てくるあのキメラ?。「クラスタリング」(p.87)のクラスタって、クラスタ爆弾のクラスタのこと?など。
反対に理解を進める上でよい漢語の使用もあった。①組み合わせ「最適化問題」②「厳密解」③「近似解」など。
以前(20年位前?)、「フェルマーの最終定理」が解けたということが話題となった。その時、何がすごいのか知りたいと思った。最初の啓蒙書は駄目だった。2冊目は確か厚めの文庫本で、最終定理を解く鍵となる先行研究やなぜフェルマーの最終定理と関連するのかが丁寧に説明されていてよく理解できた。
本書でも先行する理論や技術の説明があり、「ムーアの法則」がどのように越えられようとしているのかが理解できた。また、掲載されている図などが理解の手助けとなる。個人的には「量子ビットに「横磁場」をかける」の項の図(p.34)がよかった。
数学が得意な人はp.134の「ハイゼンベルグの不等式」や「小澤の不等式」を、物理が得意な人はp.136 の図を、技術に関心がある人はp.142の図を、理解しようとするに違いない。
それにしても、「量子コンピュータ」の最初の提唱者であるファインマンの「世の中の全てのものは量子力学に従って動いているのだから、量子力学の原理をうまく使って動くコンピュータを作れば、いろいろなシミュレーションが効率よくできるはずだ」(p.45)という発想は、やはり天才的だ。
そして「量子アニーリング」という理論を打ち立てた著者たち、実際に商用の「量子コンピュータ」を完成させてしまったベンチャー企業の人たち、凡人には人智を越えているようにさえ思える。ノーベル賞級の成果であることは間違いない。もし投資家だったら、量子コンピュータの可能性に賭けてみたい。
最近、今後日本でノーベル賞受賞者が出なくなるのではないか、論文数が伸び悩んでいるという懸念がニュースになっていた。
確かに問題であろう。ただ研究環境は制度とお金と時間の問題だから、その気になれば改善できる。
同時に大切なのは、研究や研究者を大切にするという文化である。日本人は好奇心が旺盛な民族であると思う。裾野を大切にする意味でも科学ジャーナリズムの役割は大きい。
しかし拙速に慌てる必要はない。
日本には「日本語」と「漢字」と「科学啓蒙の出版文化」があるからだ。
ブルーバックスの第1作目は『人工頭脳時代』(1963年)であった。きっとこの本を読んでコンピュータ科学を志した人がいるに違いない。
本書についても、日本のどこかで子どもが手にしているはずだ。そして、その中から将来の科学者が生まれることを願っている。科学に興味のありそうな子どもがいる家庭では、まず親が読んでみて何気なくテーブルに置いておくのもよいかもしれない。
2017年12月6日に日本でレビュー済み
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この書籍は、量子コンピュータの仕組みと概要を簡単に説明したものである。量子コンピュータの基礎である「量子アニーリング」の論文執筆に携わったほどの専門家が著者の一人であることから、内容がまとまっており、読んでいて信頼感がある。
誰にでもわかりやすい内容で端的にまとまっているが、逆に言えば数値流体力学や量子力学で簡単な微分方程式を解いたことがるなら、もうちょっと突っ込んでほしいと思う節はあるかもしれない。親しみやすさの配慮であろうが、数学的なアプローチは省略されていて、どうも、理解できた感にかける。
といっても、不満はない。どこをより深く理解したいのかを知るためにはいい本だと思う。
誰にでもわかりやすい内容で端的にまとまっているが、逆に言えば数値流体力学や量子力学で簡単な微分方程式を解いたことがるなら、もうちょっと突っ込んでほしいと思う節はあるかもしれない。親しみやすさの配慮であろうが、数学的なアプローチは省略されていて、どうも、理解できた感にかける。
といっても、不満はない。どこをより深く理解したいのかを知るためにはいい本だと思う。
2018年1月25日に日本でレビュー済み
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著者は、西森秀稔(ひでとし)東京工業大学教授と大関真之東北大学准教授(人工知能や機械学習の研究者)。両者は量子アニーリング(焼きなまし)に関する論文を1998年に発表している。
量子アニーリング方式を用いて開発されたD-Wave(カナダの会社)の量子コンピュータは、「組み合わせ最適化問題」という特定の問題の解読については従来のコンピュータに比べて1億倍高速である。組み合わせ最適化問題の例としては、宅配便のドライバーの最適ルート(交通渋滞の緩和とエネルギーや時間の節約に寄与)、医薬品の開発(分子構造の分析)などがある。また、人工知能の機械学習の一助になるとみられている。更に、投資の分野では、ポートフォリオ組成への応用が考えられている。
D-Waveマシンは従来のコンピュータと異なり、CPU、メモリー、ハードディスクがなく、実験装置に近い。D-Waveマシンの心臓部は量子ビットを実装する「超電導回路」になる。ニオブという金属で作ったリングを超電導状態にして、そのリング内を走る電流の向きにより量子ビットを実現している。希釈冷凍機で超電導回路を冷やしている。なお、超低温にしなければならないのは小さな部分だけなので、電気消費量はスーパーコンピュータ京と比べて500分の1程度。
D-Waveマシンを導入している企業や研究機関の例は、NASA、グーグル(検索や広告の品質改良とエネルギーの削減目的)、ロッキード・マーティンなど。グーグルは独自の量子アーニングマシンを開発中である。
なお、量子コンピュータ(量子力学的な現象を計算に利用するコンピュータ)には、量子アニーリング方式の他に、量子ゲート方式(汎用的に使用される)があり、それは開発中だが商用化はまだ先とみられている。後者にはIBM、インテル、マイクロソフトなどが取り組んでいる。
人工知能に関しては、大量のデータを学習して画像認識能力が高まりつつあり、腫瘍などを発見することが期待されている。他には法律の大量の判例からの適用、企業への融資判断、古文書解析などが考えられている。
最後には米国では外国から来た研究者が活躍していること、米国の研究者は理論だけでなく応用にも参入していることなどに触れており、読者を鼓舞している。
適度に参考図が入っており、分かりやすい。全体的に役に立つ本である。
量子アニーリング方式を用いて開発されたD-Wave(カナダの会社)の量子コンピュータは、「組み合わせ最適化問題」という特定の問題の解読については従来のコンピュータに比べて1億倍高速である。組み合わせ最適化問題の例としては、宅配便のドライバーの最適ルート(交通渋滞の緩和とエネルギーや時間の節約に寄与)、医薬品の開発(分子構造の分析)などがある。また、人工知能の機械学習の一助になるとみられている。更に、投資の分野では、ポートフォリオ組成への応用が考えられている。
D-Waveマシンは従来のコンピュータと異なり、CPU、メモリー、ハードディスクがなく、実験装置に近い。D-Waveマシンの心臓部は量子ビットを実装する「超電導回路」になる。ニオブという金属で作ったリングを超電導状態にして、そのリング内を走る電流の向きにより量子ビットを実現している。希釈冷凍機で超電導回路を冷やしている。なお、超低温にしなければならないのは小さな部分だけなので、電気消費量はスーパーコンピュータ京と比べて500分の1程度。
D-Waveマシンを導入している企業や研究機関の例は、NASA、グーグル(検索や広告の品質改良とエネルギーの削減目的)、ロッキード・マーティンなど。グーグルは独自の量子アーニングマシンを開発中である。
なお、量子コンピュータ(量子力学的な現象を計算に利用するコンピュータ)には、量子アニーリング方式の他に、量子ゲート方式(汎用的に使用される)があり、それは開発中だが商用化はまだ先とみられている。後者にはIBM、インテル、マイクロソフトなどが取り組んでいる。
人工知能に関しては、大量のデータを学習して画像認識能力が高まりつつあり、腫瘍などを発見することが期待されている。他には法律の大量の判例からの適用、企業への融資判断、古文書解析などが考えられている。
最後には米国では外国から来た研究者が活躍していること、米国の研究者は理論だけでなく応用にも参入していることなどに触れており、読者を鼓舞している。
適度に参考図が入っており、分かりやすい。全体的に役に立つ本である。
2018年1月16日に日本でレビュー済み
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指の滑り、貼りやすさ、下方からのフリック操作などとくに問題ありませんでした。迷って決めたのでホッとしています。