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裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA) Kindle版
仁科鳥子と出逢ったのは〈裏側〉で“あれ”を目にして死にかけていたときだった――その日を境に、くたびれた女子大生・紙越空魚の人生は一変する。「くねくね」や「八尺様」など実話怪談として語られる危険な存在が出現する、この現実と隣合わせで謎だらけの裏世界。研究とお金稼ぎ、そして大切な人を探すため、鳥子と空魚は非日常へと足を踏み入れる――気鋭のエンタメSF作家が贈る、女子ふたり怪異探検サバイバル!
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2017/2/25
- ファイルサイズ1797 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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登録情報
- ASIN : B06WW74Q43
- 出版社 : 早川書房 (2017/2/25)
- 発売日 : 2017/2/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1797 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 266ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 3,115位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年3月17日に日本でレビュー済み
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アニメが先で、原作が後と言う大昔の中学生のは入方みたいな読書体験だった。2ちゃんねるのオカルトのスレッドから、現代怪異譚が描かれた事にちょっと、驚いた。現代の不可思議はネットに眠っているんだ。
2021年11月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
百合好きの間で評判ということでそれを目当てに読み始めたのですが、思いのほかSF冒険小説としても楽しめました。
得体の知れない何かが蔓延る領域での冒険はまんま『S.T.A.L.K.E.R.』や『メイドインアビス』で見た感じがしますし、現実にある都市伝説を作中の理屈に還元する、というやり方も『Steins;Gate』を始めとする科学ADVが好きな人には馴染み深いんじゃないかと思います。
「これ見たことあんな」と思うことが結構ありますが、上述したそれをまとめるところの作中の理屈がちゃんとSFしていてかなり興味深いです。それらを登場人物がガツガツ早口で説明していくのもSFっぽい。SFガチ勢の方がどう思うかはわかりませんが。
そんなこんなで「精緻な文体と洗練された物語構造を持つ上品な小説」ってわけじゃありませんが、既存の面白いもんと独自の面白いもんがごちゃ混ぜになった楽しい小説です。
異世界!怪物!認識災害!百合!最高!
得体の知れない何かが蔓延る領域での冒険はまんま『S.T.A.L.K.E.R.』や『メイドインアビス』で見た感じがしますし、現実にある都市伝説を作中の理屈に還元する、というやり方も『Steins;Gate』を始めとする科学ADVが好きな人には馴染み深いんじゃないかと思います。
「これ見たことあんな」と思うことが結構ありますが、上述したそれをまとめるところの作中の理屈がちゃんとSFしていてかなり興味深いです。それらを登場人物がガツガツ早口で説明していくのもSFっぽい。SFガチ勢の方がどう思うかはわかりませんが。
そんなこんなで「精緻な文体と洗練された物語構造を持つ上品な小説」ってわけじゃありませんが、既存の面白いもんと独自の面白いもんがごちゃ混ぜになった楽しい小説です。
異世界!怪物!認識災害!百合!最高!
2021年2月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
まあ好みで評価別れそうですが。
タイトルからもっと別世界をほのぼの百合ピクニックする話かと思っていたら、ジャンルはSFホラーじゃないですか。
ホラーとしては「対処」できている分、怖くはないですが。
極端に激しい冒険というよりは、スペック的には普通の人間の女子大生二人の怪異遭遇の話で、淡々としているので、評価の好みが別れそうです。
前から面白そうだと購入して積んでいたのですが、アニメになったので崩して読みました。
短編の連なりでできているので、読みやすいです。
どこかで聞いたこともあるような都市伝説を使いながら、現実でうまく馴染めなかった少女二人が主人公で危険な異世界を日帰りで行き来する物語です。
同性の微妙な距離感やモンスターのいる異境をさまようなど、どちらかというとアメリカのドラマぽさがただよう話です。
ホラーとしてはどうしようもない存在に翻弄される話ではないので、そこまで怖くはありません。
危険なエリアをともにすごすことで変化していく少女たちを描いている部分が大事でライトノベル風味でしょう。
この二人て、危険なドリームランドを旅する探索者みたいなものでしょう。クトゥルフTRPGあたりで再現できそう。
作品の中で、サブヒロインの小桜が主人公たち二人を「おかしい」と言っていますが、危険なドリームランドに何度も自ら足を踏み入れたがる心境はわからない感じで、なにげに正気が実はおかしいというか、そこに居場所を見いだす欠落を主人公が抱えているのがわかります。
あとこの作品、主人公たちが大学生で、ビールやらつまみやらを美味しく食べる描写が多くて、読んでいて呑みたくなり、つい飲みながら読んでしまいます。
タイトルからもっと別世界をほのぼの百合ピクニックする話かと思っていたら、ジャンルはSFホラーじゃないですか。
ホラーとしては「対処」できている分、怖くはないですが。
極端に激しい冒険というよりは、スペック的には普通の人間の女子大生二人の怪異遭遇の話で、淡々としているので、評価の好みが別れそうです。
前から面白そうだと購入して積んでいたのですが、アニメになったので崩して読みました。
短編の連なりでできているので、読みやすいです。
どこかで聞いたこともあるような都市伝説を使いながら、現実でうまく馴染めなかった少女二人が主人公で危険な異世界を日帰りで行き来する物語です。
同性の微妙な距離感やモンスターのいる異境をさまようなど、どちらかというとアメリカのドラマぽさがただよう話です。
ホラーとしてはどうしようもない存在に翻弄される話ではないので、そこまで怖くはありません。
危険なエリアをともにすごすことで変化していく少女たちを描いている部分が大事でライトノベル風味でしょう。
この二人て、危険なドリームランドを旅する探索者みたいなものでしょう。クトゥルフTRPGあたりで再現できそう。
作品の中で、サブヒロインの小桜が主人公たち二人を「おかしい」と言っていますが、危険なドリームランドに何度も自ら足を踏み入れたがる心境はわからない感じで、なにげに正気が実はおかしいというか、そこに居場所を見いだす欠落を主人公が抱えているのがわかります。
あとこの作品、主人公たちが大学生で、ビールやらつまみやらを美味しく食べる描写が多くて、読んでいて呑みたくなり、つい飲みながら読んでしまいます。
2021年8月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この「裏世界ピクニック」シリーズの第2巻から第6巻まで読んだあとに、これはどうしたってはじまりの第1巻も読んでおかねばなと、そういう気持ちから本文庫を手にとりました。いやあ、色々懐かしかったなあ。
で、第2巻以降に新キャラが何人か登場するとはいえ、本シリーズの基本的な路線の種子(たね)は、この第1巻で大部分、蒔かれていると感じました。当たり前といえばそうなのですが、この「裏世界ピクニック」シリーズをより良く、より深く味わうためには、極力読まんとあかん第1巻ですね。
百合の味わいが強い本シリーズの肝(キモ)は、語り手視点の紙越空魚(かみこし そらを)と、二人といない良きパートナーである仁科鳥子(にしな とりこ)が、《この世で最も親密な関係》になるべく、〈裏世界〉でヤバい冒険をしたり、空魚の右目と鳥子の左手の力で危難を乗り越えたりしていくところにあると思っています。
なので、出会った瞬間から、ほかの誰とも取り換えのきかない、かけがえのない二人となる、そんな旅路の第一歩を踏み出す本書は、実に重要な、読み逃すことのできない一冊であるわけで。
「くねくねハンティング」「八尺様サバイバル」「ステーション・フェブラリー」「時間、空間、おっさん」の四つのファイルを収めた第1巻。すでに本シリーズにずっぽり浸かっているファンの一人として、やはりこれは、読まなあかん一冊でした。読み終えて、この世の果てまで、それこそ、ウルトラブルーな〈裏世界〉の奥の奥までついてっちゃるぞおと、そんな気に駆られましたです。
で、第2巻以降に新キャラが何人か登場するとはいえ、本シリーズの基本的な路線の種子(たね)は、この第1巻で大部分、蒔かれていると感じました。当たり前といえばそうなのですが、この「裏世界ピクニック」シリーズをより良く、より深く味わうためには、極力読まんとあかん第1巻ですね。
百合の味わいが強い本シリーズの肝(キモ)は、語り手視点の紙越空魚(かみこし そらを)と、二人といない良きパートナーである仁科鳥子(にしな とりこ)が、《この世で最も親密な関係》になるべく、〈裏世界〉でヤバい冒険をしたり、空魚の右目と鳥子の左手の力で危難を乗り越えたりしていくところにあると思っています。
なので、出会った瞬間から、ほかの誰とも取り換えのきかない、かけがえのない二人となる、そんな旅路の第一歩を踏み出す本書は、実に重要な、読み逃すことのできない一冊であるわけで。
「くねくねハンティング」「八尺様サバイバル」「ステーション・フェブラリー」「時間、空間、おっさん」の四つのファイルを収めた第1巻。すでに本シリーズにずっぽり浸かっているファンの一人として、やはりこれは、読まなあかん一冊でした。読み終えて、この世の果てまで、それこそ、ウルトラブルーな〈裏世界〉の奥の奥までついてっちゃるぞおと、そんな気に駆られましたです。
2017年3月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一迅社文庫で発表された「ウは宇宙ヤバいのウ」以降すっかりハマってしまった作家である宮澤伊織。
暫く音沙汰が無かったのでどこで活動されているのかと思っていたらSFマガジンだったとは。
物語は主人公の紙越空魚が「裏側」と呼ぶ異世界の沼地で身動きが出来ないまま
鼻と口がギリギリ水面に出る状態で溺れかけている「デス寝湯」の危機に陥っている場面から始まる。
溺死寸前の空魚の危機を救ったのは長い金髪が特徴的な仁科鳥子。
空魚の金縛りの原因となっていた白くてひょろっとしたシルエットのくねくね動く影に
岩塩を投げつけて撃退した鳥子に助けられた空魚が二人そろって脱出した先は大宮駅の東側にある廃屋。
高校時代から廃屋探検を繰り返していた空魚が偶然見つけた異世界への入り口である廃屋の裏口。
その先にある空魚が「裏側」と称する異世界に消えた冴月という人物を探す鳥子に連れられる形で
二人は人知を超えた異形の存在が蠢く異世界の探検を繰り返すことになるが…
怖い、そして、それ以上に巧い。
「ウは宇宙ヤバいのウ」を含む一迅社文庫での作品で感じた事ではあるけど宮澤伊織作品って
読者がいつの間にか白昼夢の様な現実感覚を喪失した状態に知らず知らず引きずり込まれている。
自分の感覚異常に気付いた事の恐怖感は本物だし、その状態に気付かずに引っ張り込む手口は神業。
本作は「くねくね」や「八尺様」、「きさらぎ駅」、「時空のおっさん」といった
都市伝説や2ちゃんねるのオカルト超常現象板の人気スレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」に
投稿されて広まった噂話=「ネットロア」を元にしたホラーテイストの作品なのだけど、
都市伝説を取り扱った作品は作者の出自であるライトノベルでもしばしば見掛けるが、怖さのレベルが段違い。
その怖さの特徴は「侵食」にあるかと。
序盤は女子大生の空魚と「冴月」という知人を探す中で空魚を助けた鳥子が「裏側」と呼ぶ異世界への
潜入と探検を繰り返す様子が描かれ、そこに鳥子の友人で「認知」の研究者小桜が絡む形で進むのだが
最初は旅立った異世界でのみ遭遇していた怪異が、安全であった現実世界にいる筈の空魚たちに忍び寄り、
彼女たちを取り巻く世界を狂わせていく…という裏側の侵食が進む様子が描かれている。
序盤の異世界探検も色々と怖い部分は多い。
二人以外にも「裏側」に潜り込んでいる人間はいるのだけど、失踪した妻を探して「裏側」に辿り着いたという
肋戸という男が最初は頼りになる人物と見えながら、徐々に「実はもうどうしようもなく狂っている」という
正体が炙り出しになっていく展開は心の奥から「ジワー」と嫌な汗が垂れてくるような緊張感に満ち溢れている。
中盤での異世界探検を終えた打ち上げに出掛けた新宿の居酒屋の店員が「くびりやらいので、あぶらがらすがきます」と
一見日本語の発音っぽく聞こえながら何一つ意味が通らない異言を発したり、何故か厨房の奥から
犬の吠える声が聞こえたりして「え?」と不審に思って空魚たちが店を出た時には裏側に引きずり込まれているという
異世界の侵食が始まった事を告げるシーンの怖さはガチ。
何故ここまで怖いのか、と考えてみたのだけど、この話空魚たちが遭遇した人外の正体や
空魚たち同様、裏側に引っ張り込まれて閉じ込められた状態で遭遇し、置いてきてしまった人たちのその後、といった
読者が「あれはいったい何だったの?」、「あの人たちは最後どうなっちゃったの?」という「気になる部分」を
一切説明しないのである…つまりそこに読者の「想像力」が働く仕掛けを用意してあるのである。
そんなの情報不足、作者の説明不足やんけ!…と憤る方もおられるかもしれないが、
作者が意図してやったのであれば話は別である。
というかこの作品のテーマである「人間の認知の一形態としての恐怖心」という部分を考えれば
明らかにこの「あえて説明しない」というスタイルは作者が意図してやっているとしか思えない。
人間が暗闇を怖がる、というのは「暗闇=暗い」という視覚を通じて知覚した情報に
「暗い=何がいるか分からない=襲われても対処できない=何かがいるとしたら何?
=ナイフを持った凶漢?=凶暴な肉食動物?=名状しがたい異世界存在?」…みたいな
脳内のデータベースに収められた知識を基にした「意味づけ」が働く作用=認知が働くからである。
作者が提示する都市伝説やフォークロアの輪郭を完全には明確化せず「今見たのは何?」と
読者が想像し、勝手に意味づけしていく「認知」を利用して読者が内側から湧いてくる恐怖心を
自ら倍増しにする事を狙って仕掛けている、読者が自らの「認知力」で自らを怖がらせるという
渋川先生の合気柔術みたいな摩訶不思議なテクニックと言えよう…実に見事。
読み終える頃には裏世界の重要なキーとなっていながら何一つ説明がなされない「青」に
自動的に「青=怖い、超怖い」という条件反射を刷り込まれるまでこのテクニックが徹底されている。
見せ過ぎず、語り尽くさずで人間の「認知機能」を活用しまくる宮澤マジックを大いに堪能させられた。
読者に「怖い」という感情を味わせまくった上で「一体この恐怖という感情はどこから湧いてくるのか?」という
「恐怖論」ないしは「知覚と認知の間にあるもの」を考えさせてくれる非常に興味深い一冊。
「怖い」という感情を研究し尽くし、それを文章に反映させる技術を研ぎ澄ませた宮澤伊織渾身の作品。
「ジワジワと恐怖に引きずり込まれる様な体験をしたい」という方は是非ご一読を!
暫く音沙汰が無かったのでどこで活動されているのかと思っていたらSFマガジンだったとは。
物語は主人公の紙越空魚が「裏側」と呼ぶ異世界の沼地で身動きが出来ないまま
鼻と口がギリギリ水面に出る状態で溺れかけている「デス寝湯」の危機に陥っている場面から始まる。
溺死寸前の空魚の危機を救ったのは長い金髪が特徴的な仁科鳥子。
空魚の金縛りの原因となっていた白くてひょろっとしたシルエットのくねくね動く影に
岩塩を投げつけて撃退した鳥子に助けられた空魚が二人そろって脱出した先は大宮駅の東側にある廃屋。
高校時代から廃屋探検を繰り返していた空魚が偶然見つけた異世界への入り口である廃屋の裏口。
その先にある空魚が「裏側」と称する異世界に消えた冴月という人物を探す鳥子に連れられる形で
二人は人知を超えた異形の存在が蠢く異世界の探検を繰り返すことになるが…
怖い、そして、それ以上に巧い。
「ウは宇宙ヤバいのウ」を含む一迅社文庫での作品で感じた事ではあるけど宮澤伊織作品って
読者がいつの間にか白昼夢の様な現実感覚を喪失した状態に知らず知らず引きずり込まれている。
自分の感覚異常に気付いた事の恐怖感は本物だし、その状態に気付かずに引っ張り込む手口は神業。
本作は「くねくね」や「八尺様」、「きさらぎ駅」、「時空のおっさん」といった
都市伝説や2ちゃんねるのオカルト超常現象板の人気スレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」に
投稿されて広まった噂話=「ネットロア」を元にしたホラーテイストの作品なのだけど、
都市伝説を取り扱った作品は作者の出自であるライトノベルでもしばしば見掛けるが、怖さのレベルが段違い。
その怖さの特徴は「侵食」にあるかと。
序盤は女子大生の空魚と「冴月」という知人を探す中で空魚を助けた鳥子が「裏側」と呼ぶ異世界への
潜入と探検を繰り返す様子が描かれ、そこに鳥子の友人で「認知」の研究者小桜が絡む形で進むのだが
最初は旅立った異世界でのみ遭遇していた怪異が、安全であった現実世界にいる筈の空魚たちに忍び寄り、
彼女たちを取り巻く世界を狂わせていく…という裏側の侵食が進む様子が描かれている。
序盤の異世界探検も色々と怖い部分は多い。
二人以外にも「裏側」に潜り込んでいる人間はいるのだけど、失踪した妻を探して「裏側」に辿り着いたという
肋戸という男が最初は頼りになる人物と見えながら、徐々に「実はもうどうしようもなく狂っている」という
正体が炙り出しになっていく展開は心の奥から「ジワー」と嫌な汗が垂れてくるような緊張感に満ち溢れている。
中盤での異世界探検を終えた打ち上げに出掛けた新宿の居酒屋の店員が「くびりやらいので、あぶらがらすがきます」と
一見日本語の発音っぽく聞こえながら何一つ意味が通らない異言を発したり、何故か厨房の奥から
犬の吠える声が聞こえたりして「え?」と不審に思って空魚たちが店を出た時には裏側に引きずり込まれているという
異世界の侵食が始まった事を告げるシーンの怖さはガチ。
何故ここまで怖いのか、と考えてみたのだけど、この話空魚たちが遭遇した人外の正体や
空魚たち同様、裏側に引っ張り込まれて閉じ込められた状態で遭遇し、置いてきてしまった人たちのその後、といった
読者が「あれはいったい何だったの?」、「あの人たちは最後どうなっちゃったの?」という「気になる部分」を
一切説明しないのである…つまりそこに読者の「想像力」が働く仕掛けを用意してあるのである。
そんなの情報不足、作者の説明不足やんけ!…と憤る方もおられるかもしれないが、
作者が意図してやったのであれば話は別である。
というかこの作品のテーマである「人間の認知の一形態としての恐怖心」という部分を考えれば
明らかにこの「あえて説明しない」というスタイルは作者が意図してやっているとしか思えない。
人間が暗闇を怖がる、というのは「暗闇=暗い」という視覚を通じて知覚した情報に
「暗い=何がいるか分からない=襲われても対処できない=何かがいるとしたら何?
=ナイフを持った凶漢?=凶暴な肉食動物?=名状しがたい異世界存在?」…みたいな
脳内のデータベースに収められた知識を基にした「意味づけ」が働く作用=認知が働くからである。
作者が提示する都市伝説やフォークロアの輪郭を完全には明確化せず「今見たのは何?」と
読者が想像し、勝手に意味づけしていく「認知」を利用して読者が内側から湧いてくる恐怖心を
自ら倍増しにする事を狙って仕掛けている、読者が自らの「認知力」で自らを怖がらせるという
渋川先生の合気柔術みたいな摩訶不思議なテクニックと言えよう…実に見事。
読み終える頃には裏世界の重要なキーとなっていながら何一つ説明がなされない「青」に
自動的に「青=怖い、超怖い」という条件反射を刷り込まれるまでこのテクニックが徹底されている。
見せ過ぎず、語り尽くさずで人間の「認知機能」を活用しまくる宮澤マジックを大いに堪能させられた。
読者に「怖い」という感情を味わせまくった上で「一体この恐怖という感情はどこから湧いてくるのか?」という
「恐怖論」ないしは「知覚と認知の間にあるもの」を考えさせてくれる非常に興味深い一冊。
「怖い」という感情を研究し尽くし、それを文章に反映させる技術を研ぎ澄ませた宮澤伊織渾身の作品。
「ジワジワと恐怖に引きずり込まれる様な体験をしたい」という方は是非ご一読を!
2018年12月21日に日本でレビュー済み
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正直なところ、「このレベルの文章でお金が稼げるのか…!」と驚いたのが感想です。
ネットの小説サイトにあるような文体で、ある意味軽く読めるので楽ではあります。
ただ、『文芸』として読ませるような日本語、何度も読み返したくなるようなフレーズ、センテンスは特に見当たりませんでした。
Kindle版が383円だったから「まぁ、いいかな…」と思えるが、この文章で文庫版の842円は絶対出せない。
内容としては、怖い話とかのまとめサイトを見たことがある人なら誰もが一度は読んだことがあるような話を元にしているので、そりゃある程度面白くなくちゃウソだよな、とは思います。
元ネタのパワーに乗っかってる、人のふんどしを借りている、そんな小説なので、ちょっとずるいよなという気もしないでもないですが、まぁ書いたもん勝ちですね。
描写も「何?なんだって?誰がどうして何がどういうことになってんの?」と何回も読み直さなければならないような箇所が多々ありました。端的にいうと状況や風景のイメージがスッと入ってこない。あと登場人物も魅力が感じられない。ネット上にいる『おまいら』の最大公約数を女子大学生にしたような、つまり筆者や主要読者層の分身みたいなナイーブな主人公と、取って付けたような美少女。小説にしては夢がないし、ひねりもない。どこか現実感が漂い、物語の世界に連れて行ってくれない感じです。
長々と酷評しましたが、ひとつだけ光っていた文章がありました。八尺様の話の後半、簡単に言うと「友達を助けようと思って必死にもがいていたが、実は助けられていたのは自分だった」というくだり。
これは感動しました。人生って、友情って、往々にしてこういうもんですよね。チープな創作物は時間によって淘汰されますが、ここだけは普遍的なテーマに昇華できると思いました。
まぁみなさん、気になるならぜひ読んでみてください。
ネットの小説サイトにあるような文体で、ある意味軽く読めるので楽ではあります。
ただ、『文芸』として読ませるような日本語、何度も読み返したくなるようなフレーズ、センテンスは特に見当たりませんでした。
Kindle版が383円だったから「まぁ、いいかな…」と思えるが、この文章で文庫版の842円は絶対出せない。
内容としては、怖い話とかのまとめサイトを見たことがある人なら誰もが一度は読んだことがあるような話を元にしているので、そりゃある程度面白くなくちゃウソだよな、とは思います。
元ネタのパワーに乗っかってる、人のふんどしを借りている、そんな小説なので、ちょっとずるいよなという気もしないでもないですが、まぁ書いたもん勝ちですね。
描写も「何?なんだって?誰がどうして何がどういうことになってんの?」と何回も読み直さなければならないような箇所が多々ありました。端的にいうと状況や風景のイメージがスッと入ってこない。あと登場人物も魅力が感じられない。ネット上にいる『おまいら』の最大公約数を女子大学生にしたような、つまり筆者や主要読者層の分身みたいなナイーブな主人公と、取って付けたような美少女。小説にしては夢がないし、ひねりもない。どこか現実感が漂い、物語の世界に連れて行ってくれない感じです。
長々と酷評しましたが、ひとつだけ光っていた文章がありました。八尺様の話の後半、簡単に言うと「友達を助けようと思って必死にもがいていたが、実は助けられていたのは自分だった」というくだり。
これは感動しました。人生って、友情って、往々にしてこういうもんですよね。チープな創作物は時間によって淘汰されますが、ここだけは普遍的なテーマに昇華できると思いました。
まぁみなさん、気になるならぜひ読んでみてください。