〈ファドの女王〉アマリア・ロドリゲス(1920-99)。いまもなお彼女の歌声に魅了される音楽ファンは後を絶たず、そのアルバムの多くはロングセラーとなっています。彼女が確固たる地位を築いた60年代から70年代初めに取り組んでいた、ポルトガル民謡を歌う一連の作品群が、未発表音源も含めた2枚組にまとめられました。 国際的な評価も確かなものにし、世界各国で公演を行うようになった60年代以降のアマリア。スタジオ・レコーディングでは作曲家アレン・ウルマンとのコンビでファドを芸術化、現代化を進めた新作ファド・アルバムを制作、『ブスト』(1961)、『ファドはポルトガルの心』(1965)、『コン・ケ・ヴォス』(1970)といった今も輝き続ける傑作を発表していました。その一方で、彼女はポルトガル全土の伝承歌・民謡を歌った作品をリリースしていました。1966年の“Canta Portugal"、71年(録音は67年)の“Canta Portugal 2"、72年の“Canta Portugal 3"の三部作に渡ったこの取り組みは、アマリアを真の意味でポルトガルを代表する歌手に成長させました。 本作はそれらアマリアのポルトガル民謡吹き込みを集大成した作品。CD1には“Canta Portugal"、“Canta Portugal 2"の2枚のLPに、66年のハリウッド・ボウル、69年のリスボン・ジェロニモス修道院での、どちらもフル・オーケストラをバックにしたコンサートの実況録音(おそらく未発表)を収録。CD2にはLP“Canta Portugal 3"に、70年のホセ・アフォンソ曲集を含むシングル盤のみで発表されたアルバム未収録曲、そして完全未発表のテスト録音や別ヴァージョンを収録。この1枚でアマリアのポルトガル民謡プロジェクトの全貌が一気に楽しめる、文字通り決定版となってます。72年の“Canta Portugal 3"は以前ライス・レコードから『わが祖国ポルトガルを歌う』(IYR-5274)として発売しましたが、既に廃盤。三部作のオリジナルLPをお持ちの熱心なファンの方も、全25曲に及ぶアルバム未収録音源の魅力には抗えないでしょう。 全61トラックの大ボリューム。ファンは必携の愛蔵版です。