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ストラヴィンスキー自身から「これは違う！」と酷評されたカラヤンの「ハルサイ」。確かにこれだけ整然と古典的に描かれると、バーバリズムの権化的な革新性は希薄になる。しかし、新ウィーン楽派の管弦楽曲でさえ美しく演奏してしまうこのコンビならではのここでの美演にも抗しがたい魅力がある。
もちろん、ただ美しいだけではない。弦楽器群のリズムの刻みも、打楽器の一撃も、金管の炸裂も、しっかりと収録されている。が、意外性はない。すべての音が、あるべきところにあるという感じ。曲の構造もよく解る演奏だ。その辺りのところが、作曲者からすると、お気に召さなかったのかも。
二回目の録音は、ベルリンフィルとの二度目のベートーヴェンの交響曲全集のセッションの最中に行われた。彼等のメインレパートリーであるベートーヴェンの究極の演奏を刻印すべく、極度の緊張感の中にあって、カラヤンは、この息の詰まるような状況を打開することを意図して、合間に「ハルサイ」をを挟み込むことを提案したが、当初ベルリンフィルのメンバー達は気乗りがしなかったという。それでも断行された「ハルサイ」の収録。結果は「吉と出た」。閉塞状態に風穴を開けたような効果がもたらされ、それまでのストレスが一気に発散されたかのような名演が残された。
そういわれてみると、この「ハルサイ」は、ベートーヴェン的かも知れない。二回目の「ハルサイ」とベルリンフィルとの二度目の交響曲全集には共通する部分が感じられる。緊張と開放、静寂と熱狂。両極の絶妙なバランス感覚。
この辺りに、カラヤンの（あるいはミッシェル・グロッツの提案かも？）マジカルな魅力が垣間見れる。
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