中東問題は「シリア内戦」「イランとサウジアラビアの対立」「イスラム教過激派組織によるテロリズム」「クルド人問題」「パレスチナ問題」など、非常にテーマが多岐に渡っており、プレイヤーとなる国家が入り乱れることもあって把握がとても難しい。そのため、テレビのニュース番組などでは限られた時間で「わかりやすい説明」が求められることも災いして非常に単純化した図式で中東問題が語られることもしばしばである。それはある程度仕方ないことでもあるが、単純化の過程で切り落とされた部分の中には中東という地域を理解する上で見過ごしてはならないものがたくさんある。この本はそうした部分を簡潔明瞭に説明してくれる。多角的な視点で中東問題を考えたい人には打ってつけの本である。
以下、個人的に興味深いと感じた箇所。
「宗派対立」がそのまま直接紛争につながるわけではないということは意外だった。シーア派対スンナ派という図式で説明されることも多い中東の紛争だが、政治対立が先であり、実際の対立の中で宗派の違いがグループ分けを明確にする際に利用されることが多いという意見はなるほどと思った。
「パレスチナ問題」の影が薄くなっているという論は目から鱗だった。一昔前までは、中東問題=パレスチナ問題という感もあったのだが、イラク戦争やシリア内戦、ISの登場などで「私たちの方が悲惨な状況に置かれている!」と考える「犠牲者意識」の競い合いが起き、かつてのようにパレスチナに関心がもたれなくなったという分析は興味深かった。
アメリカの中東政策や20世紀初頭の欧米の帝国主義に現代の中東問題の原因があることは間違いないと思うが、それだけに全ての原因を求めるのはあまりに状況を単純化しすぎている。現実の中東問題はもっと多層的な事情が絡み合っており、そうした事情のいくつかを知るきっかけにこの本はなると思う。例えば、急速に進む中東諸国の政治家の世代交代が、問題の落とし所を探ることができず、対立が過激化する遠因になっていることもこの本は指摘している。若い政治家は実行力があり、国内改革を果断に進めるという長所もあるが、経験が乏しいため、武力以外に解決のチャネルを持たないという短所もあり、こうしたリーダーの若返りが中東問題の「予測不能感」を増しているという分析は感心させられた。紋切り型ではないユニークな視点で中東問題を知りたいと思う人にはおすすめの本である。
Kindle 価格: | ¥825 (税込) |
獲得ポイント: | 8ポイント (1%) |
を購読しました。 続刊の配信が可能になってから24時間以内に予約注文します。最新刊がリリースされると、予約注文期間中に利用可能な最低価格がデフォルトで設定している支払い方法に請求されます。
「メンバーシップおよび購読」で、支払い方法や端末の更新、続刊のスキップやキャンセルができます。
エラーが発生しました。 エラーのため、お客様の定期購読を処理できませんでした。更新してもう一度やり直してください。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
9.11後の現代史 (講談社現代新書) Kindle版
20世紀を通じて中東で起きてきたことは、世界の、特に欧米諸国が行ってきたことのツケみたいなものである。そして、21世紀。アメリカの陰り、テロ、難民、宗教対立……2001年の9.11米国同時多発テロ事件を機に、そのツケがさらに巨大なものとして私たちの目の前に現れている。中東から、混乱の世界を読み解き、どう次の時代につなげていくのかを問う、かつてない現代史。
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2018/1/16
- ファイルサイズ18032 KB
この本はファイルサイズが大きいため、ダウンロードに時間がかかる場合があります。Kindle端末では、この本を3G接続でダウンロードすることができませんので、Wi-Fiネットワークをご利用ください。
この本を読んだ購入者はこれも読んでいます
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
酒井 啓子
1959年生まれ。東京大学教養学部教養学科(国際関係論)卒業後、アジア経済研究所に勤務。24年間の同研究所在任中に、英国ダーラム大学(中東イスラーム研究センター)で修士号取得。1986~89年、在イラク日本大使館に専門調査員として出向。東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授を経て、現在、千葉大学法政経学部教授兼同大学グローバル関係融合研究センター長。専攻はイラク政治史、現代中東政治。おもな著書に『イラクとアメリカ』(岩波新書、アジア・太平洋賞大賞受賞)、『イラク 戦争と占領』『イラクは食べる』(岩波新書)、『中東から世界が見える イラク戦争から「アラブの春」へ』(岩波ジュニア新書)、『<中東>の考え方』(講談社現代新書)、『移ろう中東、変わる日本 2012-2015』(みすず書房)、『中東政治学』(編著、有斐閣)など。
1959年生まれ。東京大学教養学部教養学科(国際関係論)卒業後、アジア経済研究所に勤務。24年間の同研究所在任中に、英国ダーラム大学(中東イスラーム研究センター)で修士号取得。1986~89年、在イラク日本大使館に専門調査員として出向。東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授を経て、現在、千葉大学法政経学部教授兼同大学グローバル関係融合研究センター長。専攻はイラク政治史、現代中東政治。おもな著書に『イラクとアメリカ』(岩波新書、アジア・太平洋賞大賞受賞)、『イラク 戦争と占領』『イラクは食べる』(岩波新書)、『中東から世界が見える イラク戦争から「アラブの春」へ』(岩波ジュニア新書)、『<中東>の考え方』(講談社現代新書)、『移ろう中東、変わる日本 2012-2015』(みすず書房)、『中東政治学』(編著、有斐閣)など。
登録情報
- ASIN : B078TN4G25
- 出版社 : 講談社 (2018/1/16)
- 発売日 : 2018/1/16
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 18032 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 219ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 228,756位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 1,364位講談社現代新書
- - 5,490位ノンフィクション (Kindleストア)
- - 56,335位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2023年8月27日に日本でレビュー済み
レポート
Amazonで購入
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2023年1月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
9.11以降の中東情勢を整理して論じた著書。
中東は第二次大戦以後にパレスチナ問題に端を発した戦争が続き、やがて湾岸戦争を経て、米国がイラクに侵攻する戦争へと移行した。
それは中東地域による欧米諸国の覇権争いや中東諸国の民族を支配下に置き、コントロールしようとした経緯に他ならない。
米国は最初はイランと蜜月関係にあったがイランが革命で反米に回ると、サウジアラビア・イラクを利用してイランを押さえ込もうとする。それ故にイラクのフセインの暴政にも目を瞑ってきた面があったが、湾岸戦争ではそのフセインの暴挙に鉄槌を下し、以後はイラクも反米と見なされる。
中東はパレスチナ問題で対イスラエルで歩調を合わせて対抗しようとしていたが、米国の後ろ盾を得るイスラエルに戦争で敗北し続けて領土を奪われ難民が増加した。やがて時が流れ、中東諸国間でも利害関係から対立が起こり足並みは揃わなくなる。当初の「イスラエルを滅亡させる」は核武装まで終えた国に対しては非現実的だ。
中東はどの国も「王政」か「独裁政権」が樹立されて民主化にはほど遠い体制だった。
しかし、長く続く差別的な状況・閉鎖的な社会に若者を中心に不満が高まり、ネット社会の隆盛で遠くの人との結び付きが容易となる中、2011年に「アラブの春」という民衆のデモや抗議運動で独裁政権が次々と打倒される事件がアラブ諸国でドミノ連鎖的に起きた。しかし、独裁政権を打倒しても民衆の多くにはその後の国の未来を作る知識も経験もなく、間もなくして別の独裁政権に権力を奪われた事例が多い。
やがて「IS」というテロ組織が国家化して中東を暴れ回り、シリアなどは内戦が起きてさらに大量の難民が欧米諸国に流れてくると、欧米諸国は難民を締め出す政策を採って自国を守ろうとする。
世界が「自国ファースト」となり、他者排除に動くような世界になってしまった。
皆、あらゆる場所に「敵」を見ていて、その敵を倒すことに躍起になっている。
「敵を打倒しようとするとさらなる敵が登場」して事態は益々複雑化して解決は容易ではない。
結局のところ、多くの血が流れ、犠牲者が増える一方である。
そして、昨今は中東はめっきり話題にも上がらなくなった。ロシアがウクライナに軍事侵攻してからは世界の関心がそちらに移ってしまい、また新型コロナウイルスの蔓延も追い討ちを掛けた形だ。
共存の道は果てしなく遠いのだろう。
中東は第二次大戦以後にパレスチナ問題に端を発した戦争が続き、やがて湾岸戦争を経て、米国がイラクに侵攻する戦争へと移行した。
それは中東地域による欧米諸国の覇権争いや中東諸国の民族を支配下に置き、コントロールしようとした経緯に他ならない。
米国は最初はイランと蜜月関係にあったがイランが革命で反米に回ると、サウジアラビア・イラクを利用してイランを押さえ込もうとする。それ故にイラクのフセインの暴政にも目を瞑ってきた面があったが、湾岸戦争ではそのフセインの暴挙に鉄槌を下し、以後はイラクも反米と見なされる。
中東はパレスチナ問題で対イスラエルで歩調を合わせて対抗しようとしていたが、米国の後ろ盾を得るイスラエルに戦争で敗北し続けて領土を奪われ難民が増加した。やがて時が流れ、中東諸国間でも利害関係から対立が起こり足並みは揃わなくなる。当初の「イスラエルを滅亡させる」は核武装まで終えた国に対しては非現実的だ。
中東はどの国も「王政」か「独裁政権」が樹立されて民主化にはほど遠い体制だった。
しかし、長く続く差別的な状況・閉鎖的な社会に若者を中心に不満が高まり、ネット社会の隆盛で遠くの人との結び付きが容易となる中、2011年に「アラブの春」という民衆のデモや抗議運動で独裁政権が次々と打倒される事件がアラブ諸国でドミノ連鎖的に起きた。しかし、独裁政権を打倒しても民衆の多くにはその後の国の未来を作る知識も経験もなく、間もなくして別の独裁政権に権力を奪われた事例が多い。
やがて「IS」というテロ組織が国家化して中東を暴れ回り、シリアなどは内戦が起きてさらに大量の難民が欧米諸国に流れてくると、欧米諸国は難民を締め出す政策を採って自国を守ろうとする。
世界が「自国ファースト」となり、他者排除に動くような世界になってしまった。
皆、あらゆる場所に「敵」を見ていて、その敵を倒すことに躍起になっている。
「敵を打倒しようとするとさらなる敵が登場」して事態は益々複雑化して解決は容易ではない。
結局のところ、多くの血が流れ、犠牲者が増える一方である。
そして、昨今は中東はめっきり話題にも上がらなくなった。ロシアがウクライナに軍事侵攻してからは世界の関心がそちらに移ってしまい、また新型コロナウイルスの蔓延も追い討ちを掛けた形だ。
共存の道は果てしなく遠いのだろう。
2018年1月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者は中東情勢の第一線の研究者。
複雑で理解しにくい中東情勢をできるだけわかりやすく、それでいて一面的な解説で終わらせない良書といえる。
題名は9.11後と限定されているが、当然歴史を遡って現在の対立の原因を明らかにしようと試みている。
目次は以下のとおり。
1 イスラム国
2 イラク戦争
3 9.11
4 アラブの春
5 宗派対立?
6 揺らぐ対米関係
7 後景にまわるパレスチナ問題
ネット等で中東情勢について調べていると全ての問題を宗派対立(スンニ派vsシーア派)やアメリカの外交政策の失敗にその原因を押し付けている解説がしばしば見られているが、様々な変数を考慮して問題を捉えているこの著者は偏りがなく素晴らしい。
ただ、問題自体が複雑であるがゆえに一読しただけでは全て吸収できないので、何回か読み直したいと思うところ。
中東情勢、また石油情勢に興味があるビジネスマン、学生は買って損はないのではないだろうか。
複雑で理解しにくい中東情勢をできるだけわかりやすく、それでいて一面的な解説で終わらせない良書といえる。
題名は9.11後と限定されているが、当然歴史を遡って現在の対立の原因を明らかにしようと試みている。
目次は以下のとおり。
1 イスラム国
2 イラク戦争
3 9.11
4 アラブの春
5 宗派対立?
6 揺らぐ対米関係
7 後景にまわるパレスチナ問題
ネット等で中東情勢について調べていると全ての問題を宗派対立(スンニ派vsシーア派)やアメリカの外交政策の失敗にその原因を押し付けている解説がしばしば見られているが、様々な変数を考慮して問題を捉えているこの著者は偏りがなく素晴らしい。
ただ、問題自体が複雑であるがゆえに一読しただけでは全て吸収できないので、何回か読み直したいと思うところ。
中東情勢、また石油情勢に興味があるビジネスマン、学生は買って損はないのではないだろうか。
2021年11月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
時代の流れを大きな視野で概観してくれる。
あの時のあの事件の意味を振り返って、いちづけてくれる。
果たして正しい分析かどうかは別として。
あの時のあの事件の意味を振り返って、いちづけてくれる。
果たして正しい分析かどうかは別として。
2018年3月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いま、世の中が「不寛容」になっている。
アメリカの驕り、移民、テロ、そして宗派の対立……
様々な対立が泥沼化している。
中東から国際情勢を読み解いた、深い一冊。
対立の悲劇の積み重ねの末には何が待ち受けているか。
現代社会を鋭く突いた好著だと思う。
アメリカの驕り、移民、テロ、そして宗派の対立……
様々な対立が泥沼化している。
中東から国際情勢を読み解いた、深い一冊。
対立の悲劇の積み重ねの末には何が待ち受けているか。
現代社会を鋭く突いた好著だと思う。
2019年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
よくこれだけ広く書けるものです 相変わらず中東の出来事は混沌としていますが 少し理解しました
2023年2月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中東は「火薬庫」と言われた。大きな原因は、オスマン帝国が崩壊する過程で、「アラブの独立を認めるフサイン・マクマホーン協定」が出来るが、実際は「サンクト・ピコ協定で英仏が支配し」「さらに「バルフォア宣言で、中東のど真ん中にイスラエルという国を認める」という矛盾すること(イギリスの3枚舌)が行われ、アラブはバラバラな国として線引きされ、独立した。ここに、その後に苦悩の歴史があると書く。
アメリカは王制時代のイランと親密であったが、「ホメイニ革命」によりイスラーム国家になって対立、対抗する相手としてイラクに武器を与えフセイン体制を支えたが、何を驕ったか、フセインは突如、クエートに侵攻した。即座に国連決議が出され、「多国籍軍」がイラクを追い出した(湾岸戦争)。
ところが、2001年、アメリカのツイーンタワーなどがハイジャックされた旅客機により突入され、驚愕の崩壊が起こされた。小ブッシュは「テロ戦争だ」と叫び、首謀者と見られるオサマビン・ラーディンの抹殺を計る。2003年、アメリカはイラクが「大量破壊兵器など保持している」とし、確証をしない雑な情報から、国連決議の無い中、アメリカ、イギリスなど「有志連合」で、攻撃、フセインを亡き者にした(イラク戦争)。結局、IAEA、米国、イギリスが調査したが大量兵器などは見つからず、アメリカ軍の統幕議長やイギリスのブレア―首相は過ちを認めた。
著者は、この誤った敵対攻撃がその後の混迷の大きな原因になっていると書く。
私はその後の中東を追っていなかったので、この書を手にしたが、一時「アラブの春」と言われる民主運動が成功したが、それを恐れたサウジアラビアの王制など独裁政権が巻き返しを図り、少数に追い込まれた反体制、反米でイスラーム原理主義と言える過激な暴力を使うイスラム・ステート(IS)が誕生し、猛威を振るうようになり、中東をめぐる依然とした「不寛容、敵対」がますます進んで行ったことを書かれ、イラク戦争後、テロによる死者が急増して行く実態が、告発されている。それは欧米の価値観を押し付け、利害に未だに翻弄つづけ、呻吟する中東の実際の姿が描かれていた。
アメリカは王制時代のイランと親密であったが、「ホメイニ革命」によりイスラーム国家になって対立、対抗する相手としてイラクに武器を与えフセイン体制を支えたが、何を驕ったか、フセインは突如、クエートに侵攻した。即座に国連決議が出され、「多国籍軍」がイラクを追い出した(湾岸戦争)。
ところが、2001年、アメリカのツイーンタワーなどがハイジャックされた旅客機により突入され、驚愕の崩壊が起こされた。小ブッシュは「テロ戦争だ」と叫び、首謀者と見られるオサマビン・ラーディンの抹殺を計る。2003年、アメリカはイラクが「大量破壊兵器など保持している」とし、確証をしない雑な情報から、国連決議の無い中、アメリカ、イギリスなど「有志連合」で、攻撃、フセインを亡き者にした(イラク戦争)。結局、IAEA、米国、イギリスが調査したが大量兵器などは見つからず、アメリカ軍の統幕議長やイギリスのブレア―首相は過ちを認めた。
著者は、この誤った敵対攻撃がその後の混迷の大きな原因になっていると書く。
私はその後の中東を追っていなかったので、この書を手にしたが、一時「アラブの春」と言われる民主運動が成功したが、それを恐れたサウジアラビアの王制など独裁政権が巻き返しを図り、少数に追い込まれた反体制、反米でイスラーム原理主義と言える過激な暴力を使うイスラム・ステート(IS)が誕生し、猛威を振るうようになり、中東をめぐる依然とした「不寛容、敵対」がますます進んで行ったことを書かれ、イラク戦争後、テロによる死者が急増して行く実態が、告発されている。それは欧米の価値観を押し付け、利害に未だに翻弄つづけ、呻吟する中東の実際の姿が描かれていた。
2018年2月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
9.11に始まり、イラク戦争、アラブの春から直近のIS・移民問題までニュースで登場するキーワードの内容とそれぞれの時系列の繋がりがよく分かる一冊。それ以前のパレスチナ問題やイラン革命などから丁寧にひも解いて解説されているのですっきり理解できる。
特にアラブ諸国同士の関係が「敵の敵は味方」と目まぐるしく変化する様子を、スンナ派とシーア派の対立という単純な視点ではなく、各国の事情から詳細に説明している記述には新たな発見があった。
特にアラブ諸国同士の関係が「敵の敵は味方」と目まぐるしく変化する様子を、スンナ派とシーア派の対立という単純な視点ではなく、各国の事情から詳細に説明している記述には新たな発見があった。